ダーク・ファンタジー小説

Re: 神が導く学園生活 ( No.18 )
日時: 2022/02/28 19:35
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: AwgGnLCM)

午前6時。テラテラ様ががオレンジ色に滲み出ている頃。俺、赤魔 光は学校に併設されている特訓場へ向かっていた。
俺達が降格されてから毎日特訓場へ通い、4人で魔法、剣術、体術の特訓をしていた。

「アンタの髪。気持ち悪いのよ!」

どこまでも澄み、広範囲に響くような声。そこには赤髪に団子ツインテールの女の子と、白髪に髪先が水色のボブヘアの女の子がいた。

赤髪の子は...確か大貴族スカーレット家の娘じゃなかったか?名前は確か...アリス・スカーレット。横暴わがままお嬢様で有名である。
白髪に髪先が水色の女子は見慣れた姿の子。ラナだ。
ラナはスカーレットにタコ殴りにされている。要するに虐められているのだ。しかし、前のタミとラナの剣術の戦闘を見る限りラナはかなり運動神経がいいはずだが、やり返さないのだろうか?それかスカーレットの方が運動神経が良いと?
まあ、どちらにせよ俺が割り込んだらややこしい事になるんだよな。ラナには悪いがここは無視させてもらう。

「もうっ、何黙ってるのよ!」

そう言った瞬間スカーレットは手に炎を浮かばせた。あれは火魔法だろう。ラナは水系統使いだから大丈夫だろうけど...
俺は無視すると決意した癖にその様子を遠くから見ていた。

「参・業火!」

スカーレットが両手の炎を合わせ、ラナに放つ。
おいおい待て待て!それは火魔法初級の中でも1番威力がある魔法じゃねぇか!
その様子を俺は黙っていられなかった。

「参・業火!」

俺は1番魔素濃度が高い技を放つ。その魔法はスカーレットが放った魔法とぶつかり、宙に向かって飛んでいくと消えていった。
無視すると言ったくせに助けちまったじゃねぇか...
俺は呆れながらもスカーレットのことを睨みつける。

「邪魔が入ったと思ったら...また悪魔が出てきたわね。2人まとめて排除してあげる!参・業火!」

そういうと、スカーレットは手から大量の炎を俺に放つ。まるで滝のように流れてくる炎を見た俺は瞬時に唱えた。

「ロゥワ・ブレイズ」

俺が出せる限界の魔法。炎魔法だ。炎系統には灯、火、炎の3つの魔法があるが、炎魔法は威力が違うだけで他は火を出す魔法というほぼ同じ。光系統の闇と光や、水系統の水と氷のように威力ではなく魔法の種類が違うこともあるが、大体の魔法は威力順に分かれている。
見た限り彼女は火魔法までしか使えないようだからその上位互換である炎魔法のブレイズを放ってやった。といっても火魔法である「参・業火」は初級火魔法の中で最大の威力。ブレイズも威力が小さい順に「アン・ブレイズ」「ドゥ・ブレイズ」「ロゥワ・ブレイズ」があるが、「参・業火」は「ドゥ・ブレイズ」と同じほどの威力を発することが出来る。そのため「ロゥワ・ブレイズ」が最高限界の俺にとっては魔法の実力は近いが俺の方が1枚上手だ。
俺の思った通り、スカーレットの魔法は俺の魔法によって消え去ってしまう。スカーレットも俺と同じ事を思ったのか、どこからか取り出した木の剣を俺に振るってきた。

おいおい待て待て待て!剣術はずるいぞ!
俺は体力もやしのヒョロヒョロ男だから抵抗出来ない。いや、スカーレットの体力が俺より低かったら勝ち目はあるが...
俺は交わそうとバックステップを踏む。しかし脚力も無いため1メートルも飛べなかった。

「えいやっ!」

見後にスカーレットの剣は俺の脇腹に直撃する。
ダメだこれ。俺よりも運動神経高い奴だ。まずあんな重い木の剣を軽々ふえる時点で運動神経はかなり高いと分かったはずだ。何やってんだよ。俺。
そんな後悔と共に俺の意識は遠のいていった。

「ドゥ・オプスキュリテ!」

甲高く芯がある少年のような声が響き渡る。
すると俺の後ろから黒い球体がスカーレットにぶつかった。

「キャァッ!」

スカーレットは見事に吹っ飛び、壁にぶち当たる。中々の高威力な魔法だ。そしてこの声には聞き覚えがある。

「おい大丈夫なのか!」

後ろからクロが心配そうな声色で向かってくる。た、助かった...このままタコ殴りにされるかと思ったぜ。
クロは俺に向かって走ってくる...と思いきやクロは俺を避けてラナの方へ向かう。
うん。そうだよな。やっぱり俺よりラナの方が優先度は高いもんな。
俺は分かっていたはずなのに少しガッカリする。
ラナは幾つか殴られていたようで顔に痣が出来てたり引っかかれて血が出ている。
女子に...いや、性別の差別は良くないかもしれないが...女の子の顔に傷を付けるのはいただけない

「お前...」

クロの周りに魔素が集まり、フサフサの耳やしっぽ、牙が出てくる。
獣化してる...またランク付けの時のように暴れたら大変だ!しかし、周りの魔素がクロに集まってるため俺は魔素を取り込めない。体内の魔素が無い体質だとこういう時不便だな...タミを呼んでくるか?しかし、俺とタミとラナ相手でようやく抑えられたクロだ。タミを呼んでもどうにかなりそうにない。なら先生を呼ぶか...?
そう考えてるうちにクロは完全に獣化していた。

「ガルルルッ!」

クロは爪をたてスカーレットの顔に爪を立てる。次にスカーレットの胸ぐらを掴みぶっ飛ばして行った。
待て待て待て…!いくらラナの顔に傷が付けられたからってこれはやりすぎじゃないか!
しかし俺は攻撃が出来ない。ラナ...ラナは?!
俺は倒れているラナに近づく。口に手を当てると風を感じる。息はしている。

「んっんん...」

ラナは微かに目を開くと周りをちらっと見回す。すると獣化してるクロを見たらしく目を見開く。多分驚いてるんだろうな...

「ラナ。お前はここで待ってろ。俺は先生を呼んでくる。」

俺がそう言った瞬間クロとスカーレットの体が凍りついた。これは...氷魔法ロゥワ・グラソンか?無口頭でこの威力の魔法とは...中々凄い。なんせ獣化のクロを止めたぐらいだからな。

「ググ...グァァァ!」

前言撤回獣化クロは抑えられなかったようだ。クロは本格的に自我を失っているようでラナの魔法で動けないスカーレットに向かって爪を奮った。
俺は何かに背中を舌で舐められたような感覚を襲う。

「ロゥワ・ブレイズ!」

クロは止めきれなかったか!俺は冷や汗が伝う中一生懸命魔法を出そうと叫ぶが手から炎の『ほ』の字も出てこない。
このままじゃスカーレットが無事じゃない!いや、自分の脇腹に剣ぶっ叩かれた相手だが、やはり心配せざる負えない。

すると辺りから砂が漂ってくる。どんどんうっとおしいと思ってきたら、クロを中心に砂嵐が発生する。これは土魔法の砂嵐だ。一体誰が...
そう思ったら後ろの建物から黒い影が出てくる。黒髪に茶色メッシュ。黒と茶のオッドアイ。顔や腕に包帯が巻かれており、ヒラヒラと包帯が舞っている。剣術の授業で居たコク先生だ。
すると先生の手から黒い何かができたと思うとクロに直撃する。それはクロに直撃したあと、無数の小さい玉になり、天空へ待ったと思うとくらいバラのような形になって消えた。
たしか、闇魔法の初級、暗花だ。俺達アインスがギリギリ使えるか使えないかの魔法を無口頭で軽々と撃つところさすが先生と言うべきか...
それよりもクロだ!クロはどうなった...?
クロは獣化が収まった人間の姿になって目を回して居る。スカーレットは身体中ボロボロになって壁に座っている。けれどもラナの顔の傷の方が酷い。

「待ってろよ」

俺は何も言わずにラナの顔に手を当てる。すると黄色の光がラナの顔を照らす。その瞬間ラナの傷はみるみるうちに消え去った。

「コウ...これ...」

ラナは珍しく驚いた顔で俺を見る。

「別に、普通の魔法だ」

普通の子供はこれで騙されるんだが...これでもラナは世界一デカい学園の生徒だ。これで騙されないはず。しかし、黙っとけという意図は伝わっただろう。

「これはどういうことなんだ」

するとコク先生がいつの間にか俺たちの横に居た。スカーレットはお姫様抱っこをして、クロは肩に乗せている。クロだけ扱い雑くないか?
そう思ったのもつかの間俺は異変に気づく。スカーレットの傷が無くなっている。ラナも同じことに気づいたのか先生に問う。

「コク先生。地系統と光系統が使えるんですか?」

地系統と光系統。要するに土魔法と地魔法と闇魔法と光魔法を使えるということだ。2種類の系統を使える種族は2種類しか居ない。天使と悪魔だ。この先生は...一体?

「そうだな。でもラナと同じで天使でも悪魔でも無い。」

天使でも悪魔でも無い...?どういうことだ?他に2種類の魔法系統を使える種族はいねえぞ?それにラナの事を知ってるなんて...

「それよりも2人。詳しく事情聴取したいから職員室に来るように」

するとコク先生はジャンプする。その瞬間闇に覆われ気づくと居なくなっていた。この魔法は知らない。多分中級以上の魔法なのだろう。それよりも...

「ラナ。コク先生と知り合いなのか?」

「いいえ...。前の剣術...の授業で...初めてあったわ...」

ラナは事情は分からないが水系統と炎系統の魔法を使える。2種類魔法を使える種族はいるものの、光系統魔法+各個人に適した属性の魔法、だ。ラナが、使える魔法系統の組み合わせはおかしい。それを知ってるのは俺とクロとラナだけのはず... それよりもコク先生も2種類の魔法が使えるし組み合わせも天使と悪魔と合ってるはずなのに天使でも悪魔でも無い...?
分からない。いずれ分かるのか?

「コウ...行こ...」

ラナがボソッと呟く。そうだ職員室に呼ばれてたんだった。あまり行きたくはないが行くしかないか...
俺たちは諦めて職員室へ向かった。さあ、鬼が出るか蛇が出るか...