ダーク・ファンタジー小説

Re: 銀色の君は、 ( No.2 )
日時: 2022/01/29 18:30
名前: 名前は未だ無い。 (ID: Ch4ng4i/)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

「失礼しまーす…」
フラフラとした足取りで来た桃羽は、顔が真っ白だった。
「どうしたの桃羽!?」
「それが…


銀色集団シルバーチームについてなの」

私と梅越先生は息を飲んだ。

銀色集団シルバーチーム!?」
銀色集団は、最近問題視されている“ロボット”の集団だ。その起源は、昔に遡る。

22世紀末に大量のロボットが生産され、世界の発達が期待されていたのだが、ロボット開発の為に作られた研究品サンプルの廃棄が問題となっていた。
そこで効率的な廃棄をするために、銀色土地シルバーランドという場所を制定し研究品サンプルを埋めていったのだ。
その廃棄法は確実に成功を遂げ、その埋め立て地に住宅街が建っていった。
ただ、銀色土地の面積は世界の陸地の2割にも昇る。
それから銀色土地は更に増加し、世界は益々発達していくようになったのだ。

しかし問題はその“未来”だった。
2年前くらいに、銀色土地2番地の住宅街が全壊した。
それも、不明の原因で。
最初はそこ一帯が揺れたことから地震だと思われていた。
ただ、家が壊れたのは銀色土地のエリアだけ。
その10日後に見つかった、94体の銀色集団は。
銀色集団は、銀色土地から10km離れた地域に身を隠していた。
しかも銀色集団は、言葉を認識し、発する事ができていた。
社会はこれを問題視し、銀色土地の住宅街を次々取り壊していく。
でも、手遅れだった。

銀色集団は、埋められていた間に銀色土地の人々の生活を真似し始めたのだから。

桃羽は、小児科に銀色集団の子供が来たと話している。
銀色集団も子供を人間と同じように産み育てるから、最近は産婦人科に来る銀色集団が増加しているそうだ。
そんな銀色集団に頭を悩ませ精神科に来る人も増えてきた。
「もう…どう対応したらいいのか分からないのよ。銀色集団も人間と同じように生活はするけど、別の生物だからね。それで銀色集団の人が死ぬのも可哀想だし」
はぁ、と桃羽は溜め息をついた。
「そうなんだったら、死なせればいいのに」
カフェオレの入ったマグカップを桃羽に差し出しながら、梅越先生は言った。
「え…?」
「銀色集団はさ、人間にとって邪魔者なんでしょう?だから、放っておいて絶滅させたらいいのにねって話。銀色集団を人間と同じように扱う小萩さんは偉いと思うけどなぁ」
「そう、ですかね…」
同じ出来事を他の観点から見つめてアドバイスするのは梅越先生の尊敬できる所だ。
「まあ政府から具体的な指示が出るまでは保留ね」
「そうですよね…あ、私入院してる子見てくるので行きますね!ありがとうございました!」
「いえいえ。頑張ってね!」
「はい!梨瞳も、頑張れ!」
「うん!」
振った手に、少し重みを感じた。

「次の方、どうぞ」
梅越さんが退勤して精神科を一人でやりくりしていると、私は悟った。
ーこの患者さん、銀色集団だ。

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