ダーク・ファンタジー小説

Re: 銀色の君は、 ( No.4 )
日時: 2022/01/31 10:03
名前: 名前は未だ無い。 (ID: Ch4ng4i/)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

「俺はただ、そんな話を聞いてもらうためにここに来たんです。ありがとうございました、帰りますね」
ルアさんは突如そんな事を言い出してしまった。
「え、ちょっと待ってください」
「…はい?」
「この後どうするんですか。私に話を聴いてもらって、それだけなんですか。あなたは誰かに助けを求めていたのに?」
「え、っとそれは…」
「ここに助けを求めたのにそれであなたを帰らせるなんて、私はできません」
思った事を存分に言って、ルアさんの手を取る。
銀色集団と人間の容姿の違いは首に銀色のパーツがあるかないかだけだから、その手は人間のように暖かい。
「でも、俺はどこに住めばいいんですか」
「え…」
現実を見せつけられ、少し動揺した。
確かに、銀色集団は思うように動けなくなっている。スクーターや施設、道路のあちこちに銀色集団を感知するアラームが取り付けられているからだ。アラームが鳴ると銀色集団はもちろん、近くにいた人間も場合によっては逮捕される。
「なので、俺は居所がありません。なので、では。」
「ここに住みなさいよ」
「えっ…!?」
思わず口から出たそんな言葉。でも、いけるかもしれない。
私はよく休憩に来るし、様子も見れる。
「ね?」
微笑みかけて、庭の見つかりにくい茂みに案内をしていると、早洲さきしま先生がやって来た。
「克田ー?あ、いた。おい、何してるんだよ?」
「隠れて!」と小さな声で言った。
「あ、さ、早洲先生!じ、実はお気に入りのエアーペンを無くしたんですよー…」
エアーペンとは、空気中や紙、地面などどこにでも自由自在にタッチが書けるものだ。
「あー、小萩に貰ったやつか?」
「そうなんです…」
早洲先生に嘘をついてしまった。何だか申し訳ない。
「もう8時だからそろそろ帰れ。探し物があるならいいが。今日は退勤だぞ」
「お疲れ様です。お仕事、頑張って下さい!」
「頑張る事なんてないよ。夜勤だから呼び出し食らわなければ寝るだけだ」
「悲しいんでしょ?梅越先生と一緒に寝れないんですもんね」
「そ、そんな事あるか」
「ありますよ。じゃあ、お疲れ様です」
「おうよ」
早洲先生はドアを閉めた。
「内緒にしてくれて…ありがとう…」
ルアが言った。
「全然。じゃあ、また明日ね」
「あ、その前に…さっきの人、何て人?」
「あの先生は先輩の早洲さきしま聖乃せの先生よ。体は大きい人だけど、すごく優しいから。もう一人の梅越先生の彼氏なの」
「へぇ、いいねぇ…」
「あ、そうだ連絡先とかある?」
「うん、キー持ってる」
「じゃあ連絡先交換しようね…OK。また明日」
「うん」
ルアさんを背後に、少し浮わついていた。