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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 太刀川探偵捕物帖 ( No.1 )
- 日時: 2022/01/25 15:26
- 名前: 緋月セト (ID: TZ3f2J7J)
「しっかし……こりゃあ、随分と酷ェな」
夕刻。
黄昏時の路地裏に佇む中年刑事は、苦虫を噛み潰したような顔で言う。隣で、「うぷっ」と吐瀉物を押さえ込む声が聞こえると、中年刑事は横目で見る。
彼の隣では、若々しい見た目の青年警官が、青ざめた顔で口元を押さえていた。
青年警官は震える声で、中年刑事に問いかける。
「あ、あのッ、なんですか?これ」
「見りゃ分かるだろ、バラバラ死体だよ」
青年の問いに答えると、我慢し切れなくなった彼は地面に両手を付き、胃の中を地面にぶち撒けた。
胃液のツンとした臭いと死体の腐乱臭の相乗効果によって、現場は更に地獄絵図と化す。
マトモな倫理観の人間なら、これが普通だろう。
かと言って、中年刑事が異常と言う訳でもない。
バラバラ死体は見慣れたとは言え、ここまで死体の損傷がひどいものとなると、刑事歴40年のベテラン刑事の彼と言えど、少しキツいものがある。
「(薄闇で正確に死体の象を捉えられねェってのが、せめてもの救いか……)」
「刑事!お待たせしました!」
「やっと来たか。ガイシャは見ての通りだ……って、この状況じゃあ分からんわな。とにかく、頼んだぜ」
中年刑事が言うと、鑑識班はカメラや試験道具を持って、死体が散らばった現場に近づいていく。
途中唸り声が聞こえるが、聞かない事にしよう。
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