ダーク・ファンタジー小説

Re: 太刀川探偵捕物帖 ( No.2 )
日時: 2022/01/25 11:03
名前: 緋月セト (ID: TZ3f2J7J)

 事の発端は、19世紀末に起こった一件の事件。
 それを皮切りに、地球の真東に浮かぶ極東の島国では、『異常』な事件が頻発するようになった。
 警察の出番は増えたが、死者数も相対的に増した。

「それが今や、現場検証だけになるとはな……」

 中年刑事はタバコに火を付けると、薄暗くなった空に紫煙を立ち昇らせる。その光景は不謹慎極まりないが、死者を弔う送り火のようにも見えた。

「タバコですか?」
「良いだろ?この臭いは、ずっと取れる事はねェ」
 
 この事件の死傷者のリストには、もちろん警察関係者も含まれている。
 そしてこの事実が、事件の捜査を難航させていた。
 警察官も巻き込んだ無差別殺人にしては、動機が不明過ぎる。尤も、突発的な物がほとんどだが。

「(更に難解なのは、今回の件も含め、全ての事件で殺害の手口が違うって事だ)」

 1件目は焼殺。
 被害者は、文字通り骨も残らないほど焼かれ、身元の判別に苦労した記憶がある。
 2件目は凍殺。
 これは詳細は知らないが、管轄の刑事曰く、「ガイシャは物言わぬ氷像に変わってた」らしい。
 3件目は刺殺。
 被害者は女性で、全身の穴と言う穴をナイフと思しき刃物で穿たれていたそうだ。
 4件目は強姦。
 被害者は3件目と同じく女性。性的暴行を加えられたのち、内臓破裂で死亡したと思われる。
 そして5件目は───見ての通りの惨殺だ。