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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 太刀川探偵捕物帖 ( No.3 )
- 日時: 2022/01/25 11:15
- 名前: 緋月セト (ID: TZ3f2J7J)
紅く染まったこの惨状を言葉で形容する事は、非常に難しい。被害者も、ある日こんな形で殺される事になろうとは、思ってもいなかっただろう。
やがて、現場の鑑見を終えた鑑識班は、ぞろぞろと現場から引き上げていく。
「おぇぇ……ッ」
「……」
現場には、壁に背中を預けて座る青年警官と、仏を見つめる中年警官がポツンと取り残されていた。
「いつまで吐いてんだてめーは」
「うぅ……、すみません……」
青年警官の有様に、中年警事はため息をつく。
ここに来た当時は熱意と希望に溢れていたのに、たった二ヶ月でここまでなろうとは。
中年警官はタバコを咥え、思いっきり蒸す。
「で?てめーいつまで、そうしてるつもりだ?」
そして、疼くまる太刀川の方に目を向ける。
「太刀川ァ、こうなる事は分かってたはずだ。俺たちも、いつこうなるか分かったもんじゃあねー」
中年刑事はタバコを壁に押し付け、吸い殻を携帯灰皿の中に入れると、淡々と語り始める。
それはまるで、息子を諭す父親のようだった。
「俺たち警察の仕事は、いち早く犯人を捕らえ、市民の皆さんに安心と安全を保証する事だ。だが、それをやるには、まずは自分の命がなきゃいけねェ」
中年刑事は太刀川の腕を掴み、立ち上がらせる。
そして、ある言葉を告げた。
「太刀川迅巡査。本日を以って、貴官を免職処分とする」
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