ダーク・ファンタジー小説

Re: その足、あたしにちょうだいよ【ホラー】 ( No.3 )
日時: 2022/03/09 20:37
名前: シャード・ナイト☪︎*。꙳ ◆GHap51.yps (ID: NdcMw1Hu)

第三話【陽だまり】

 陸と電話越しに会話した翌日。
 車イスを動かしながら、学校へと向かう。
 その最中、久々に会う顔に何回も声をかけられた。
 家を出たときにはたった一人で車イスを動かしていたのに、気付けばメクは友人に囲まれ、車イスを押される形で登校していた。
 久しぶりに母以外と対面でした会話は、ちょっと……いや、凄く楽しかった。
 十字路に差し掛かると、遠くから走るような足音が聞こえる。―――聞きなれたその音に、メクは思わず笑みをこぼした。

「メクーーー!!!」

 元気よく走って来て、近くに来たあたりでスピードを落としてからメクに抱きつく陸。

「陸」
「きたきた」
「陸ちゃん、メクちゃんがいない間ずっと元気なかったんだよ」
「手術中はもう放心状態」
「え、そうなの? それは少し見たかったな」

 陸は元気を絵に描いたような人で、ちょっとやそっとでは滅多に落ち込みやしない。だからこそ、少し見たかったという気持ちと、自分のために落ち込んでくれたことの嬉しさがこみあげてきた。

「意識取り戻した報告が来た時の万円の笑みとかほんとにわかりやすかったよな」
「その後すぐメクちゃんの病院に走ったんだよ。授業中なのに」
「えぇ!?」
「あーもう、そんな話いいよぉ! ほら、どいて! 私が押す!」

 お見舞いに来なかったということは、気遣った先生や母が止めてくれたのか、それとも引き戻されたのか―――そんな考えを突き破るように陸はそう言い、車イスを押している子と車イスの間に割り込む。
 まったくもう、と苦笑しながらも、陽だまりの中のような空気は、凍りかけていた陸の心を段々と溶かしていった。