ダーク・ファンタジー小説
- Re: 知らぬ合間に異世界転生 ( No.2 )
- 日時: 2022/07/28 00:01
- 名前: 襲い夜行進 (ID: hDVRZYXV)
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三日前、少年は突如として目覚めた。
ここはどこだろう。まぶたを何度もこすりながら、ぼやけた視界を見渡す。
何もない。真っ暗だ。日の光も月の光も見当たらない。
どうして俺はこんなところにいるのだろう。
長い間眠っていたのだろうか。身体も思うように動かない。どの部位も凍りついてしまったかのように、硬く冷たい。首を曲げようとすると、ミシミシと木製人形のような音を立て、わずかな不快感が胸に染み込んでいく。このまま仰向けに寝ていようかとも思ったが、寒い暗闇で独りでいる寂しさから、とりあえず出口を探すことを決心する。
少年は両手で地面を押し込み、無理矢理起き上がろうとした。
「……いっ!」
少し頭を浮かせただけでも痛みが全身を巡る。手の感触から考えると地面は岩のようだ。そんなところでずっと寝ていたのではこの痛みも無理はない。
それでも少年はこらえて、なんとか上半身を起こすことができた。
少しだが、心にゆとりが生まれる。
すると、どこからか風の音が聞こえてきた。
耳をすまして、音の出どころを探る。
風が若干強かったのもあってか、少年はすぐに視界の先の方から来ていることが分かった。
また両手で地面を押し、尻を引きずりながら今度は前方に進む。このとき感じた摩擦で自分が服を着ていないことを同時に理解した。
しばらくすると、壁にぶつかり、目線より少し高い位置に指が三本ほど入りそうな隙間を見つけた。
そこから冷たい風が入り込み、全身を覆う。少年は思わず自分の手で自分の身体を抱き締めて、歯を細かに震わせた。暗闇の中がこんなに寒いのも納得だ。
少年はゆっくりと隙間から外を覗いてみる。
「お!」
どうやら向こう側は暗闇とは真逆の白い世界のようだ。
すかさず、少年は隙間に指を入れ、外に出ることを試みる。
「………。はは、さすがに無理か、て、ええ!?」
なんと、隙間を指で埋めただけで壁は一瞬の間をおいてからバラバラと砕け始めた。
刹那、視界いっぱいに雪の降る銀世界が広がる。少年は白の眩しさに思わず目を閉じ、両腕で顔全体を隠した。
だが、そんなことよりさらに重要な問題に少年は気づく。
今彼は衣一つとして身にまとわずに雪降る大地に放り出された状態。要するに、
「めっちゃ、さ、さむ!!」
ということであった。