ダーク・ファンタジー小説
- Re: 知らぬ合間に異世界転生 ( No.4 )
- 日時: 2022/08/05 15:52
- 名前: 襲い夜行進 (ID: hDVRZYXV)
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『──どうしてあなたは』
『──ごめんなさい』
『──私、あなたのこと』
『──だから私は』
『──守りたかった』
『──さようなら』
『──私は……』
────
──
……ここはどこだろう。てっきり雪の中で死んでしまったと思っていたが。
少年はまた仰向けに寝ていた。しかし、背中にはあのいまいましい岩のかたい感触は無く、むしろ雲のように柔らかい何かに包み込まれている感じだ。とすると、やはりここは天界だろうか。
──いや、それはありえない。
「……あれ?」
なぜ今俺はそう思ったのだろう。少年は自分が天界になど逝けるはずもないと、なぜかそう感じていた。
それ以上考えようとすると、小さな頭痛が走る。とりあえず今の状況を確認するため、少年はゆっくり起き上がった。
「ここは……」
少年は重いまぶたをなんとか持ち上げ、辺りを見回す。どうやらどこかの一室らしい。部屋全体が焦げ茶色をしていて木のぬくもりが感じることができる。少年が今座っているのは古びたベッドで、少し体を動かすと軋む音が伝わってきた。
他には木の椅子と机が部屋の隅に置かれ、机の上にはなにやら白い膨らんだ袋と紙が一枚置かれている。ベッド横の窓からは光が一直線に射し込み、少年の瞳を刺激する。
以上から、少年はここがいわゆる寝どころであると推測した。
それにしても誰が俺をここに……。
とりあえず机まで移動し、その上の袋と紙を確認する。
袋を軽く持ち上げてみると、中身の物がジャラリと音を立てた。そして思っていたよりも重い。
少年は息をのみ、ゆっくり袋の中を覗いてみる。
「こ、これは!!」
なんと中には大量の銀と銅のコインが入っていた!
一体どういうことなのか。
「あ!」
少年はさらに気づく。この世界で初めて目覚めたときは服を着ていなかったはずなのに、今彼は薄茶色の革服と真っ白なセーターを身にまとっていた。
やはり誰かが少年を助けたのだ。
少年はそのままそばにある紙にも目を通す。なにか文字が書いてある。だが!
「え……読めない……」
そこには彼の知らない言語があった。