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ダーク・ファンタジー小説
- Re: カガミヨカガミ(No.4) ( No.4 )
- 日時: 2022/08/11 14:47
- 名前: みずま (ID: XLYzVf2W)
四 乾いた頬
『連れて行かないで…!』
あの時の母さんの涙でぐちゃぐちゃの表情。
忘れるにもこびりついて離れないくらいに焼き付いて忘れられない。
_この世界の基準は美しさ。
正直母さんも父さんも特別美しい訳ではないが。俺は俺自身もそこまで美しいとは思わないし。
そもそもこの顔が美しい、美しくないだとかは誰が決めているのか。いろいろ腑に落ちない。
でも、正直もうどうでもよかった。
権力者でもなんでもない俺が、こんなこと疑問に思った地点で何も変わらないし。涙もでない。
俺はなんとなく宮を出た。
…また来てしまった。
近くの海岸。最近やたら無性にここに来たくなってしまう。ここから水平線やら空やらを見るのが好き。
今日の空は澄んだ水色だ。「美人」とは違った美しさ。万国共通の。
だが、そんな穏やかな時間はここで終わった。
「…え?」
砂浜を見渡したとき、ひとりなのに思わず言葉がでてしまった。
人が…倒れている…?
恐る恐る近づく。間違いない。男の子だ。
駆け寄って目を閉じて倒れているその人に声をかけようとした。
俺は止まった。
目を閉じていたが、確かに感じた。その顔に懐かしさと安心感を。
それは本当に、『俺の顔』にそっくりだった。
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