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ダーク・ファンタジー小説
- Re:マリオネット ( No.1 )
- 日時: 2022/11/19 10:25
- 名前: @いなりちゃん (ID: 8kWkLzD1)
第1話『目覚め』
朝。
ピヨピヨと小鳥のさえずりが聞こえる。木や草、川などの大自然に囲まれながら目を覚ます。
「おはようと」呟いても返事はない。
聞こえるのはやっぱり小鳥の声と木の葉が揺れる音だけ。
静かな部屋の窓から景色を眺めて考える。
ここから見える大自然のその先にあるのは、どんなところなんだろう。
もし町があるなら。町にはどんな人が居て、そんなものがあるんだろう。
もし、森が続いているなら。どこまで森が続いているのかな。
外に出てみたいなあ…
なんて想像しながら着替えていると、リリリン、リリリンとベルの音がして
「朝食の時間でーす。」と大きな声がした。
慌てて部屋から飛び出すと、廊下にはもう列ができていた。
急いで列の最後尾に並ぶと後ろからふわあとあくびがした。
「おはよお〜。リリコ、…みんな起きるの早いねえ。私、まだ寝てたいのになあ。」
「おはよう。リン。私だって、まだちょっと眠いよ…」
私はリンと同じようにふわあとあくびをした。
「しっかり並んで。はい、進んで、ほら〜朝食だよ〜。」
と係の人は手に持ったベルをリリリンとまた鳴らし始める。
この廊下に並んでいるのは、みんな、それぞれ事情があって両親と離れてしまった子供達。
私もその1人。4歳の時にこの施設に来たらしいけど、まだ幼かったからか、親の顔さえ忘れちゃった。
でも捨てられた時の記憶なんて覚えていない方が幸せだよね…。
それより私は施設の外が気になってしょうがないんだよなあ。
「ちょっと。そこ、トレーを持って。列が詰まっていますよー。」
はっ!列に並んでいたことを忘れてた!!
慌ててトレーを持つと、後ろからリンの声がした。
「リリコー。寝ぼけてるの?あっはは!」
えへへへ…。
【つづく】
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