ダーク・ファンタジー小説

Re: Cord___CyAN ( No.11 )
日時: 2022/10/20 11:53
名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)

Episode 3.「Day off」

「休暇?」
「そ、お前ら二人の活躍は組織全体で見ても目に余るものばかりだ。だから、褒美として休暇をやろうかなと」
テロの鎮圧はこの1ヶ月で8件と、かなりの活躍ぶりだった。
しかし、二人からすればそこまで活躍していないような気がしていた。というかこんな短期間で8件もテロが起こっていた事実に、今ツッコミたくなった。
「代表には俺から言っておくから、心配すんなよ。楽しんでこい」

「とは言われたものの、行きたい場所とかある?」
「私と行く前提なんですか」
「あれ?違った?」
普通に違うだろ。
「まあいいですけど...。そうですね、水族館とか行きたいです」
「お、中々ロマンチスト?やっぱりおと___」
「乙女ですが何か?」
いつ取り出したのか分からないガバメントの銃口を、叶魅の頭に突きつける。
この感覚は恐怖以外の何物でもない。
「い、いえ何でも...じゃあ行きますか水族館」
心なしか、藍奈の目が輝いて見えたのは叶魅だけであろう。

Re: Cord___CyAN ( No.12 )
日時: 2022/10/22 12:01
名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)

「どこの水族館行くー?」
「サンシャインに行きたいです」
「即答だね...じゃ、行くか」
東京で一番大きい水族館と言っても過言ではないだろうか。
叶魅も捜査官たちと一緒に行っていたが、バディと行くのは初めてだ。
「ちょうど着いたら開くころじゃないか?...え?待って僕たちそんな早く起きたの?」
「そうですね。5時起きです」
「遠足前の小学生かよ!!ワクワクして寝れなくて、早起きしちゃったタイプだろ!!」
車のなかで一人騒ぐ男、津葉木叶魅。そして横で耳を塞ぐ藍奈。
ちなみに今日のコーデは、叶魅は紺のオーバーサイズシャツに黒のパンツ。藍奈はワイシャツの上に紫のカーディガン、デニムのロングスカートだ。
「うるさいですよ。あと出口間違えないでくださいね」
「僕信用されてないなー」
「信用はしてますけどね。まあ、あと100mで出口なんですけど」
「もっと早く言って!?」
藍奈は表情一つ変えずに、叶魅の方を向いた。
「ずっと一人で喋ってて、タイミングを見失ったんです」
「それはすいません...」
やはり情けない男である。このままでは、帰ることもままならい。

「着いたな...疲れた」
「何言ってるんですかこれからですよ」
「え~?休ませて~」
そんな叶魅の願いも虚しく、藍奈は腕を引っ張った。
中は、薄暗く幻想的な雰囲気を放っている。
「クラゲだ。綺麗だなー」
「そうですね...」
どこか寂しそうな表情で水槽を見つめる藍奈を、不思議に思ってしまったことを後悔することになった。
「...何かこの水族館に思い入れとかあるの?」
「ええ。家族でよく行ってたんです」
非常に和むような話で、思わず訊いてしまった。
「ご家族は今どこに?」
「居ません。2年前の大規模テロで、みんな死んじゃったんです...」
「...ごめん。辛いこと訊いちゃったね」
2年前、犯人こそ判明しているものの未だ解決されていない大規模テロ事件があった。
犯人は、テロの2日後に何者かによって誘拐されてしまった。それ以来、行方不明扱いされて2年という月日が流れた。
「いえ、慣れているので。それより、早く行きましょう。いつまでもクラゲを眺めているわけにもいきません」
「...ん」
短く返事をして、別のフロアに移動した。

Re: Cord___CyAN ( No.13 )
日時: 2022/10/22 17:32
名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)

「今日はありがとうございました」
「いや、こちらこそ。帰ろうか」
日が傾き、空を茜色に染めていた。
車に乗り込むと、誰かがこちらに近寄ってきた。
「あの~、警察の者なんですが、2年前のテロ事件について知っていることを聞かせていただけないでしょうか」
「ええ、良いですけど...」
すると、警察と名乗る男はメモ帳を取り出した。
「身分証明できるものの提示をお願いします」
そう言われたので、捜査官手帳を見せた。
すると、嫌な顔をしながら警察はどこかへ行ってしまった。
「...行っちゃいましたね」
「大半の警察はCyANのことを嫌ってるからね。政府が創っといて、解体しようとしてるぐらいには、僕たちは嫌われ者だよ」
「そうなんですか...ん?」
藍奈の目には、指名手配のポスターが目に留まった。
そこには、2年前のテロ事件の犯人の写真。
「テロ事件の、犯人...?」
「みたいだな。名前は、確か...楠本蒼唯くすもとあおいじゃなかったっけ」
「そうですね」
車を走らせ、何事もなく彰の元へ帰ってこれることができた。
「ただいま~」
「おう!おかえり!楽しかったか?」
「最高だったよ。藍奈にも楽しんでもらえたからな」
すると、店の扉が開いた。
スーツを身に纏い、身長は彰と同じぐらいの短髪の男。
「久しぶりだな、小暮」
「木場...」
彰はその木場という男を紹介した。
「こいつは木場一翔きばかずと。俺の親友で、武器調達のプロだ」
「初めまして。津葉木くん、柏木くん」
叶魅は、彼に対する「嫌」何かを感じ取った。本能が避けたがっている、何かを。

3話終了です。
サンシャイン水族館行ったことないです