ダーク・ファンタジー小説
- Re: Cord___CyAN ( No.14 )
- 日時: 2022/10/25 21:14
- 名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)
Episode 4.「Taste of Blood」
「おはようございまーす...」
「遅かったじゃないか、叶魅」
12分という遅刻をしてしまった叶魅は、周りから冷たい視線を浴びていた。
そんなことお構いなしに、自分の席へと座る。
「ごほん...続けます。今回はテロ組織の本部に強襲をかけます。捜査官総出での任務です、くれぐれも前回のような失態はしないように。作戦内容は小暮指揮官、お願いします」
「はい」
代表の呼び掛けのあとに、彰は席から立ち前に出た。
しかし、さっきの代表の言葉は叶魅に対する嫌みなのだろうか。そんな考えが叶魅の脳裏をよぎっては消えていく。
「今回は、テロ組織の本部を叩く。直接潜入して、警備の薄い方から潰していく。簡単だろ?内部構造に関しては、あとでそれぞれのスマホに送っておく」
- Re: Cord___CyAN ( No.15 )
- 日時: 2022/10/28 16:46
- 名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)
会議が終わり、それぞれバラバラに廊下へ出ていく。
ただ作戦内容を伝えるだけなのに、丸3時間も使ってしまった。
流石に時間かかりすぎだろ、と内心思っていた叶魅だが、口に出すと色々面倒なことになりそうなので思うだけで留めた。
「久しぶりっすね、叶魅」
「そうだな、聖華季」
橘聖華季。かつて、叶魅と同時期に配属され、バディとして共に命を預けあった仲だ。
金髪で口調も垢抜けたものだが、実力は本物。彼女の凄みは、圧倒的な対応力。どんなに敵の数が多かろうが、彼女の前では無力に等しい。
「新しいバディとは上手くいってるっすか?」
屋上のベンチに腰かけて、コーヒーを飲みながら問う。
「ああ、それなりにな。お前こそ、一人でもやっていけてるか?」
「心配ないっすよ!私が失敗してたら、もうこの世に居ないっすよ」
何て笑って、コーヒーを一口。
「荒木さんともバディ外されて、大変だったすね...」
「まぁな。でも、僕には藍奈が居るから」
「私のときよりも戦果を挙げているのはさておき、今回の任務は死人が出てもおかしくないっすよ」
「ああ、しかも実弾の使用が許可されてるってことは相当危険なんだろうな」
実弾の使用が許可されている任務は、実に1年半ぶりである。つまり、危険が伴うということ。
死人が出てもおかしくない状況で、いつもより緊迫感が、すでに漂っていた。
「16時にまた会おうっす」
「ああ、またな」
- Re: Cord___CyAN ( No.16 )
- 日時: 2022/10/31 22:04
- 名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)
15:51
本部の立体駐車場で待機とのことだったので、待っているのだが...。
「誰も来ない...」
場所を間違えたか、あっちが場所を間違えたか、そもそも集合時間が違うか...。
考えるだけで、鳥肌が止まらない。
落ち着きがない様子が周りから見ても分かるようで、通行人に冷たい視線を送られていた。
「...え待って藍奈から電話...」
恐る恐る応答が表示されている場所をタップして、耳に近づけた。
「もしもし...?」
「津葉木さん、もう集合時間過ぎてますけど」
「いや、居るけど...えもしかして3階?」
「そうですけど、2階ですか?」
冷や汗が止まらない。
なぜ数字を見間違えてしまうのか、なぜもっと早く確認しなかったのか。そんな考えが頭の中を駆け巡る。
「すいませんでした!!!」
「アホかお前。見間違えるかよ普通」
「私のバディなんですから、しっかりしてください」
もはや何も言い返せない自分が嫌になってくる。
「時間がないんで急いでくださいっす」
- Re: Cord___CyAN ( No.17 )
- 日時: 2022/11/05 22:47
- 名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)
車に乗り込み、テロ組織のアジトへと向かう。
叶魅は、愛銃グロックに実弾を装填する。
「ほんと、嫌な任務」
「しゃーないだろ。それに、死ぬかもしれないんだ。...でもな、死んだら絶対許さない」
「...死にはしません、僕は自分を知るまで死ねない」
我ながら中々に中二病のようなことを言ってしまった。
それでも、誰一人としてからかわない。そんな風景に少し残念さを抱いたが、そんなのはどうだっていい。
今は、生きることだけを考えよう。生きて帰ろう。
「___こちら貴島、これより作戦行動に移る。各自散会」
潜入捜査官部隊責任者の貴島恭平の指示で、他の捜査官が一斉に防弾チョッキを鳴らしながら、それぞれのポイントから潜入する。
強襲が目的のため、ド派手な潜入だ。
「!?何だお前らは!!」
「犯罪未然防止組織CyAN、その端くれだ」
これが、始まりのゴングだ。
「クソ!!ぐわぁ!!??」
「よし、これでここは片付いたか」
開始3分も経たずに、叶魅は警備部隊を全滅させてしまった。
それは他も同じで、順調すぎるぐらいだった。
「おやおや、あなたが一人でこの量を?」
「そうだけど?桐生司さん」
「私のことはすでに調べ済み、ですか。嬉しいですね」
- Re: Cord___CyAN ( No.18 )
- 日時: 2022/11/07 22:14
- 名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)
黒髪に若干の金メッシュ。黒のスーツを身に纏ったすらりとした体型、丁寧な口調。
桐生司、大規模テロ組織の副組長。
「わざわざ、副組長から出てきてもらえるとは、光栄ですね」
「そう言ってもらえると、嬉しい限りです。まあ、あなたの命日が今日じゃないことを祈りましょう」
「安心してくれ桐生さん、ムショへの内定と地獄への内定は決まってるからな。税金で食べていけるぜ?」
二人の間の空気が歪む。互いに銃を所持している。
「こちら津葉木、桐生司と接触」
『何だと!?津葉木、すぐに応援に行く!それまで絶対に交戦するな、死ぬぞ!』
しかし、叶魅は最初から恭平の命令を無視するつもりだった。
この男さえねじ伏せられれば、この男さえ無力化できれば、この男さえ殺せば圭が救われる。
「...生憎、私は銃を使う戦闘が苦手でして。私は素手で勝負させていただきます」
「なら僕も肉弾戦にするよ。フェアじゃないし...ね!!」
先に動いたのは叶魅だった。ネクタイを右の拳に巻き、全体重をかけ殴る。
その拳は、人を殺すためだけに特化したスピードとパワーだった。
「殺意の拳...!いいですねぇ、闘争意欲が湧いてきます!」
しかし、戦闘狂の司の前では通じなかった。
避けて体勢を崩すかと思われたが、司はそのまま荷重移動し殴る。
(速い...!)
ギリギリで回避するも、叶魅の予測能力に体が付いていけず、限界に近い。
「何やってんだ叶魅!!命令無視とかふざけてんじゃねえぞ!!!」
怒声。
その正体は、叶魅の先輩である圭だった。
「荒木さん!?何でここに!?」
「バカかてめえは!?いいから、さっさと動け。二人で片付けるぞ」
「2対1ですか、いいでしょう」
「てめえを殺るのはあたしらだ。兄さんを殺された身なんでね...!」
圭の兄である荒木界は公安警察だった。
機密情報が多く持っているため、こういった組織には狙われやすかった。彼もその内の一人だった。
彼は、司によって暗殺された。
- Re: Cord___CyAN ( No.19 )
- 日時: 2022/11/20 14:01
- 名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)
「そうですか、そうですか」
司は微笑みながらそう言うが、目は笑っていない。
叶魅は、感情を露にしてしまった。
「そんだけかよ...!?あんたは殺した人間に対して何も思わないのか!?」
「叶魅」
「ええ、何も思いません。死んだらただの肉塊にすぎないので」
「ふざけんなよ!!」
「叶魅!もういい...もう少しで貴島が到着する」
圭の制止で、ようやく落ち着いた。
しかし、怒りのボルテージは上がったままだ。
- Re: Cord___CyAN ( No.20 )
- 日時: 2022/11/23 13:53
- 名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)
「まあ、私の目的は津葉木さんの排除です。排除するのは私ではないのですがね」
その時、圭は咄嗟に反応した。考える前に体が動いていた。
叶魅は感情を鎮めるのに精一杯だった。
「叶魅!」
バン!!
突如として轟音が鳴り響く。窓が割れ、一瞬で分かった。
狙撃。しかし、彼に向けた弾道は当たらなかった。
「...荒木、さん...?」
目の前には右目から血を流す圭の姿。
ああ、そうか。荒木さんが庇ったんだ。
思えば思うほどに冷静になれない。呼吸が乱れ、心拍数が一気に上昇する。
「津葉木!命令違反だぞ!?」
「叶魅、下がるっす!!スモークを撒くっす!!」
「津葉木さん、早く!!」
目の前の惨状に彼は動けなかった。命令違反だとか、そういうのはどうだっていい。
「津葉木叶魅、あなたは命令違反をしたということでよろしいですね?」
「...はい」
はぁ、と溜め息をつき代表は蔑みの目を向けた。
今回は叶魅の命令違反、そして圭の負傷により任務は失敗に終わった。
「今回は厳重注意としますが、次はありません。あなたに居なくなってもらっては小暮が困りますからね」
「...はい、ありがとうございます」
叶魅はそのまま部屋を後にした。
もし、命令違反をしなければ、彼女は無事だったのだろうか。
「浮かない顔っすね、らしくないっすよ?」
「僕のせいで...」
手を握られ、叶魅は目を見開く。
「誰のせいでもないっす、誰かの為に戦えることは素晴らしいことっす」
「...っ、僕は...!」
気づけば頬を生暖かい液体が伝っていた。顔はくしゃくしゃになり、みっともない姿だった。
「もう、いいんだよ?」
女の子らしい口調。
依存する元相棒。
4話終了です。
果たして、圭はどうなってしまうのか...!?