ダーク・ファンタジー小説
- Re: Cord___CyAN ( No.28 )
- 日時: 2022/11/27 17:53
- 名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)
Episode 8.「Unknown」
「...奏太」
「はい」
叶魅はパソコンの画面を凝視しながら、奏太を呼んだ。
代表が死亡してから3日、影虎の行方は未だ掴めていない。
「ここの会話聞こえるか?」
「ええ、換気扇の音が大きいですが...」
『黒井、これで私は...!』
『ええ、この国の政府を動かせますよ』
『よし...!この国は私の物だぁぁぁぁ!!!』
『まあ、俺があなたを殺せばの話ですが』
ここで動画を停止させた。
代表まで黒だったとは、上層部など信じられない。
「連続的にCyAN関係者が殺害されているとなると、裏で絡みでもありそうですが...」
思えば司との接触から関係者が殺害されている。奏太の見解も否定はできない。
「...黒井の目的が国の支配だったりとかって」
「うーん...どうだろうなー。興味なさそうな感じだけど、そもそも何でCyANにこんな危険人物が居たのか」
考えれば考えるほど謎だ。
今後、抗争が激化することは間違いないだろうが、それで叶魅の過去が分かるはずもない。
記憶の延長線上に立たされた叶魅は、どうすることもできないままだ。
「お疲れさまだ、二人とも」
「九条さん、お疲れさまです」
本部に泊まり込みで調査しているので、完全に体も限界がきていた。
渚の差し出したコーヒーがいつもより美味しい。
「奏太くん、君は寝ていいぞ。ここからは私たちが引き受ける」
「え?いや、申し訳n」
「寝ていいぞ?」
「ハイオヤスミナサイ」
この上司、圧で後輩を寝かせやがった。
「...叶魅くーん、最近冷たくなーい?」
「何がですか。冷たいも何もこの状況下でヒイキしてる場合じゃないんですよ。藍奈呼びましょうか?」
「遠慮しときます」
なぜしょぼくれるのか、叶魅には全く理解できななかった。
今言ったことは全て事実だ。
関係者が次々に殺されている、次は捜査官が殺されてもおかしくはない。ここでふざければ、命を落としかねない。
- Re: Cord___CyAN ( No.29 )
- 日時: 2022/11/27 22:04
- 名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)
「...叶魅くん、君はすごいよ」
「何がですか?」
叶魅は片手間に話を聞いた。
「あれだけ精神的なダメージも負って、2日も寝ないで作業して。何でそこまでするのさ」
「...僕はみんなにしてもらったことの恩返しをしたいんです。記憶喪失で顔すら1億人の中の誰ともヒットしない、こんなやつを放っておかないでくれた。そんなことしてもらって、僕は何もしてない。だからこうすることしかできません」
「ううん、叶魅くんはよく頑張ってる。それに恩返しなんて、もう済んでるよ。君がここに居るだけで、みんなが救われてる」
叶魅は訝しげな表情を浮かべたが、すぐ笑顔に変えて言った。
「僕がそう思われてるなんて、嬉しいです」
「そっか。...そろそろかな」
その言葉の意味を理解するまで時間はかからなかった。
強烈な睡魔に襲われ、力が入らなくなる。
「睡眠、導入剤...!九条、さん...!」
「ごめんね、叶魅くん。でも、こうするしか...君を眠らせる方法がこれしかなかったの」
叶魅の体は限界が近かった。
立てばふらつき、手は震え、衰弱しきっていた。
それもそのはずだ。叶魅は肉体労働に加え、次々に起こったハプニングのせいで、ボロボロだった。
「おやすみ、叶魅くん」
遠のいていく声に、返事すらできず眠った。
「よく頑張ったね、叶魅くん」
そっと彼の頭を撫で、毛布をかけた。
- Re: Cord___CyAN ( No.30 )
- 日時: 2022/11/28 16:29
- 名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)
「...いつから見ていた?聖華季」
「バレてたっすか、渚さん」
コンクリートの柱から姿を出し、叶魅に視線を向けた。
それに気づいた渚は、冷たく睨む。
「私が叶魅を部屋まで運ぶっす」
「その必要があるかな?ここにはベッドもある、わざわざ私室まで運ぶ必要があるの?それとも___」
____二人っきりじゃないとまずいことでも?
聖華季は顔を歪め、怒りを露にした。
「...私と叶魅の邪魔をしないでよ...!私と叶魅は付き合ってるの!!叶魅は私の所有物、他人が知っていい権利はない」
「身勝手だな、聖華季。叶魅くんは付き合ってるなんて聞いたことないし、そもそも所有物もなにも彼には自由があると思うのだけれど?」
ついに限界がきたのか、ポケットからスタンガンを取り出す。
しかし無謀だ。近接戦では渚の方が遥かに強い。
「私が勝てるわけないのは知ってる、だからズルするの」
テーザー銃。しかし、気絶するほどの威力はないはず。
かわしきれず、そのまま受ける。
「っ!!??カハッ...」
魔改造テーザー銃の前では、強者も一般人と変わらない。
「ふふっ、これで一緒だね♪」
叶魅をそのまま持ち帰ろうとすると、足首を強い力で引っ張られる。
渚だ。いくつもの修羅場をくぐり抜けた彼女は、気絶なんてしなかった。
「残念、だったな...。君は無期限で謹慎及び叶魅くんへの接触は禁止処分だ」
8話終了です。
ネタ切れ?