ダーク・ファンタジー小説

Re: Cord___CyAN ( No.34 )
日時: 2023/01/26 18:09
名前: 緋彗 (ID: 5R9KQYNH)

Episode 10.「Alone」

「あの野郎...!」
「...聖華季の謹慎を解除、ここに向かわせろ」
渚は苦渋の決断をした。
今のメンバーでは絶対に勝てないから。ならば、優秀な人材を連れてくるまで。

「黒井!」
「あぁ?叶魅かぁ...わりぃな、今圭と話してるんでな」
叶魅の怒りのボルテージは急上昇する。
影虎だけは、こいつだけは生かしておけない。
「ったく、店長、あなた酷いもんですね」
「夕葉ぁ、立派になったなぁ」
降りしきる雨の中、ドン!!という腹の底に響く轟音が鳴った。
「危ないじゃないか圭...しっかりルールで決められてただろ?人には殺傷弾を撃つなって」
「へっ、てめえだって代表ぶっ殺したじゃねえか」
いつもより男勝りな口調で話す。
「ありゃ社会のゴミを抹殺しただけだ。...んじゃ、圭は殺す。俺の計画を邪魔するゴミだからな」
「あ?あたしに指一本でも触れられると思う___かはっ!?」
一瞬で視界から消え、圭に後ろに現れたと思ったら圭は腹部に大きな切り傷と、左腕を失っていた。
「荒木さん!」
奏太は銃を乱射するが、弾道は全て回避され鳩尾に拳がめり込んだ。
「奏太、見違えたなぁ...」
アサルトライフルを取り出し、叶魅に銃口が向く。
「叶魅、お前が一番厄介なんだよ」
「どこ見てんの店長」
背後に回った夕葉がナイフで背中を刺す。
血が雨とともに流れだし、影虎はのけぞる。
「痛いじゃないか夕葉、こんなもの使ったら」
「店長も動きがトロくて助かった。お陰で銃が使えるし」
銃をホルスターから取り出し、トリガーに指をかけた瞬間、夕葉の右視界が奪われ激痛が襲ってきた。
影虎の手にはナイフに刺さった球体。目玉だ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
血を吹き出しながら叫ぶ夕葉。
「あ、あぁ...」
「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!!」
恭弥と藍奈が突っ込む。
二人の身体能力を考えれば、対等に渡り合えるはず。
「バカだなぁ!!俺が何もないと思ったか!」
左手のマシンピストルを乱射する。
それをまともに食らってしまった恭弥は、後ろに転び再び立つことはなかった。
「やっぱりお前らはバカだなぁ、こういうこともあるって研修期間で習わなかったか?」
「それは、こういう場合もすか?」
聞き慣れた声に、金髪のショート。
聖華季だ。
「不意討ちとは感心しないな」
「あんたが言えることじゃないっす」
頭に突きつけた銃口から炎が吹き出す。
だが、影虎が怯む様子はなかった。
「なっ...」
「頭ぶち抜かれたって、俺は死にはしねえ」
即死するはずなのに、なぜ。
「全く、悲しいよ。お前らが今ここで死んでしまうんだからさ」
その瞬間、影虎の後ろに武装した部隊が出てきて、一斉に発砲した。
鳴り響く銃声。
「て、めぇ...」
圭は力を振り絞り、部隊の一人を撃った。
命中し、死体となった。
「荒木さん!もういいから!」
「あたしは、まだっ...死ねない」
片腕しかない状態で、それでも必死にもがく。
人々の平和と、あの日誓った復讐のために。
「ちょうどいいところに、落ちてんじゃねえか」
死体からアサルトライフルを剥ぎ取り、端に照準を合わせる。
「これで、終わりだぁぁぁぁぁ!!!!!」
辺りに銃声が鳴り響き、次々と肉塊へと変わっていく。
火薬の臭いと、血生臭さで頭がおかしくなりそうだった。
「はぁ、はぁ...あがっ」
ばたりと倒れ、意識が遠退いていく。
「荒木さん!荒木さん!」
「ははっ、無理しすぎたな...叶魅、これ持ってけ」
そう言い、圭は愛銃であるデザートイーグルを渡す。
「きっと、お前を守ってくれる。絶対、離す、な...」
「荒木さん?荒木さん!!」
もう、呼び掛けには応答しない。
荒木圭は、死んだのだ。
「そろそろいいか?」
無慈悲にも、呆れた顔をしたクズが立っていた。
「僕は、お前を殺す。みんなのために、僕は」
「そうか。なら、殺す前に言っておこうか。お前はな、大規模テロ事件の犯人楠本蒼唯なんだよ」
雨は止まない。


10話終了です