ダーク・ファンタジー小説
- Re: Cord___CyAN ( No.35 )
- 日時: 2023/01/26 19:24
- 名前: 緋彗 (ID: 5R9KQYNH)
Episode 11.「Finale」
「なっ!?」
「僕が、楠本?何言ってるんだ、黒井。僕は、楠本蒼唯なんかじゃ」
叶魅は既に錯乱状態へと陥っていた。
これは黒井の罠だ。黒井はきっと僕を落として殺すんだ。
「お前はな、俺が楠本蒼唯としての記憶を消し、全く別の人間として人格を構成した。いわば自我を持った人形にしか過ぎないんだよぉ!!!ははははははは!!!」
狂った様子で笑う影虎は、人間離れしていた。
「犯罪者の汚物はここで死ななきゃなぁ!!まずは藍奈からだぁ!!」
「僕は違う僕は違う僕は違う僕は違う僕は違う僕は違う僕は違う僕は違う僕はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
2丁の銃で、ひたすらに撃つ。
影虎は避けることもせず、ただ笑いながら銃弾を浴びていた。
「津葉木さん!ダメぇ!!」
ポケットから取り出した緑色のそれは、手榴弾だった。
自爆だ。
「蒼唯ぃ!!死ぬときゃ一緒だぁ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
地響きが起き、爆炎に包まれ視界が何も見えなくなってしまった。
「っ...!叶魅くん!」
渚が叫ぶが、それに返事はない。
煙が消えると、そこには体の大部分を失った影虎らしきものと腹部に風穴が空いた叶魅が居た。
「津葉木さん!何死のうとしてるんですか!!あなたはその程度じゃ死なないでしょ!?私のバディなら死ぬな!楠本蒼唯ぃ!!家族の敵なら、こんなところでくたばるな!!」
「藍奈」
「楠本ぉぉぉ!!」
「藍奈!!」
乾いた音が雨上がりの空に響いた。
「...救護班を呼んだ、だが生存する確率は低いと思え」
「...っ、あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
もう二度と、彼の笑顔を見れなくなるのだろうか。敵討ちが、できなくなるのだろうか。
「叶魅、いや、蒼唯。よく頑張ったっす」
「柏木藍奈代表」
「はい」
春の陽気に包まれ、桜は咲き乱れていた。
あれから2年後、藍奈はCyANの代表として就任し、渚は司令官。聖華季は、副代表。奏太は研修生教育代表。夕葉は捜査部最高責任者となった。
「国家の安全を守ったことをここに賞します」
これで良かったんだ。全部終わった。
あの日の大事件から2年という長い年月をかけて、日本はテロが0となった。
青い空を見ること、CyANの願いは叶ったのだと。