ダーク・ファンタジー小説
- Re: Cord___CyAN ( No.37 )
- 日時: 2023/01/27 18:19
- 名前: 緋彗 (ID: 5R9KQYNH)
Episode 0.「Started」
「え、えと津葉木叶魅です...」
「つーことで、研修期間は圭に任せようと思う」
見慣れないビルの建ち並ぶ街。車の排ガスの臭いがして、思わず噎せそうになる。
ここは犯罪未然防止組織CyANの本拠地である。
「叶魅は記憶が無いから、俺が名前をつけた」
「記憶喪失ってやつか」
「まあ、お前の教育次第では使えるようにはなるんじゃねえか?」
「肩落とすな!照準がぶれて対象を殺せねえだろ」
「は、はい!」
射撃訓練でも怒られ、
「姿勢落とせ!そんなタッパじゃ、一瞬で殺られるぞ」
「は、はい!」
模擬戦でも怒られ、何をしても怒られる日々が続いていた。
そんな中、同期の橘聖華季は違った。
「ふぅ...こんなもんかな」
「えと、橘さんだよね?」
「そうだけど」
「あの、その...」
何か物言いたげだが、聖華季は首を傾げた。
「ぼ、僕と模擬戦してください!!」
「わわ!そんな大声で言わなくても、普通に頼めばやるって」
それでも、
「っは!?」
「これで私の51勝目だね」
一度も勝てることができず、
「はぁ、はぁ...もう一本!」
叶魅は必死に訓練した。何度も倒れて、何度も立ち上がって。
そして実戦の日。
「叶魅、逃がすな!!」
「ふっ!」
犯人を必死に追う。
「動くな!!」
「っ!?九条さん!」
「叶魅くん、遅れて悪かった」
九条渚。彼の教育係である。
しかし、犯人が武装していない訳がなかった。
「へっ、何が犯罪未然防止組織だ。俺の邪魔をしやがって」
「ちっ!叶魅くん伏せ___」
「っ!!」
咄嗟に体が動き、犯人の顎に飛び膝蹴りをした。
「ごふぇ!?」
「ふん!はぁ!!」
何度も足で踏み潰した。何度も、何度も。
ぐしゃりという音が鳴り響き、たちまち犯人は動かなくなった。
「あぁ...」
「はぁ、はぁ、はぁ...」
それは人間なんかではない。化け物そのものだった。
「今日のMVPは叶魅だ」
「...ぇ?」
「おめでとう叶魅。試験は合格だ。あたしとバディだよ」
内心、彼は全く嬉しくなかった。鬼のような教育をされたら誰だって嫌になる。
津葉木叶魅。犯罪未然防止組織CyANの正式特別潜入捜査官。