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ダーク・ファンタジー小説
- Trick-トリック- ( No.20 )
- 日時: 2012/11/12 19:35
- 名前: はるく ◆2bvow6Zq4g (ID: 6nOSsJSp)
「どんな未来も受け入れて、前に進むことで未来は変えられます」
母がそう言って目を閉じるのと同時に、私もゆっくりと目を閉じた。
更に説明しておくが、この能力は目を閉じないと使えない能力というわけでもない。目を開けていても使えるのだが……あ、別に雰囲気づくりとかではないぞ。
私達がこの能力を使う時、見た未来は目の前で起こってることのように映し出される。その際目を開いていると背景が邪魔して見えにくいため、こうして目を閉じて背景を隠してしまうのだ。
あ、更についでに言っておくが、この時私が見た未来はこんなものだった。
この青年は何処かの職についていたのだろう。しかし、私が見た未来は『リストラされ、夜道をさ迷う青年』そのものだった。ふと母に目をやると、此方も焦りを隠せない様子だ。
「えっと…そうですね………未来を変えることは可能です…」
「はい…?」
この後母がどう対応したかはあまり覚えていない。
「あの〜…こんにちは〜……」
気づくと比較的自分と歳が近いと思われる少女がそこに立っていた。橙色の髪を後ろで束ね、白いワンピースを着たその少女はどことなく寂しげに見えた。
「御用ですか?」
母は次の客の占いを始めているため、私が少女に尋ねた。少女はコクリと頷くと、用意してあった椅子に腰をおろした。
「内容は?」
少女は一瞬体を震わせた。私の聞き方が少し怖かったのかもしれない、と少し反省……
「わ、私には双子の兄がいたんですけど………」
いきなりの第一声に、準備をしていなかった私は少し戸惑った。急いで用意していた水晶を机の上に置き、少女の話に耳を向けた。
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