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Episode10 『同盟 -CooperatioN-』
　9月12日(水)11:30/秋笠 藍


『皆様オ疲レ様デシタ。アレカラ一時間ガ経過致シマシタガ、チャント殺シマシタカ？』

　静かな保健室で急に鳴った放送に、俺の心臓は飛び出そうになった。

　我妻は特に驚いた様子も見せずに、俺からスピーカーの方に視線を動かした。

『デハ、コノ一時間デ一人モ殺サナカッタ方ニハ、強制退場シテイタダキマス』

　“ゲームマスター”は相変わらずの人を不安にさせるような声と発し、スピーカー越しに ぱちんっ という指を鳴らした。それとほぼ同時に、

「ぎゃぁあああああっ!!」

　といういかにもな断末魔といった風な叫びがいくつも校舎から聞こえてきた。——どういうことだ？

　俺は立ち上がると、保健室の入り口を開け、少し外の様子をうかがった。廊下には、首と胴体が真っ二つにされた誰かが倒れていた。他にまわりに人はいない。……誰かに殺されたわけじゃないのか。じゃあこれが、強制退場するということか……。

『コレデ、皆様ノ残リ人数ハ172名トナリマシタ。今後モ、一時間ニ一人ハ殺スヨウオ願イイタシマス。強制退場システムハ未ダ作動中デス。アト、神カラノココマデ生キ残ッタアナタ方ヘノプレゼントガアリマス。全員ノ携帯電話ニメールヲ送信サセテイタダキマシタ』

　ぶつっ とまた一方的に放送は終わり、代わりにケータイがなり始めた。我妻もケータイを開いてメールを確認している。


『From：GAME MASTER
　Subject：PRESENT
　—————————
　ここまで生き残った
　あなたにこの称号を
　プレゼントいたしま
　す。

　　　パラドックス
　　≪不殺主義≫　　　
　　　---END---　　　』


　……なんだこれ？　称号？

「……我妻、お前のにはなんて？」

　我妻は自分の白いケータイを差し出してくれた。そこには俺とほぼ同じ文面と、『≪美麗悪魔バッドエンド≫』という文字が映っていた。

「……神様はつくづく退屈みたいね。170人近くの人間全員分を考え出すなんて」

　ふぅ……、っと我妻は頬杖をついてため息を吐いた。それを眺めながら、俺は思考する。

　もう、そんなに死んだのか。たった三時間の間に。……生き延びるためには、一人は確実に殺さなければならなかった。だから、半分以上が居なくなるってことは予想済みだった。だけど、もう五分の二しか残ってないなんて。

「——さて。ねぇ、どうするの？」

　我妻の声が聞こえて、俺は我妻と目が合っていたことに気付く。はっ、と少し驚いたように肩が動く。

「ど、どうするって？」

　思い切り声が裏返ってしまった。

「私に協力するか、私に殺されるか」

　にやりと勝気に笑いながら俺に脅しをかける我妻。……この選択肢じゃあ選ぶったって答えは決まっているじゃないか。

「わかった。協力するよ」

　それを聞いて、我妻は今までのとは違う、可愛げのある笑顔を向けてくれた。