ダーク・ファンタジー小説
- Re: ナイトメア・サバイバル / Episode19更新!! ( No.48 )
- 日時: 2012/04/29 19:26
- 名前: Kuruha ◆qDCEemq7BQ (ID: 2QWuZ1bi)
Episode20 『もう一回 -Second fighT-』
9月12日(水)13:30/藤貴 杁夜
「あ、おい——」
「いやっ! ごめんなさいごめんなさい! お願いだから蹴らないでっ!!」
さらに身を縮こませ、懇願する少女。僕はどうすることも出来ずに、見下し続けた。
『一時間が経過いたしました。強制退場システムが作動します』
もうこんな時間か……。人間味を感じない合成音声が、スピーカーから聞こえてきた。
『これで残り26名となりました。これからも神を退屈させぬよう、よろしくお願い致します』
彼女が落ち着きを取り戻し、会話が出来るまで回復したのは、それから約30分後のことだった。本当ならこの内に殺しても良かったけれど、なんとなくその気にはなれず、その様子をずっと観察していたのだ。暇で暇で、何度も殺そうかと思ったけれど。
「すみません、取り乱しちゃって……。私は2年C組の安城璃子です。……先輩は?」
「藤貴杁夜。3年C組」
スカートについた埃を払いながら立ち上がる安城。近くでみるとかなりの長身だ。
「どうして、あたしを殺さなかったんですか? 隙なんていっぱいあったのに」
「いや、殺そうとは思ったんだけどさあ。まあ、なんとなく、ってことで」
それで、お父さんがどうしたって? と僕は話を繋げた。
「お父さんねー……。すごく怖いんだ。すぐ怒るし、暴力振るうし」
遠い目をしながら、安城は言った。
「成績だって運動だって、平均を裕に超えるレベルじゃないといけないし。だからあたし、願いが叶うなら、お父さんいらないなーっていうのを願おうと思うんだ」
笑いながら言うけれど、その大きな瞳は真剣なものだった。そして僕を見据えて、凛とした声で言葉を放つ。
「そんなわけであたし、先輩を殺してお父さん消さなきゃならないんです。……殺さないでくれてありがとうございました。でもあたしは、あなたを殺します」
「あー、それは困るな。僕だって叶えたい望みくらいはあるしね。——あぁそうだ。僕はあんたとちゃんと殺し合って決着をつけたかったんだ」
だから、殺さなかった。
「またお父さんを思い出さないよう、一撃で殺ってやんよ」
そう言って、僕はナイフを構えた。
さあ、もう一回。条件はさっきと同じ、僕の方が断然不利な状況だ。
「はぁあぁぁああぁっ!!」
今度は最初から気合を入れて、撃たせる間もないほどに速く、ナイフを振りかざした。
その不意打ちにも似た攻撃を、安城は怯みつつもなんとか回避した。しかしそれでも、肩の下——鎖骨のあたりに浅い切り傷を作ることは出来た。
「っ!!」
痛みに顔を歪め、傷口を押さえる安城。その一瞬の隙を僕は見逃さない。
「もらったぁああッ!」
ここぞとばかりに、首筋に向けてナイフの切っ先を振り下ろした。