ダーク・ファンタジー小説
- Re: ナイトメア・サバイバル / Episode26更新!! ( No.69 )
- 日時: 2012/05/04 12:30
- 名前: Kuruha ◆qDCEemq7BQ (ID: 2QWuZ1bi)
Episode27 『東郷 -KilleR-』
9月12日(水)14:44/秋笠 藍
「東……郷……?」
「え……?」
「間違えない。絶対そうだ。だって、あの時と、まったく変わってない……」
あのローブの男には見覚えがあった。俺と言音を誘拐した男に間違えない。
でも、どうしてだ……? あいつは、ただの人間じゃ……。
はっきり言って、すごく混乱している。整理がつかなくて、いろいろな引き出しを全部一気にひっくり返したような心地だ。
「……本当に?」
最初は心配そうに俺の顔を覗き込んでいた叶葉だったが、俺の『東郷』の言葉を聞いて、表情は真剣なものに一変した。
俺は狼狽しながらも、こくんとうなずいた。
それを見るやいなや、叶葉は飛び降りそうな勢いで階段を下っていった。
残った二人は、ただそれを見送るばかりだった。
9月12日(水)14:45/我妻 叶葉
あいつが東郷? 本当に?
でも、考えてる暇はない。
目の前にいる奴が、最大の敵だと信じて——
「——あれ?」
いない。確かに階段を下りたはずだ。それに、ここは一階。 そこまで目を離していたわけでもないから、いないなんておかしい……。
『ねっ。捕まえられないでしょ?』
「っ!?」
頭に響いてくる声。それは神のものだった。
『だって、あいつはボクが創った、ボクの傀儡、ボクの一部だからね』
普通は捕まえられないよ。と笑う神。
『それじゃあ、せいぜいボクらの手のひらで踊ってよ。君がもしボクのもとへ来れたら、まあ、殺させてあげてもいいけど』
それ以降、もう声が聞こえてくることはなかった。
……たとえ神のもとへ行けなくても、私は“ゲームマスター”を——東郷を殺す。
必ず、捕まえてやる。
9月12日(水)14:45/秋笠 藍
「……東郷って誰?」
“ゲームマスター”と叶葉がいなくなって、俺たち二人の間には沈黙が訪れていた。
その静寂をやぶったのは、藤貴先輩のそんな問いだった。
「え、あ……」
ぼつりぽつりと、叶葉にしたような、俺と言音という下級生が誘拐されたこと、その犯人が東郷だということを掻い摘んで説明した。
「ふぅん。で、なんで我妻ちゃんがこんなに必死になったの? 関係ないじゃん」
「それは……。そういえば、二人が話してた『侑馬』って……?」
俺にもわからない。それをはぐらかすように、今度は俺からたずねた。
「侑馬は僕の親友で、我妻ちゃんの彼氏。……まあ過去形なんだけど」
「過去形?」
「二年前に死んだ。誰かに殺されたんだ。多分我妻ちゃんはその敵が討ちたくてこの≪ゲーム≫を戦ってるんじゃないのかな?」
寂しそうな表情で、先輩は言った。
「もう諦めたほうがいいのにね。犯人は見つからないし、敵を討ったって侑馬は帰ってこない。それに——」
“現実でも死ぬんなら、そいつといっしょで、人殺しになっちゃうじゃないか……”