ダーク・ファンタジー小説

繰り返す日々 ( No.1 )
日時: 2023/01/15 22:25
名前: ミートスパゲティ (ID: LQINEF0U)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

ピピピピピピ
耳障りな音とともに朝を迎える。
頭上のスマホを取り時間を確認する。
06:40と表示されており、登校時間の7:00にはまだだいぶ時間がある。
「ん…。」
俺はベットから降りて、軽く伸びをする。
リビングに行きテレビを付ける。
「昨晩、暴走族チーム「関東連合かんとうれんごう」により、およそ10人の人が誘拐され…」
また昨日と同じようなニュースが流れている。
いつ頃からだろうか。ある日、急激に暴走族が増え、破壊行動、誘拐などがいつものように行われるようになった。
それがいつしか警察も手が出なくなり、大きな問題となっている。
拓海の両親も同じように暴走族に誘拐された。
なので家には一人で住んでいる。
誘拐された事を警察に言っても別件で忙しいと相手にされずそのまま終いだ。
他にも、親を失った子は何人もいる。
それが普通になってきてしまっているのだ。
お金などは遠くの祖父、祖母などから送られてくるので一応生活はできる。
いつものように戸棚からパンを取り出しそれを食べる。
その後、歯を磨き学校に行くという流れである。
毎日同じようなことを繰り返している。
こんな日々にうんざりしてしまう。
そんなことを考えながらも家を出て学校に向かう。
基本、学校につくまではスマホをいじっているか、ぼーっとしているかのどちらかだ。
ボケーっとしながら学校に向かって歩いていく。
またどこかで喧嘩をしている声が聞こえる。
もう慣れてしまったためなんとも思わない。
「何だよテメェ。」
「へ?」
急に声をかけられる。
「だから何こっち見てんだっってんだよ。」
「はぁ…。」
こういう絡んでくる輩も少なくない。
こういう場合はだいたい無視しておけばいいのだが何ともしつこい。
「おはよー。」
どうしようかと考えていると誰かがそいつに自転車で突っ込んだ。
それはクラスメイトの中嶋宗樹だった。
「テメっ何しやがんだ!」
そうさっきの輩が言う。
宗樹に轢かれたようで右足を抑えている。
「何って、そんなところにいるアンタが悪いんでさぁ。」
人を轢いたというのに全く持って悪く思っていない。
「お前ナメてたら…」
「うっせぇんだよ。」
そう輩が何かを言おうとしていたときに宗樹はもう動いていた。
すごい速さで突きを繰り出し相手の溝内を殴る。
「さぁ、行きやしょうよ。」
そう宗樹が手招きしてくる。
ただのサイコパスだと思ったがそれはあえて口に出さない。
「お前そんなことしてよ…。」
「大丈夫ですって。そんなことより早くしねぇと遅刻しちまいますぜ?」
宗樹がそう言い殴り倒した輩のポケットを漁っている。
「遅刻するも何も、お前がそいつを轢かなかったら何もこうならなかったんだよ。」
同じような日々の中でこいつだけはいつも何をするかわからない野郎だとつくづく思う。
「あ、ありやした。」
そう宗樹は財布を手にする。
「おい、お前それはやめとけよ。」
だが宗樹は俺の忠告を聞かずにそれを颯爽と自分のポケットに入れる。
そこらの輩よりも絶対に悪質だ。
「奪い合いの世の中ですぜ?こんなことでもしねぇと生き残れませんよ。」
そう宗樹は上機嫌だ。
「俺はもう行くからな。」
そう宗樹の自転車をパクり、学校に向かう。
「おい、拓海。それ俺の!」
宗樹はそう俺の後を走って追いかけてきた。
「わかってるって。」
そうブレーキをかけ自転車を返そうとする。
「あ、もういいですぜ。」
そう宗樹は俺に追いついてきた。
それも自転車に乗って。
「それって…。」
恐る恐る尋ねる。
「パクってきやした。それも上げやすよ。どうせパクったやつだったし。」
どんな野郎だと思い自転車から降りてその場に止める。
こいつの方が暴走族より問題じゃないのかと思う。
「さて、行きやすよ。」
宗樹はベルを鳴らしながら学校に向かって行った。