ダーク・ファンタジー小説

八苦座の目的 ( No.119 )
日時: 2024/02/19 23:53
名前: ミートスパゲティ (ID: LQINEF0U)

(硬ぇ…。動きにくい…?)
俺は背中と腕に違和感を感じ目を覚ます。
そこは先程まで寝ていた講堂ではなく、暗いコンクリートの部屋だった。
「どこだ…ここ?」
俺は立ち上がろうとするが、上手く立ち上がれない。
それどころか、何故か体に力が入らない。
ぼーっとして頭も回らなかった。
「おぉ。起きたんか。」
俺は聞き慣れない声を耳にする。
「誰だ…?」
姿は見えないがどこからかは声がする。
「ここ、ここだって。」
そう後ろから声がする。
振り向いてみると一人の男が立っていた。
「あんた…見たことあるような…。」
駄目だ。知っているはずなのに頭が回らないせいで何も考えれない。
「そんなことは置いといて。喉乾いてるやろ?」
そう言い俺はコップを手渡される。
「今それしかなくてな。我慢してくれ。」
コップの中を覗いてみると泡立っている。
恐らく炭酸水だろう。
「何も入ってないよな?」
俺はそう男に尋ねる。
「そこまで言うなら先飲んだるわ。」
そういい男はそのコップの中の液体を飲む。
「な?大丈夫やろ?」
そう男は平気な仕草を見せる。
いつもの俺なら断っていたかもしれないが、判断能力が低下していたせいか、俺はそれを受け取り飲み干してしまう。
味に特に異常は無い。
麦のような味がしただけだ。
何かはわからないが毒物は入っていないようだ。
「で、ここどこなんだよ?」
俺は男に聞く。
「八苦座の本拠地。」
男はポケットから煙草を取り出し、俺の前で吸い始める。
(八苦座…。)
いくら頭が回らなくとも、そのくらいは覚えている。
一度俺達と戦った相手だ。
「何で俺を拉致する。」
俺はそう聞く。
「拉致って…そんなつもりは無かったんだけどな。」
男は一度口から白い煙を出し、一息つく。
「目的は?」
俺は早めに会話を終わらせようとする。
何をされるかわかったもんじゃないからな。
「関西連合の滅亡。」
奴は一言。そう言った。
「そんなもんできるわけ…」
「できるんだよ。いいか、良く聞け。これは忠告だ。」
そう言い奴は俺に話し始める。
「今、全国の連合がお前ら関西連合を潰しにかかってる。滅亡も時間の問題だ。」
奴はそう言った。
「そんなことあるわけ…」
俺は再び突然睡魔に襲われる。
「ようやく効き目が出たか。」
そう奴は崩れ落ちる俺を見下しながら言う。
「さっきの液体はアルコールだ。賭けだったが、お前"も"あの人と同じで弱いみたいだな。」
そう奴は俺に向かって言う。
「何を…す…る気だ…!」
俺は意識が朦朧とする中で言葉を絞り出す。
「別に、お前に害は与えない。有効活用させてもらうだけだ。」
そう奴は俺に吐き捨て、部屋を出て行った。
「待…て……!」
そんな俺の声が届くはずもなく、奴はどこかに行ってしまった。