ダーク・ファンタジー小説

暴走 ( No.126 )
日時: 2024/02/25 23:04
名前: ミートスパゲティ (ID: gF4d7gY7)

「クソッ…戦いにくいなぁおい!」
俺は思わずそう叫ぶ。
今現在、八苦座との抗争中の真っ最中だった。
俺達は八苦座の罠にまんまとかかり、動きにくい倉庫の中に誘導されてしまった。
「んぉ!?」
俺は急に後ろから押されて思わず間抜けな声を出してしまう。
「おい!押すなよ!」
「仕方ねぇだろ!敵がそっちに行ったんだから!」
そう隊員同士で言い合いになっている。
(どうなってる!?)
誰かが「敵がこっちに来た」と言っていたが、誰もこちらには逃げて来ていない。
俺は辺りを見渡すと、上の通路に恐らく逃げてきたと思われる奴らを見つけた。
「全員、目潰れとけ!」
そう一人の男が何かを投げつける。
俺は瞬時にそれが何かを理解した。
「閃光弾だ!目を塞げ!」
そう叫んだが時すでに遅し。
間に合わない奴もいれば聞こえていない奴もいるはずだ。
(ここで戦力ダウンはヤベェ!)
ただでさえ押されているのに、ここで戦える人数が減ってしまえば負けは確定するようなものだ。
どうしようかと考えている俺の横を何かが凄い速さで走り抜けていく。
「何だ!?」
俺はそれを確認しようとする。
それは龍心であった。
だが、背中は猫背、腕はだらんと垂れ下がっておりいつもの龍心とはかけ離れている。
「うぉっ!?」
龍心は男が持っている閃光弾をチャカで真上にはじき飛ばす。
その後、上の通路へと続く階段を驚くほどの速さで登っていく。
そして閃光弾をキャッチし、倉庫の外へと思い切り投げ飛ばした。
閃光弾はコンマ1秒の所で爆発し、もう少しで全員の目を潰されていたところだった。
そして、その後全員を通路から蹴り落としチャカで無防備になった背中を撃っていく。
(何かおかしい…。)
いつもの龍心ならそこまでしないはずだ。
やったとしても蹴り落とすくらいだろう。
追い打ちをかけるなんて龍心らしくない。
上の通路の奴らを蹴り落とした龍心はそこから飛び降りすぐさま、別の場所へと移動する。
その時に少し見えた龍心の顔はまるで能面のように無表情だった。
移動している時に、仲間に当たってもお構い無し。
それどころか何人も吹き飛ばしながらどこかに向かっている。
(やっぱりおかしい!)
すると急に方向変換し、ものすごいスピードでこちらに向かってくる。
「綾也!!」
レオはそう俺の名前を呼ぶ。
「わかってる!」
俺はそう返事をし、向かってくる龍心を止めようとした。
だが、その途中で龍心はチャカを抜きこちらに撃ってくる。
「うおっと!」
俺は皮一枚でそれを交わすが危ないところだった。
「どうしたんだよ!」
俺はそう龍心に問いかけるが、返事をする様子はない。
それどころか今度はドスを抜いて俺を刺そうとしてくる。
「やめろ!」
俺はそう言いながら避けるが龍心は手を止めない。
龍心はドスを避けて体勢が悪い俺にチャカを向ける。
(まずい…これは避けれねぇ!)
俺はそう覚悟を決め、腕を顔の前にクロスしておく。
「おらああぁ!」
だが、弾は俺に当たることはない。
宗四郎が龍心を吹き飛ばしたのだ。
「何したんだよ!龍心!綾也だぞ!?」
そう宗四郎は必死に説得しようとする。
だが、龍心は宗四郎にまでドスを向ける。
「無駄だ!今の龍心は龍心じゃない!」
そう遠くから虎徹の声が聞こえる。
「どういうことだよ!?」
俺はそう聞き返す。
「解離性同一性障害だ!いつもの龍心じゃねぇ!」
解離性同一性障害というのはいわゆる多重人格というやつだろう。
「仕方ねぇ!」
俺はそう言い、龍心の首根っこ辺りを手刀で叩く。
「カッ…!」
すると龍心は気絶し動かなくなった。
「ちょっとだけ寝といてくれ。手が空いてるやつ!こいつを外に運び出しといてくれ!」
俺はそう指示を出すとまた戦いに向かった。