ダーク・ファンタジー小説

解離性同一性障害 ( No.139 )
日時: 2024/05/01 23:22
名前: ミートスパゲティ (ID: LQINEF0U)

俺は気が付けば真っ暗な空間にいた。
(またこの夢か…。)
ということはまた症状が出たのだろう。
(まぁ、俺が悪いんだけどな。)
あの時に症状を出したのは龍心自身だった。
起きたら皆に解離性同一性障害のことを説明しないといけない。
(俺の場合は症状が変わってるからな。)
普通、解離性同一性障害の場合、症状が出ていた時の記憶は無い。
だが、龍心の場合は体の主導権がもう一人の自分に握られているだけで記憶はある。
とはいえ、その時に意識があるというだけで今回の様に真っ暗な空間にいるだけなので、自分が今何をしているかは分からない。
言ってしまえば眠っている状態だ。
(また滅茶苦茶にしてるんだろうな。)
一番最近に症状が出たのは2ヶ月前だった。
その時は家にいた筈が、隣の区まで移動していたという事が起きた。
今回はどうなっているのか。
考えるだけでも恐ろしい。
目を凝らしてみると人影が見える。
その人影の正体は俺だ。
もう一人の俺は地面に座って何処かを見つめている。
「なぁ。そろそろ体返せよ。」
俺はそう奴に話しかけるが、奴からは何の返事も返ってこない。
奴は無表情のまま何処かを見つめ続けている。
「何見てんだよ。」
俺はそう奴の視線の先を見ようとする。
すると激しい睡魔に襲われる。
(そろそろか…。)
体の主導権が返ってくるのだろう。
俺はそのまま眠りについた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「――心、龍心、起きろ。」
誰かの声が聞こえる。
恐らく拓海の声だろう。
俺は目を開き、体を起こす。
恐らくここは、関西連合の倉庫ヤサだろう。
「お、起きたのか。」
「あぁ。」
そう言い綾也が近づいてきた。
すると綾也に続き、俺の周りには続々と皆が集まって来る。
「今回本当にすまなかった。これから説明…」
「そのことはもう虎徹から聞いた。何でこの事隠してたんだよ。」
そう宗四郎が俺の話を遮って言う。
「……変に心配をかけられたくなかったから。って言ってもただの言い訳にしかなんねぇよな。」
俺はそう一息つく。
「本当は早く忘れたかったんだ。あんな事。」
「あんな事?」
そう宗樹が頭にはてなマークを浮かべる。
「俺さ、昔殺されかけたんだ。知らねぇおっさんに。裏路地歩いてたら刃物握ったおっさんを見かけて。丁度誰かを殺そうとしてたんだろうな。」
そこまで話し、俺は一度間を開ける。
「そん時に俺に見つかって計画は失敗に終わった。その腹いせに俺の事を殺そうとしたんだと思う。そん時に初めて本当に殺されると思った。俺は生きる為に近くにあった鉄パイプでおっさんの顔面をぶっ叩いた。おっさんが呻いてるうちに俺は逃げた。そん時のトラウマで俺は解離性同一性障害になっちまった。」
俺が話し終えると少しの沈黙が流れる。
「そんな事が…。すまん…。」
そう淳平が呟く。
「気にすんな。もう昔の事だ。そんな事より取り敢えず、すまなかった。」
俺はそう立ち上がり頭を深く下げる。
「いや、その事はもういい。だからこれからは隠し事はすんな。」
そうレオは俺に優しく言う。
「わかった。」
俺はそう返事をした。
「ならこの話はこれで終わりだ。いつまでも過去の事思い出しても何も進まねぇ。俺達は平和な世を創る為に前に進むだけだ。違うか?」
そう遥輝が言う。
「遥輝の言う通りだ。『八咫烏』とも同盟を結んだ。俺達も早く勢力拡げてくぞ! 」
そうレオがそう言う。
そう。こんな所で止まっている場合では無いのだ。
俺の様な思いをする人が一人でも減るように。
俺達は暴走族を殲滅しなくてはならない。
「気合い入れてくぞ!」
「おぉ!!」
耳が痛くなる程の俺達の大声は倉庫の中に木霊した。