ダーク・ファンタジー小説
- 模擬刀 ( No.141 )
- 日時: 2024/05/15 23:56
- 名前: ミートスパゲティ (ID: LQINEF0U)
「模擬刀が欲しい?」
「あぁ。」
俺が話を終えた後、そうすぐに龍心が聞いてきた。
「模擬刀なら何本かはあるが…。お前使えんのか?」
俺はそう尋ねる。
ドスなら兎も角、模擬刀ともなると扱いがかなり難しくなる。
模擬刀を扱える奴はそうはいないだろう。
「一応、10種類程は免許皆伝を受けた。」
「免許皆伝!?」
俺は思わず声に出す。
剣道をあまり知らない俺でも免許皆伝の凄さくらいはわかる。
確か、奥義を全て伝授された剣士のみが受けれた筈だ。
しかもそれを10種類程。
それもこの若さで。
「てかお前免許皆伝受けてるなら自分のがあるんじゃねぇのか?」
俺はそう龍心に聞く。
「まぁいいじゃねぇか。」
そう適当にはぐらかされてしまった。
「まぁいい。武器庫から好きなの選んで持って来い。」
俺はそう言い武器庫の鍵を渡す。
「ありがとう。」
そう言うと龍心は武器庫の中へ入って行った。
(ヤバいな。あいつ…。)
俺はそう思わず頭を抱える。
(いや、待てよ。龍心が嘘を付いてるって可能性も十分ある。)
そうその可能性も十分あるのだ。
そもそも免許皆伝を10種類も受けたなんて、話がぶっ飛び過ぎてる。
そんなことを考えている内に龍心は一本の模擬刀を持って武器庫から出てきた。
「これ貰っていいか?」
そう龍心は武器庫から持って来た一本の模擬刀を俺に見せる。
「いいが…。お前本当に模擬刀使えんのか?」
俺はもう一度確認する。
「だから使えるって。」
龍心はそう言い自分の右側に模擬刀を差す。
普通、刀は自分が左利きであろうと自分の右側に差す筈だ。
そもそも龍心は右利きな筈だ。
俺の中で龍心への疑いが深まる。
「なら何か技見せてくれよ。」
俺はそう龍心に言う。
「いいけど…。何かぶっ壊していい物ねぇか?」
「ぶっ壊していい物…。こんなんはどうだ?」
俺はそう龍心に言われたので何故か倉庫に転がっていた丸太のような物を見せる。
「それを何かで固定しててくれねぇか?」
そう言われたので、俺はコンクリートブロック2つを外から持ってきて丸太を挟む。
「これでいいか?」
俺がそう聞くと、龍心は頷く。
「で、何の技見せてくれるんだ?」
俺がそう聞くと、龍心はしばらく考えるような素振りを見せる。
「『新陰流』の抜刀術とかでいいか?」
そう聞かれたので俺は咄嗟に頷いてしまった。
まぁいい。
これで龍心が嘘をついているか知る事ができる。
「久しぶりだからな…。」
そう龍心は自信無さげな事を言う。
龍心は模擬刀の柄の部分に手を添える。
次の瞬間だった。
龍心が目にも止まらぬ速さで模擬刀を抜き、丸太を斬りつける。
模擬刀で斬られた丸太は見事、綺麗に真っ二つに斬られてしまった。
「マジか…。」
ある程度斬れるとは言え、ここまで斬れるとは思っていなかった。
下手したら人間を殺せるレベルだろう。
「な?使えたろ?」
そう龍心は模擬刀を鞘に直す。
「疑ってすまなかったな。模擬刀は持って行っていいぞ。」
「よっしゃ!」
龍心は両手でガッツポーズをして喜んでいる。
こうして俺は、龍心の恐ろしさに気づいたのだった。