ダーク・ファンタジー小説
- 模擬刀 ( No.141 )
- 日時: 2025/10/18 23:28
- 名前: ミートスパゲティ (ID: xrNhe4A.)
「模擬刀が欲しい?」
「あぁ。」
俺が話を終えた後、そうすぐに龍心が聞いてきた。
「模擬刀なら何本かはあるが…。お前使えんのか?」
俺はそう尋ねる。
ドスなら兎も角、模擬刀ともなると扱いがかなり難しくなる。
模擬刀を扱える奴はそうはいないだろう。
「一応、爺に教えてもらった。」
「爺って…。」
まずまず龍心の爺が刀を扱えるのかを知らないので何とも言えない。
「一応、免許皆伝はは受けた。」
俺が疑っているのに気がついたのか、龍心はそう言う。
「免許皆伝!?」
剣道をあまり知らない俺でも免許皆伝の凄さくらいはわかる。
確か、奥義を全て伝授された剣士のみが受けれた筈だ。
この若さでは異例だろう。
「てか、お前免許皆伝受けてるなら自分のがあるんじゃねぇのか?」
俺はそう龍心に聞く。
「いろいろあってな。」
そう適当にはぐらかされてしまった。
「まぁいい。武器庫から好きなの選んで持って来い。」
気にはなるが、別に深掘りする理由は無いので、そう言い武器庫の鍵を渡す。
「ありがとう。」
そう言うと龍心は武器庫の中へ入って行った。
(とは言え、あいつやべぇな…。)
俺はそう思わず頭を抱える。
どこの中学生が免許皆伝を受けれるというのだろうか。
(いや、待てよ。あいつが嘘を付いてるって可能性も十分ある。)
そう、その可能性も十分あるのだ。
そもそも中学生が免許皆伝なんて、話がぶっ飛び過ぎてる。
そんなことを考えている内に、龍心は一本の模擬刀を持って武器庫から出てきた。
「これ貰っていいか?」
そう龍心は武器庫から持って来た一本の模擬刀を俺に見せる。
特にこれといった特徴はなく、The・模擬刀という感じの物だ。
「いいが…。お前本当に模擬刀使えんのか?」
俺はそう探りを入れる。
「だから使えるって。」
龍心はそう言い自分の右側に模擬刀を差す。
普通、刀は自分が左利きであろうと自分の右側に差す筈だ。
そもそも龍心は右利きな筈だ。
俺の中で龍心への疑いが深まる。
「折角だ、見せてくれよ。」
俺はそう龍心に言う。
「別にいいけど…。疑ってんのか?」
そう龍心が聞いてくる。
「いや、そういう訳じゃなくて普通に。見てみてぇんだよ。」
俺は何とか躱す。
龍心も自分が疑われていると気がついたらいい気はしないだろう。
「そっか。てか、何か壊していい物ねぇか?」
「壊していい物…。こんなんはどうだ?」
俺はそう龍心に言われたので何故か倉庫に転がっていた丸太のような物を見せる。
「それ何かで固定しててくれねぇか?」
そう言われたので、俺はコンクリートブロック2つを外から持ってきて丸太を挟む。
「これでいいか?」
俺がそう聞くと、龍心は頷く。
「抜刀術とかでいいか?」
そう聞かれたので俺は咄嗟に頷いてしまった。
まぁいい。
これで龍心が嘘をついているか知る事ができる。
それに、プロの抜刀術なら俺も見たことがある。
たまにショート動画に流れてくるのだ。
「久しぶりだからな…。」
保険をかけているのか、龍心は自信無さげな事を言う。
そして模擬刀の柄の部分に手を添える。
次の瞬間だった。
龍心が目にも止まらぬ速さで模擬刀を抜き、丸太を斬りつける。
模擬刀は丸太に食い込み、半分以上まで進んでいた。
「マジか…。」
ある程度斬れるとは言え、ここまで斬れるとは思っていなかった。
下手したら人間を殺せるレベルだろう。
「やっぱちょっと鈍ってるか。」
そう言い、龍心は模擬刀を鞘に直す。
これで鈍っているなら、全力ならどうなるのか。
考えるだけで恐ろしい。
「模擬刀は持って行っていいぞ…。」
「助かる。ありがとう。」
龍心はそう言い、刀を撫でる。
こうして俺は、龍心の恐ろしさに気づいたのだった。
