ダーク・ファンタジー小説
- 初めての客 ( No.68 )
- 日時: 2023/09/05 16:50
- 名前: ミートスパゲティ (ID: LQINEF0U)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「ふぅわあぁ…」
俺は「宗樹のお悩み相談室!」と書かれた机の椅子に座りながら大きなあくびにをした。
「なかなか来ないもんなんですねぇい…。」
今淳平と宗四郎の二人は買い出しに行っている。
まぁ宗四郎はそのままフラフラしてどこかにいくだろう。
そのため、ほとんどここには帰ってこない。
「ちょいと寝ますか。」
そう俺は机にうつ伏せになり目を閉じる。
「…の…。」
そう声が聞こえたような気がする。
目を開け前を見てみるとまだ幼い娘が立っていた。
恐らく小3程度だろう。
まぁ、このくらいの歳のこの悩みなど限られている。
恋愛相談か宿題を手伝ってほしいなどだろう。
だが、その娘の相談は一風変わっていた。
「さて、どんな悩みだい?」
そう俺は尋ねる。
「お兄ちゃんを助けてほしいの!」
そうその娘は大声で言う。
俺は想像の斜め上の相談を言われた一瞬戸惑うが、その娘の目は本物だった。
「お兄ちゃんって?」
俺は冷静に聞いてみる。
「6年生の菊下颯太。いじめられてるの。」
菊下颯太というのは宗樹の同学年だった。
あまり関わりは深くないがいじめられているような様子はなかった。
(バレないようにやってるんでしょうねぇ。)
だから先生も何も言わないし誰も目撃者がいない理由がわかる。
普通の奴なら自分の評価が下がるのを恐れて見つけたとしても見て見ぬふりをするだろう。
「こっちは評価なんか気にしてませんからねぇ。」
そう独り言を呟く。
「ところでそのいじめられてる奴らってわかるんですかぃ?」
そこから探さないと行けないとなるとかなり時間がかかる。
「その人たちなら知ってる!」
そうその娘は答えた。
そこまで知っているなら自分でもできそうな気がするが。
思わずそう思う。
「じゃあ俺はそいつ等をしばくだけですねぇ。」
初めの依頼にしては簡単だ。
これならすぐに終わらせれる。
「それと今日はもう遅いんで帰りましょう。」
そう俺はその娘を家に帰そうとする。
遅いのもあるが、本当はできるからこんな幼い娘に殴り合うところなど見せたくなかったからだ。
「はい…。」
そうその娘は渋々といった感じで帰っていった。
俺はそれを最後まで見守った後娘からもらった写真をもう一度見る。
その写真に写っていたのはクラスでも数少ない真面目な巡だった。
こんな奴が本当に…。
そんな事を考えているうちにある重要な事に気づく。
「やべ、どこにいるのかわからねぇ…」
うっかり聞き忘れていた。
「結局時間がかかりますねぇ…。」
探そうと思い校舎に入る。
(ん?)
俺は思わずそこを2度見する。
誰もいないはずのクラスの教室に電気がついているのが見えたのだ。
(もしかしてあそこに…)
バレないうちに早く行こうと急いで校舎の中に入り、上の階へと続く階段を駆け上る。
電気のついていたクラスは4階の教室の6年のクラスだった。
3階の踊り場まで来ると誰かがいる声がする。
俺は更に駆け上がりその声がする教室の扉を蹴破る。
「誰だ!」
そう一人の男が叫ぶ。
そう言われてもこちらは一言も声を発さない。
(なるほど…複数人でリンチってわけか…)
胸クソ悪いことをする。
その複数人の男を見渡す。
そこには巡の姿もあった。
巡の下には丸まってうめいている颯太の姿があった。
「てめぇ、そいつを離せ…」
「お兄ちゃん!」
俺がそう言おうとした時後ろから甲高い声がする。
あの娘だった。
「帰ってなかったのか!?」
俺は動揺を隠しきれない。
「そいつ等も捕まえろ!」
そう巡が他のやつに指図する。
俺一人ならいいのだが娘を守りながら戦うのは少しキツイ。
まずは俺の方に来た奴らを殴り飛ばし娘を守る。
そう思っていたので構えていたが奴らはとんでもない行動に出る。
娘を二人がかりで捕らえようとした。
「てめぇ…!」
どこまでも胸クソ悪いことをすると思う。
(この距離からは間に合わねぇ!)
俺は咄嗟に落ちていた鉛筆を投げ一人の男の気を向ける。
「なんだ!」
簡単にその男は乗ってくれた。
その声に反応してもう一人もこちらに気を向ける。
「オラァ!」
俺は体を丸めそのままタックルしそいつ等を吹き飛ばす。
「うごぉ!」
吹き飛ばされた二人は壁にぶつかりあえなく倒れた。
「や、やべぇ…」
そう巡はビビり散らかしている。
「いじめた代償、払うんだな。」
そう俺はいい握りしめた拳を巡の顔面に向けて放つ。
しっかりと手応えを感じ巡はそのまま後ろ向きに倒れた。
「大丈夫ですかい?」
そう俺は颯太に言う。
「あ、ありがとう…」
颯太は弱々しくそう言った。
「お兄ちゃん!!!」
娘は勢いよく颯太に抱きついた。
「ごめんな…心配かけて…。」
とても傷つけられていたのだろう。
涙がそれを表していた。
「あー…お代の件ですが…。」
流石にこの娘に族に入れなどは言えない。
「か、代わりに僕が受けます!」
そう颯太は言う。
「それなら私も!」
娘も颯太と同じように言った。
「わ、わかりました…。」
俺はその気迫に負け簡単に許可を出してしまう。
そう俺が言ったのを聞き兄弟は嬉しそうに顔を見合わせる。
こうして心強い(?)仲間が二人も増えたのだった。