ダーク・ファンタジー小説

新たな事件 ( No.8 )
日時: 2023/02/15 23:05
名前: ミートスパゲティ (ID: so77plvG)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

「じゃあな。」
淳平の見舞いを終え皆と別れて家へ向かう。
たんこぶができただけで大したことはないらしい。
だが、まだ引っかかるものがあった。
ーー俺はお前に勝つーー
あの日以来、ずっと引っかかっている言葉だ。
涼のことだからもう一度華恋を襲うということも大いにありえる。
今回も涼の仕業なのだろうか。
もしもそうならば淳平には悪いことをしたと思う。
だが、今日淳平のことを襲った人間は他校の人間だった。
そのため、涼が指示しているという可能性は低い。
個人的に恨みがあったのか、それとも誰かに指示されているのか。
そんなことを考えていると家の前についていた。
ポケットから鍵を取り出し、鍵穴に突き刺してそのままドアノブを回す。
「ガチャ」と音がして鍵が開いた。
靴を脱ぎ、そのままキッチンに向かう。
なにか食べられるものはないか冷蔵庫を漁ってみる。
運良く、食べかけの市販の弁当が残っていた。
割り箸を割り、食べようとする。
「ピコン」
今から一口目だというのにスマホの着信音がなる。
(なんだよ…。)
大切な連絡かもしれないのでしぶしぶメールを開く。
「今から公園来れるか?」
そう、龍心からメールが来ていた。
「はぁ…。」とため息をつき、急いで弁当を口に流し込む。
「いやだ」とは言えないので仕方なく公園に行くことにした。
ポケットにスマホと鍵だけを入れて公園に向かって走りだす。
何のことだろうと思いながら走り続けた。
公園に着いたとき龍心はもうとっくの前から来ていたようだ。
「話ってなんだよ。」
眠たいのでなるべく早めに終わらせたい。
龍心が口を開き何かを言おうとする。
「荒が襲われた。」
「!?」
荒というのは同級生でよく一緒にいるうちの一人だ。
「今どうなってんだ?」
「淳平と同じ有様だ。」
「ッ…!」
ということは病院にいるのだろう。
「こんな偶然、あるもんなんかなぁ?」
龍心がそう言った。
確かに、襲われたのは淳平と荒、二人共よく一緒にいる奴らだ。
偶然にしてもあまりにもおかしい。
少しでも思い当たるフシがないか考えてみる。
ーー俺はお前に勝つーー
やはり真っ先に思い浮かんだのはあの言葉だった。
「思い当たるフシ、あんだろ?」
龍心が俺の心の中を見透かしたように言う。
今黙っていたとしてもいずれは言うことになるのだ。
「涼の言葉、覚えてるか?」
龍心は覚えてるのか、そもそも聞いていたのかすらもわからない。
「あー…あれね。」
龍心は少しの間考え込んでから言った。
「それでも…。」
龍心が何かを考え出す。
「フッ…!」
誰かの呼吸の音が聞こえたので、急いでそちらを見る。
するとそこには、何者かが龍心の後ろに立っていた。
そいつは鉄の棒を握りしめていて、その棒を振り上げ今にも振り下ろしそうになっていた。
「龍心!後ろ!」
「?」
振り向いた頃にはもう遅かった。
鉄の棒が龍心の頭スレスレまで来ている。
俺は思わず目を瞑る。龍心の頭に鉄の棒が当たった。そう思ったときだった。
バンッ
だが、聞こえたのは頭を殴ったような「ゴン」という音ではなく、誰が地面に倒れたような音だった。
急いで龍心の方を振り向いてみる。
後ろには新たな人影があった。
「こんなとことで。何してるんですかぃ?」
「宗樹!!」
この癖のある喋り方。やはりそこには宗樹が立っていた。
「何でここに?」
確かに、龍心が殴られそうになった瞬間に駆けつけたというのは考えにくい。
例えそうでなくてもものすごい偶然だ。
「理由はこいつでさぁ。」
そう言い宗樹は倒れたままの男を指さした。
よく見てみると背は龍心たちと同じくらいで変わった服を着ている。
「この服…。」
龍心も釘付けになってそれを見つめる。
「どうしたんだ?」
確かに珍しい服を着ているがそこまで釘付けになるだろうか。
「この前のやつもこんな服着てなかったっけ?」
龍心がそう言う。
「ビンゴ!」
宗樹はそう言い嬉しそうに手を叩いた。
「ってことは同一人物?」
「ではないみたいだ。」
背の高さも顔立ちも全然違った。ならば何なのだろう?
「これ、なんて読むんですかぃ?」
宗樹がそう困った様子で言っている。
見ていたのはそいつの背中部分だった。
ー堀川軍ー
そう大きく金文字で縫われている。
「なんだろうな?」
龍心はそう答えた。
(ふああぁぁ…。)
何だか急に眠たくなってきた。
「まぁ今日はもう遅いし、明日考えようぜ?」
龍心は俺が眠たそうにしていることに気がついたようでそう言った。
「じゃあまた明日な。」
一刻も早く寝たい俺は急いで帰ることにした。