ダーク・ファンタジー小説

後輩の頼み 後編 ( No.91 )
日時: 2023/09/28 19:00
名前: ミートスパゲティ (ID: idHahGWU)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

「ここか…。」
俺達は一気に高橋がいる四階まで駆け上がった。
例の教室の前で俺達は少し息を整えながら懐からチャカを取り出す。
今回の依頼はいいらしい。
後で話し合ってみると言っていた。
話し合うって…。
自分達の腕を折ってきた奴とよくそんな事をしようと思う。
まぁ、俺達は依頼人の言うことを聞いていればいい。
そう考えていると龍心がこちらに合図を出す。
俺は軽く頷き中に入る準備をする。
次の瞬間、龍心はドアを蹴破り教室の中に入り込む。
「悪英雄だ!全員手を上げろ!」
少々警察っぽくなってしまったが仕方がない。
これも依頼のためだ。
「笑わせんなよ!」
そうアホなやつが飛びかかってくる。
「相手の力量くらい見極めろ。」
結局その男は龍心のボコボコにされていた。
流石にちょっと可哀想だが、馬鹿なこいつが悪い。
今の光景を見てから誰もかかってこようとしない。
だが、こちらからすればありがたい。
高橋さえ捕縛できればいいからだ。
「高橋を出せ。」
龍心がそう言う。
すると他の奴らが一斉に一人の男の方を向いた。
なるほどあいつが高橋ってわけか。
「そのままこっちにこい。」
俺はそう言う。
だが行ったら何をされるのかわかっているのか、高橋は出てこようとしない。
「どうした?怖くてこれねぇか?」
そう龍心が煽る。 
「てめぇ…煽りやがって…!」
頭にきたのか高橋はバットを持ちこちらに向かってくる。
奴の狙いは俺達ではなかった。
そう。後ろにいた冬弥と千尋の二人であった。
「させるか!」
俺はそう言いチャカの引き金を引く。
俺の弾は見事高橋の持っていたバットを弾いた。
高橋は急いでバットを取りに行こうと走り出す。
だが、俺がそれを許すわけがない。
バットを握らせないように急いで走り出す。
それとほぼ同時、龍心もスタートを切る。
龍心の狙いもバットかと思えば全く違った。
そのまま龍心は高橋に飛びかかり絞め技をかける。
「龍心!今回の依頼は捕縛で…」
「依頼ではな。これはあくまで俺の行動だ。」
そう龍心はそれを聞く耳も持たず締め続ける。
すると急に話したかと思うと今度は顔を殴る。
「痛え!」
そう高橋は叫ぶ。
その顔は恐怖で引きつっていた。
「いいねぇ、その顔!」
そう言う龍心の顔は笑顔でいっぱいだった。
完全にサイコパスになってるよな。
いや、そんなことを考えている暇ではなかった。
「やめろ!」
これ以上放って置くと本当に殺してしまいそうだ。
俺は全力で止めようとする。 
が、やはり聞く耳を持たない。
「龍心先輩!やめてください!」
「ほんとに死んじゃいます!」
二人も必死に止めようとする。
すると正気を取り戻したのか殴るのをやめた。
「謝れ。」
そう龍心が高橋に言う。
「本当にごめんなさい!」
高橋が龍心に思い切り謝る。
「俺じゃねぇ。二人にだ。」
そう龍心が冬弥と千尋を指さした。
「本当に…ごめん!」
高橋が深々と頭を下げる。
「いいよ。これからはすんなよ。」
「うん。冬弥の言う通り。」
やはりお人好しな二人だ。
高橋はその言葉を聞きワンワン泣いている。
これで良かった。
俺はそう思った。