ダーク・ファンタジー小説

Re: 【々・貴方の為の俺の呟き】 ( No.1 )
日時: 2023/01/28 15:24
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: qbtrVkiA)

 

 ──桜の花弁散っている

 "彼"は誰も居ないはずの桜並木に突然現れると、地に足がついている感覚を噛み締めながらゆっくりと歩く。

 ──桜の花弁が散っている

 空にあるはずの星々は曇天に隠され、不安になるような漆黒を落としている。一つ息を吸うと喉がヒリヒリするような冷たい空気が入ってくる。

 ──桜の花弁が散っている

 綺麗に整えられた桜並木は、静かで不気味で真っ暗であった。しかし、桜の花弁だけは白く輝き、彼を照らして散って行く。

 ──また同じ。また、々じ。

 それは彼の心を潰すのには、十分すぎる言葉だった。しかし、彼は屈せずただ歩く。一歩一歩確実に、無駄だと思っても歩く。
 桜並木の端にやってきて、彼はゆっくりと来た道を振り返った。様々な色が混ざり、灰色に、遠く連なり、霞がかって見えている。

「──俺が必ず叶えてやる」

 この世界には絶対に居ない"世界"に向かって、彼は呟いた。桜はそれを嘲笑うように、先程と同じように、静かに花弁を散らしていた。

 四人の少年少女が切磋琢磨する青春話。それだけならば、どれほど美しかっただろう。



 ──みんなの正義がぶつかる。
 これは、理不尽と理不尽が塗り重ねられるクソッタレたこの世界で、一つの終わりを、最期を、区切りを目指す"人格"のお話。

 貴方の為だけに起こすお話。