ダーク・ファンタジー小説

Re: 【々・貴方の為の俺の呟き】 ( No.14 )
日時: 2023/03/26 18:59
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: LOQQC9rM)


 5

 実用的な魔法について学ぶ〈八大魔法コース〉
 魔法関連の職に就につくなら必須で、大半の生徒が選ぶ。
 精霊について学ぶ〈精霊術師コース〉
 魔物という生物について学ぶ〈召喚術師コース〉
  都市ラゐテラだけに出現する謎の存在、妖怪について学ぶ〈陰陽師コース〉
 魔素について研究する〈魔素研究コース〉
 八大魔法とは違い、魔法の根本を研究する〈魔法研究コース〉
 魔具についての研究をする〈魔具研究コース〉
 特定の種族や個人が持つ〈加護〉について研究する〈加護研究コース〉
 世界ディアペイズの治安を維持する夜刀教の派生団体、夜刀警団への入団に必要な事柄を学び、学院都市の治安維持も担う〈夜刀コース〉
 
 魔法に関する科目が主だが、陰陽師コースと夜刀コースは例外らしい。
 本職と変わらない事をするとか。
 
 俺は八大魔法コースに入ることは決めていて、あと一枠空いている。
 折角入学できたのだから、無理やりにでもこの枠を埋めたい。
 しかし、全て俺の興味をそそらない。

 俺はどのコースを選ぼうかと考えながら、“学院長の授業”よりも“教祖の演説”の方がしっくりくる話を聞いていた。

 選択授業の説明が終わると、次は見学期間についての説明が行われる。
 一定の期間、授業を見学したり体験たりすることが出来るらしい。
 コースを選び悩んでいた俺にはピッタリだった。

「──では、今後とも精進してくれ」
 リンリンリンリン

 学院長がそう言った瞬間、授業終了の鐘が丁度鳴った。あまりにも都合が良すぎて俺は驚く。
 学院長は美しい顔のパーツを微小に動かして笑い、生徒達に手を振りながら去る。
 生徒達は一斉に動き出し、大講義室が騒がしくなった。
 
「ヨウー。選択授業どこ行く?」

 隣に居たルカに問われ、俺は数秒考える仕草をした。
 
「夜刀コース」

 将来のことなどキチンと考えられない。
 "現在の目標"を達成することに精一杯だからだ。
 仮に目標を達成しても、生きているか分からない。
 
 けど、仮に俺が無事に卒業出来たのなら、人を助けたり犯罪を防ぐような治安維持に尽力したい。と思ってしまった。
 夜刀コースにする。今決めた。
 
「夜刀コースかぁ。って事は夜刀師団やつのしだんにも入るの?」

 ルカと俺は荷物をまとめ、大講義室の出口へ向けて歩きながら話す。
 
 師団というのは授業、学年の枠を超えた集まり。簡単に言うと部活動である。
 夜刀師団は夜刀コースの延長の様な物で、やることは大差ない。
 強いて言うなら、師団の方が選択授業よりも楽といった所だろうか。

「嫌、俺は〈司教同好会〉だな」
「司教同好会? 聞いたことないんだけど、師団?」
「去年作られた師団で人数も少ないから『同好会』らしい」

 俺はそう言うと、ルカよりも素早く歩き、追い抜いた。
 大講義室の扉を開ける。
 それを見てルカは焦るように俺を引き止めた。

「ちょ、ちょっと。この後見学でしょ? ヒラギとユウキとも……」
「行きたい所があるんだ。明日、ユウキと一緒に行こう」

 俺はそう言って大講義室の扉を閉め、転移陣の上に乗った。
 足元から黒い煙がゆっくりと出てきて俺を包み込む。ルカの無表情も黒く霞み、俺はその場から消えてしまった。

「面倒くさ……」

 ルカが何か呟くが、内容は聞き取れなかった。
 まあ、いいだろう。
 俺は気にせず、目的の旧校舎へ向かった。

 【終】