ダーク・ファンタジー小説
- Re: 転移後即日死した後輩君を魔女先輩は甦らせたい!? ( No.11 )
- 日時: 2023/04/02 14:35
- 名前: htk (ID: OHC2KpRN)
1章〜〜第1幕、5話ーー副題(未定)
やや大振りに刻まれた野菜と、米に卵と塩を塗しただけのものだったがーー。
それはそれで、自然に囲まれた環境で食べたチャーハンはまた一味違った。
たとえ、少し水量の調整で米がべっちょりとしていてもーー。
味は別に悪くないのだから、十分に及第点をあげられるだろう。
食べ終えた沙梨亜ちゃんは後輩君の手料理の品評を始めている。
「、、良いですか?天ヶ嶺君
チャーハンをパラパラにしようとして所々ムラがあるのは分かりますね?」
「はい、前垣師匠!
どうしたら良かったでしょうか?」
「、、答えは簡単
、、卵、ですよ?」
「まさか、、卵に何か秘密が?」
「、、そうです
刻んだ具材を入れ、米と共に炒めた最後に天ヶ嶺君は溶き卵を投入しましたね?」
「はい、及ばずながら、、
おれにそれ以外の選択肢はありませんでした
どうしたら良かったのでしょうか?」
「、、最初が肝心です
一番初めに卵と暖かいご飯を混ぜ、具材に軽く火を通した後に丸ごと投入するんです」
「え、、?それだけで?」
「、、です
それだけでパラパラの美味しいチャーハンが作れますよ?
今度試してみて下さい」
「なるほど、今後の参考にさせて頂きます」
師弟に扮した二人の講義は終わった。
普段どんな会話をしているのだろうーー?
と気にならないでも無かったが、どうやら私が気にするような問題は無かったらしい。
何がーー?
と訊かれると困ってしまうが男女の間ともなれば、もしもの場合はあるのだ。
沙梨亜ちゃんがテツヲに入れ込んでいるのは分かるが、ここは念の為ーーヒラト君の傾向をよく知る為にも聞き漏らすわけにはいかないだろうーー?
決して仲良さそうで嫉妬したとか、そういう話では無い。
単純な興味本位だ。
もっとも、私の話術でヒラト君との会話を弾ませるには長期に及ぶ研鑽が必要になりそうなのだがーー。
そんな事を考えていると、お代わりを平らげたテツヲが口を開いた。
「でェ?
ノンビリダベってんのもイイが、結局ここは異世界なのかそうじゃねェのか、どっちなんだァ?真島ァ」
「物証が少な過ぎるわね……。
これぐらいの森なら元居た世界にもあったでしょうし、仮にあの箒がプラーナの濃い場所でしか感応しないのだとしても……元居た世界でプラーナの濃い場所が無かったとも限らないのだわ?」
先程考えていた事をそのまま伝えた。
例えば、都会のプラーナは薄く、大自然の中でのプラーナは濃いという場合も考えられるかもしれない。
似たような事を思い浮かべていたらしく、沙梨亜ちゃんが言う。
「、、都会と田舎、です?
ですが、そもそもプラーナ自体私はまだよく分かってません」
「はい!前垣さんに同じく」
後輩君も手を挙げ、大きく頷いた。
私も断片的な事しか思い出せないが、説明が必要だろう。
「……いい?プラーナっていうのは確か、前世で誰かから聞いた気がするのだけれども……?
プラーナは物体……というよりも、いいえ……。
……これは存在自体がそこに在ろうとする意思、何かが存在する確率とでも言おうものかしらね……?
……ごめんなさい
私もそれ以上はさっぱり思い出せないのだわ……?」
「でも先輩はそれで、いやさっき、、
おれにアレしてなんか凄い力が湧いてきて、それで彼処から落下しなくて済んだんですよね?」
薄っすらと赤くなる後輩君を見て、変に緊張してしまう。
「そ……そうよ?アレはほら……!?
……急場の判断で他に対処のしようが無かっただけで、決してやましい気持ちとかそんなつもりは……」
「語るに落ちたり、だなァ、、?」
別にさして興味も無さそうにテツヲが言った。
あの時は仕方無くーーというと語弊があり、私だって勿論、後輩君との繋がりを得られるならそれも吝かでは無いのだがーー。
じゃなくて、本来なら一つの肉体内において循環するプラーナを半ば強制的に、通力による干渉で後輩君に活力を与えたのだ。
それだけならば問題無い。
だが、物事にはどんな場合であっても見えない側面が存在する。
つまり、他者との通力の循環には様々な危険性や副作用を伴う場合があるらしく、そうした中では他者の精神への影響を伴うものもあるらしくてーー。
私が色々と言い訳を考えていると、眼帯ヤンキーはどうでも良さげに言う。
「アア、気にすんなァ?
ただの冗談だァ、、」
「、、っち!?
性格悪いですよ!?テツ先輩!」
舌打ちした沙梨亜ちゃんが諌めた。
この極悪ヤンキーーー!?
と思ったのを抑え、頬が赤らむのを感じながらも続ける。
「ともかくね……!?プラーナは使い方次第で非常に危険を伴うものなのだから、あまり人に向かって使うのはお薦め出来ないのだわ……!」
「それを使ってまで、リン先輩はおれを助けてくれたんですね、、
、、ありがとうございます」
不意打ちだ。
別にお礼を言われたくてやったわけでも無かったから、むしろある意味、自身の感情という名の欲求を優先した結果ーーなのだから、それを言われると違和感を感じてしまう。
私が後輩君にどう反応するべきかと考えていると、テツヲはやや物騒な笑みを浮かべる。
「っつう事はなァ?
オレらも修行したら人体にある秘孔を突いたり、ギャメバメ波撃ったり出来るっつうんだなァ!?
最高じゃねェかァ!」
「、、ふっ
ギャメバメ波は撃てないと思いますよ?テツ先輩?
夢見てやがりますね、ふっ、、」
「んだとォ!?沙梨亜ァてめェ、、
えェ、、?撃てねェの?マジで?」
私の呆れ顔に気付いたらしく、テツヲは若干残念そうに言う。
そんな事訊かれても、私も知らない。
「さあ……?
……通力解放で外気のプラーナに干渉出来れば似たような事は可能かもしれないのだけれども、ねぇ?
私も知らないのだわ……?」
理論上はおそらく、可能だろう。
しかし先程、この大魔女たる私をおちょくってくれた極悪ヤンキーにわざわざ教えてあげる道理は無いのだ。
それにもし、元居た世界の人気マンガを模したギャメバメ波を撃つなら、そこに至るまでに避けては通れない段階がある。
先は長い。
幾らこの極悪ヤンキーでも、容易には辿り着けない境地だろう。
私は夫婦漫才でもする趣きのテツヲと沙梨亜ちゃんを意識の外に置き、ふとーーヒラト君と目線が合う。
「ま……これからよね、これから!」
「そうですね
おれも頑張りますよ!」
自然と口から出た言葉に、彼はいつものように応じた。
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