ダーク・ファンタジー小説
- Re: 転移後即日死した後輩君を魔女先輩は甦らせたい!? ( No.14 )
- 日時: 2023/04/02 14:55
- 名前: htk (ID: OHC2KpRN)
1章〜〜第1幕、閑話その1ーー闇堕ちしたヒョコちゃんの後日談
世間は大騒ぎだった。
事件に一枚どころか二枚も三枚も関与していた私ーー悪の秘密結社の三下こと、ダークネスファイターのヒョコちゃんは口止めされてるんだけどね〜?
高校生四人が一夜にして行方不明ーー。
失踪した彼らと親しくしていた女子生徒のTさん(鳥居さん)として私の証言は幾度となく報道で繰り返された。
沈んだ面持ちでーー。
『心配ですね〜、、穴の中に落ちてるかもしれないし早く捜索して欲しいですね〜
はあ〜、みんな大丈夫かな〜、、』
モザイクで顔は隠されていながらも、レンズ越しでも分かる物憂げな美少女の溜め息に、夜の討論番組は紛糾した。
他国のミサイル攻撃が誤って墜落しただの、無計画な地下インフラの整備が悲劇を招いただの、果てはヨソの国の工作員が秘密裏に侵略を開始しただのとーー事態は予断を許さないみたいに報道されててね〜?
うへへ〜、なんかトンデモナイことになっとりますなーー!
さて、そんな渦中に一番近いところに居たと思われる私は、報道陣とのイタチごっこだった。
いや〜、参るよね〜?
公表出来る情報が少な過ぎて、記者の人達は既に5日経った後でもしつこく付き纏ってくる。
嫌だな〜ーー。
私、これから早くも受講を再開した学校に行くんですけど〜?
自宅を出てすぐのところで目を血走らせた記者さん達に囲まれ、掻き分けるのが大変だった。
何処から情報漏れたのかな〜ーー?
もしかして昔中学生の頃シメた他中生徒達がこぞって今頃になって〜ーーとかじゃないよね〜?
うへ〜、嫌だな〜。
今は闇堕ちすれども愛の戦士としての矜持は喪っていないヒョコちゃんとしては、世の中ラブ&ピースなんだけどね〜ーー?
フラッシュとか、興奮のあまり飛んでくる唾とか我慢してると、記者さん達を抜けたとこで高級そうなリムジンが止まった。
中の後部座席に乗ってる人が、窓からこっちに手招きしてくる。
怪しい人かな〜ーー?
「鳥居さーん!鳥居ひよ子さーん!こっちこっち!」
何処となくポンコツそうなお姉さんが呼んでるね〜?
手招きされた私はこの際だからしょうがないと思って、高級車に乗り込んだ。
なるほど〜、中はこうなってるんだね〜?
横付きのソファみたいな座席に座った私に、ポンコツお姉さんが話し掛けてくる。
「あっはっはっは、大変ですねー?
ボスから送り迎えするよう言われて飛んできたんですよー!」
「あの人ね〜、いや、、苦手だな〜」
基本、何事も義務とか責任とか規範に縛られたくないヒョコちゃんとしては、相容れないタイプの人なんですけどね〜。
黒服を着た彼女の言うボス、とゆーのはみんなを異世界へ送り出したあの日ーー。
いきなり朝から家の玄関を叩いてきたオジサンだった。
とうとうヤーさんに目付けられたーー!?
と思った私は、そこで大立ち回りを演じようとして、脆くも失敗した。
うへへ〜ーー。
テツヲ以外には負けない自信があったんだけど、世の中には居るんだね〜、強いのが!
突然自宅の玄関先で肘を極められた私は動くに動けず、耳元に生気を感じない声を聞いたんだっけーー。
『あー、うぉっほん……あー、そーだなー?
キミが特殊な……チカラというべきものかね?
……それを獲得し、乱用している事は我々……さる国家機密特務機関としても把握しているつもりだよ
……全てじゃないがね?
我々としても高校生5人を泳がせ、暫くは様子を見て然るべき時に接触を図るつもりだったのだがね……?事情が変わってしまったのはキミも理解している筈だ……。
……あー、どうだね?話を聞く気があるのなら、この手を離してやるのも吝かでは無いのだがね?
八波羅高校2年生、鳥居ひよ子君……!』
気持ち悪いったら無いよね〜、本当にもう。
見知らぬオジサンに個人情報を把握されてるこっちとしては、耳に息を吹き掛けられるのも嫌だったからーー仕方無く頷いた。
玄関の先には黒服が数人ーー。
それぞれこの目元の隈が深いオジサンと同程度の実力と仮定すれば、私に逃走するチャンスは回って来ないね〜、たぶんーー。
ヤキが回ったかな〜、と思いながら、解放された私は一方的な話を聞いた。
生気の無いオジサンこと、ボス曰くーー。
さる国家機密の、特務機関所属の研究員の卵として私を迎え入れる用意があるとのこと。
まあ〜、そこに漕ぎ付けるまでにこっちも舌の渇きそうな交渉に臨んだんだけどね〜?
そしてマスコミが、私が失踪した高校生4人と親しかった事を何処からか嗅ぎ付けてきたのが事件から2日目でーー今日は5日目だった。
表向きは落盤事故ーーと一旦は報道されたものの、すぐおかしいと一部の評論家達が指摘し、更には高解像度の衛星写真が決め手だったとゆー話だね〜。
綺麗にくり抜かれたような円形の断面は、いったい何処の天上王が下した裁きーー?
とか某掲示板で未だにレスが冷めやらないらしく、まさに現代のミステリーだった。
さしずめーー全ての秘密を知るヒョコちゃんから、情報が漏れ出るのを恐れた組織のお姉さんが言う。
「いやー、隠蔽工作班が上手く機能しなくてですねー?
初動が遅れた痛恨のミス
あそうそう、あたしも工作班の一員だったんですけどねー?
何故かこっちに回されたんですよー?あっはっはっは
ひよ子さんと歳近いからかなー?」
いや〜、私としてはたぶんその情報が漏れたのもポンコツお姉さんのせいだと邪推してるんですけどね〜?
こっちが適当に頷いてるだけでペラペラと喋る彼女は、秘密を共有するのに不向きな人間ですなーー。
「おー?噂の日記ですねー?
見せて下さい!」
つい最近は癖みたいに日記を確認してたら、油断した。
返信が来ていた事に安堵し、私の試みの一つである〈ヒョコちゃんとのラブリーアツアツ通信記〉が何処の馬の骨とも分からない女に強奪されてしまったのはーー痛恨のミスだ。
咄嗟に取り返そうと手を伸ばし、激昂する。
「何すんのかな〜っ!?
まだ私も読んでないヤツだからっ、ソレっ!?」
「えー、いーじゃないですかー?
おおー、こっちのページがひよ子さん
お友達からはヒョコちゃんって呼ばれてるんですかねー?
愛の戦士、さすらいのヒョコさん!
いーですねー!あたしもこーゆーの好きなんですよー!
きっとヒョコさんとの相性最高だと思うんですよねー!良かったなー!
仲良くなれそーで!」
「おいてめっ!?その手離さないとシバくぞ!?マジでてめ〜っ!?」
手を伸ばしたけど、僅差で届かない。
仕方無いーー。
このポンコツもとい、もうポン子でいいかな〜?
アッケラカンとさりげなく煽ってくる態度に、少しムカついた。
ポン子をとっちめる為に私も少し、本気出さなきゃね〜?
広い高級車内でヒョコちゃんの超絶奥儀、千手掌乱舞が加速するーー!
次々と繰り出される、破邪の手ーー。
道行く女子生徒の数々の豊かな膨らみを屠ってきた技だけど、この女ーー素早い!?
無駄な動きを制した体捌きが僅差で私の掌を触れさせず、薄い紙のように躱していくーー!
「おおー、やりますねー!さすがあたしの初めての後輩!
ボスに勧誘されただけありますねー!」
「何なのっ、、かな〜っ!?この女!
ムカつく、、!」
私の横へスルスルと足を伸ばしてきて、それを捕まえようとした。
フェイントなのは分かってたつもりだーー。
でも、そっちへ手を伸ばした逆側を突かれて前のめりになると、気付けば立ち位置が入れ替わっていた。
おかしいーー!?
ポンコツ女の癖して、まさか此処までやるとはね〜?
これはーーヒョコちゃん第二形態を解放するしか無さそうだった。
次話、>>15