ダーク・ファンタジー小説
- Re: 転移後即日死した後輩君を魔女先輩は甦らせたい!? ( No.15 )
- 日時: 2023/04/02 14:58
- 名前: htk (ID: OHC2KpRN)
1章〜〜第1幕、閑話その2ーー闇堕ちしたヒョコちゃんの後日談
「プラーナって知ってたりするのかな〜?もしかして〜?」
「報告書にありましたねー?
あたしら特務機関の更に暗部に位置する鬼道部にもそれらしき秘伝が伝わってますよー?
気、マナ、魔力、オーラ、エーテル
呼び名は様々なんですけどねー?
んんー?」
こちらの雰囲気が変わった事を察してか、ポンコツ女は表情を引き締めた。
プラーナーーとゆーのはそもそも、私の大親友たる真島リンだけの専売特許では無いんだよね〜?これがーー!
彼女程に習熟していなくても、ここ1年と半ばを実験に費やす過程で私も朧気ながら身に付けちゃったんだな〜、実は。
自身の内側に遍く満ちるプラーナーー。
それを丁寧に流す技法を、リンは通力循環と呼んでたんだよね〜。
うっへっへっへ〜ーー!
陰でコソコソと試行錯誤してた成果を見せる時ですな!
掌をニギニギとさせる構えの私ーー。
指先から頭の芯、身体の軸を通って足裏まで体温が上がるのを感じた。
これぞ、通力循環ーー!
私の気配の変化を察したポンコツ女が言う。
「本気、みたいですねー?
いーですよ!
先輩の沽券を維持する為にも、ここは受けて立ってやりましょー!
さー来い!」
理由が俗っぽい。
けれど彼女からもーーリン程では無いにしろ、プラーナが詰まってるような感覚を覚える。
この女、デキるーー!
私は初めて遠慮呵責無く力を試せる相手の登場に歓喜した。
「後悔しないで、、
、、よねっ!」
短い距離を詰める。
目を丸くするポンコツ女ーー。
彼女が引き手で握る日記が咄嗟に後ろに回されたのを無視し、狙いは足元だ。
超加速からの、スライディングーー!
走行距離が短過ぎて速さが足りなかったけど、意表を突くことには成功した。
私の爪先が引っ掛かりたたらを踏みそうになりながらも、身体を宙へ跳躍させるポンコツ女ーー。
背中を車内の天井に張り付け、両手足が大の字ーー。
驚異的な背筋力だけど、胴がガラ空きだ。
ニンマリと、私は笑みを浮かべる。
低い姿勢から片手を跳ね上げ、逆立ちでもするように爪先を伸ばす。
「っくー!?」
どうにか天井スレスレを蹴り出したポン子は、呻きを上げつつソファ座席に転がった。
そこへ追尾するのは、天井に着けられた私の片足だ。
狭い地の利を活かした作戦は狙い通りーー!
彼女を跨ぐように上乗りになった私は、勝利の笑みを浮かべる。
「さあ〜、返して欲しいな〜?
痛い目に遭いたくなければね〜?」
いつでも拳を振り下ろせるよう身構えた。
既に私の両足でがっつりホールドされてる彼女は、観念したように言う。
「んんー、分かりましたよー
容赦無いですねー?」
意外と聞き分けが良い。
冷や汗を浮かべながら、素直に日記を手渡してきた。
愛の大勝利だね〜!?いえ〜い!
何人たりとも私とリンの仲を裂けないのが証明されましたなーー!
日記を受け取った私は、彼女の上から退く。
このポンコツ女は通力循環中の私の動きにも付いてこれてはいたからーーたぶん、似たような事は出来てたんだね〜?何となくーー?
それでも私に勝利のゴングが鳴ったのは、彼女の片手が日記で常に塞がっていたこととーーあと、単純に実戦経験の差だ。
ポンコツ女も何かしらの武道らしい動きは見せてたんだけど、テツヲと一緒に各校で暴れ回った経験のある私相手ではね〜?
ご愁傷様ーー!
起き上がった彼女はとやかく言わず、素直に称賛してくる。
「強いですねー!ヒョコさん
いやー、先輩の威信が掛かってたんですけどねー?
参っちゃうなー、もー?」
「その呼び方禁止!
あと、これからは私の舎弟になって貰っちゃおうかな〜?うっへっへっへ!」
「嫌な笑い方ですねー?止して下さいよー!?」
うっへっへっへ〜?
勝者の特権を行使すべく手をニギニギとさせたんだけど〜ーー?
「君、あんまし肉付き良くないね〜?
守備範囲から外れますな!」
「ええー?ヒョコさん、もしかしてそっち系の人なんですかー?
ううー、大変な人の舎弟になってしまった」
己の身の不幸を嘆きでもするように言った。
ポン子は仕方無さそうに服を一枚一枚脱ぎ捨てているーー。
面白いから暫くそのままにしておこうね〜?
うっへっへ〜、こういうシーンを不意にしちゃう程ヒョコちゃんも空気読めない娘じゃないんだな〜、これが!
ポン子は放置放置ーー!
私は早速無事戻ってきた〈ヒョコちゃんとのラブリーアツアツ通信記〉をさっと捲る。
最初のページは以前私が書いた内容で、リンの返信はこうだった。
『ひよ子、元気してる?
真島リンこと、大魔女からの有り難いお言葉を賜るのだわ……!
でもその前に幾つか確認しとくべき事案が出来たみたいなの……。
この日記もその内の一つね……。
ところでそっちは今、私達が転移してから何日経ったのかしら……?』
ここまで読んで、私はピンときた。
なるほど、数ある可能性の一つとしてその問題については私も考えてたんだけど、問題はどの程度の齟齬があるのかだよね〜?
うう〜んーー?
あんまり誤差が無いと良いな〜?
想定してた懸念の一つを思い浮かべながらも、私は続きを読む。
『ところでそっちは今、私達が転移してから何日経ったのかしら……?
実はあなたの日記の最初のページを読んだのが、今朝だったのよね……。
私達が転移した後、そっちでは何日かゴタゴタしてたって書いてあったじゃない……?
でも、私がひよ子の文を読んでからこれを書くまで、たぶん半日も経ってないのだわ……?
まず、本当に此処が異世界なのかどうか確かめようって話になったのだけれども、思えば何かの勘違いでも無ければ時間の流れが違う事は確かなのよね、たぶん……?
だから、こっちは予定通り、異世界に転移出来たと考えても良いのかもしれないのだわ?
……それで案の定、当初の懸念通り、人里らしいものは近くに見当たらなそうなのよね?
何処も彼処も、森、森、森……森なのだわ!
最悪のケースは呼吸すら出来ない環境で即死だったのだけれども、砂漠とか氷山とか、火山活動の活発な火口付近とか……考えられる中では随分とマシな方ね!
食料になりそうな小動物とかは現状見当たらないけど、後輩君が木の実とか果物見付けてくれたのだわ……!
彼、意外と頼りになるのよ……!
あ、そうそう……。
この日記もそうなのだけれど、他にもモノクルとか確かめてみたのよね
何かのフラスコとか得体の知れないキャンドルとかはまだよく分からないのだけれども、そうそう……!箒よ!箒!
あれのお陰で、最初の転移地点から降りられたのだわ……!
さすが私の友人……いいえ、親友ね!助かったわ!
それであのモノクルも使ってみたのだけれども、何やらよく分からない数字が浮かんでくるのよね……。
たぶん、物体の持つ生命力……と今書いてて気が付いたのだけれど、浮かんでくる数値は存在が持つプラーナの保有量を表しているのではないのかしら?
我ながら、正解な気がするわ……。
ま、そんなこんなでこっちは順調よ!
〈ヒョコティティル製品〉……と呼ぶ事にするけれど、出来ればその目録を早急に詳しく伝えて欲しいわね
あ、後輩君が今火起こしてるわ……!
テツヲと沙梨亜ちゃんはまだ探索から戻って来ないけれど、あの極悪ヤンキーが居るなら万に一つも無いわよね……!
それじゃ、こっちも返信よろしく……!首を長くして待っているのだわ!
by 終期末の魔女リン』
大親友からの返信を読み終え、私はページを閉じた。
後ろから、胡乱な顔が覗いてくる。
「本当に異世界行けちゃうんですねー?
それでヒョコさん
あたし、いつまでこーしてるんですかー?」
ポンコツ女ならぬ痴女が何か言ってるけど、車内だからって半裸になる女とはお近付きになりたくないよね〜?
しっしっーー!
こっちを見ないで欲しいな〜?
私がぞんざいに手を動かすと、ポンコツ痴女は怒りを露わにする。
「ああー!酷いですよー!
ムキーですからねー!」
「瘦せぎすは好みじゃないですな!
しっしっ!ヒョコちゃんの美肌に触れるな!あっち行け〜!」
本日の第二ラウンドが始まった。
次話、>>16