ダーク・ファンタジー小説

Re: 転移後即日死した後輩君を魔女先輩は甦らせたい!? ( No.19 )
日時: 2023/04/02 15:30
名前: htk (ID: OHC2KpRN)

1章〜〜第2幕、4話ーー副題(未定)



「、、彼処です
、、洞窟があります」
「……みたいね」
 沙梨亜ちゃんの言に、私は頷いた。
 暗くて分かりにくいが、あの蜘蛛人間のマーキングらしいベトベトを掻い潜り、進んで来た先には岩肌があった。
 洞窟があるのは、その岩肌沿いだ。
 さして高くもない岩壁の横穴から明かりが漏れているのを見て、私達は此処に辿り着いたのだ。
 懐中電灯を仕舞いながら、沙梨亜ちゃんが言う。
「、、中
明かりが点いてますね、、?
見てきましょうか?」
「いんやァ、ダメだァ!
オレが行く!」
 何故か、先陣争いが始まった。
 あの明かりが漏れる洞窟の先に、後輩君が連れ去られたのだろうかーー?
 先程単独行動を禁じた筈のテツヲは、一歩も譲る気は無いらしい。
 後輩女子の前に立ち塞がり、仁王立ちしていた。
 それを見た沙梨亜ちゃんは、やや残念そうに言う。
「、、この手は使いたくありませんが
、、わたしとリン先輩は全軍突入に賭けますから、票数2対1でテツ先輩の要求は却下です!」
「何だァ?
ちッ、、なら仕方ねェ」
 私が沙梨亜ちゃんの言に頷いたのを見て、テツヲは言った。
 彼としては自分一人で後輩君を救出するつもりだったようだが、相手は得体の知れないあの蜘蛛人間なのだ。
 先程は追い詰められた私だったが、今は手元に長杖を握っているしーー沙梨亜ちゃんもその脇に、短刀を二本差している。
 むしろこの場合、素手のテツヲの方が客観的に見れば戦力として劣ると見る向きもあるかもしれないがーー。
 それでも、彼の恵まれた身体能力と強さを何となくなりに知っている身としては、このヤンキーが私達の中で最も戦闘に向いているのは疑いようがない。
 後輩女子に却下され、不承々々身を翻したテツヲが言う。
「ココでモタついても始まらねェ、、
、、行くぞォ!?沙梨亜、真島ァ!」
 呼ばれた沙梨亜ちゃんと私は頷き、気勢を吐く眼帯ヤンキーの後に続いた。



 洞窟の中は思ったよりも広い。
 人二人が並んで歩ける程度の幅があり、天井には角灯が取り提げられている。
 何を燃料に灯りを灯しているのかは分からないが、管のようなものが洞窟の壁中に埋まっているらしくて、そこから光源が供給されているようだった。
 だから歩くのにそれ程困りもせず、私達3人は洞窟の奥へと順調に進んだ。
 中に入る前ーー外の木々の枝先には所々蜘蛛の巣が張り巡らされていたのだが、中はそうでも無いらしい。
 先頭を歩くテツヲが言う。
「相手は蜘蛛人間、つったなァ?真島ァ、、」
「ええ……そうね
通力循環で身体能力が向上した私でも、軽々と追い詰められるぐらいには運動能力が高いのだわ……?」
「あんましアテになんねェなァ?ソレ、、」
 言われてしまった。
 確かに平素の私は常人以下の運動能力しか持ち合わせていない。
 だが、だからといったって通力循環で体内のプラーナを循環させればーーきっと、オリンピックに出場出来るぐらいの身体能力にはなるのだ。
 それをアテにならないと言った眼帯ヤンキーが、突然ーー膝をつく。
「おゥ?何だァ、、?」
 見ればテツヲの足元の地面が大きく沈み、どうにもそこは伸縮しているように思えた。
 例えるなら、トランポリンだろうかーー?
 普通の地面からゴムのように沈む場所に踏み込んでしまったらしい。
 それを確かめようと爪先を伸ばした沙梨亜ちゃんが言う。
「、、蜘蛛の巣
、、ですね、地中に棲んでる種類の」
「だなァ、、?確か、ジグモっつったかァ?」
 そう言ったテツヲは足を引っこ抜き、その足を元居た地面へと戻した。
 ジグモーーというのを私は名前までは知らなかったが、確かにそういう種類が居たのは覚えている。
 見ると此処から先の洞窟内の通路は、どうにもこの筒型の巣で出来ているらしい。
 よく見ると土や埃が粘着したような雰囲気で、これまでの地面と比べると全体的に軽そうなのだ。
 それを腰に差した短刀で突き刺した沙梨亜ちゃんが言う。
「、、巣の真下
、、多分、空洞ですね?
どーします?」
「つまり……此処から先、より広い空間の中に筒状の巣が張り巡らされていると考えて良さそうなのね……?」
 広い空間内を張り巡らされた筒状の巣が、四方八方へ伸びている様子を私は思い浮かべた。
 つまり、私達は今ーーこちら側の地面との区別は付けにくいが、筒型の巣を前にしているのだと考えられる。
 そこの地面に擬した巣を突き破れば、おそらくそれなりに広い空間に出るのだろう。
 高さがそれ程あるとは思えないが、このまま筒状巣の中を進むのは危険なのだろうかーー?
「そうね……。
この巣の中を進んでも足が取られて、そこを襲撃されるかもしれないのだわ?」
「アア、動きにきィのは勘弁してェなァ、、?
よっしゃ、飛び降りるかァ!」
 テツヲが膝を屈伸させながら言った。
 沙梨亜ちゃんはやや逡巡したものの、筒状巣に刃先を当てる。
「、、なら
、、切りますよ?テツ先輩」
「よし、やれェ!」
 言われ、沙梨亜ちゃんは二本の短刀を交互にさせた。
 あまりにも鮮やかな、複数回の斬撃ーー。
 筒状巣に網目が刻まれたかと思うと、千切れた巣が向こう側でダラリと力無く項垂れた。
 地面に擬していた巣のあったところへ視線を落とすと、そこはーー。
「広いわね……かなり」
 予想通り、広大な空間が広がっていた。
 此処から先の本来の地面は急斜になっていて、無数の筒状巣があちこちで張り巡らされているのが分かる。
 時々、その筒型の巣内をもぞもぞと動いているのは、蜘蛛なのだろうかーー?
「一匹じゃねェなァ?
其処彼処の巣、全部かァ、、?
蜘蛛の巣一つにつき、一匹ってトコだなァ?」
「、、ちっ
、、そーだとすると、形勢良くないですよ?
全部で30、いえ、、4、50はあるように見えやがりますね、、」
 つまりーー見えている範囲でも、あの蜘蛛人間かそれに類する生き物が4、50匹は居ると考えられるのだ。
 けれどもーー私はだからといって引き退るわけにはいかない。
 一度逃げ出して、二度までもーーとあっては、これまでの想いが嘘になる。
「私は行くのだわ……!
後輩君を奪われたまま帰るなんて以ての外……!言語道断よ!?」
「同感だァ!真島ァ、、!
後輩一人護れねェで、先輩風吹かしてられるかァ!?」
 気勢を吐いたテツヲは、後輩女子に振る。
「テメェはどうすんだァ?沙梨亜ァ、、」
「、、ちっ
、、行かねーとは一言も言ってねーですよ!?
勘違いしないで下さい!」
 言った沙梨亜ちゃんの表情を見て、眼帯ヤンキーは笑った。
 私達三人は頷き合い、急斜面を跳び降りる。
 是が非でも、後輩君を救けるのだ。
 私は先を行く二人に続き、広い空間内へと着地した。



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