ダーク・ファンタジー小説
- Re: 転移後即日死した後輩君を魔女先輩は甦らせたい!? ( No.25 )
- 日時: 2023/04/02 15:48
- 名前: htk (ID: OHC2KpRN)
1章〜〜第2幕、終話ーー副題(未定)
「心臓は動いてるみてェだなァ、、?」
後輩君の胸に耳を当て、眼帯ヤンキーが言った。
洞窟の奥から物音が聴こえなくなって、少し経った後だ。
戻って来たテツヲは沙梨亜ちゃんから上着を受け取ったかと思うと、開口一番に横たわる彼の身を案じた。
ただーー見た目だけならそれを言った本人の方が、余程重症にも見える。
ボロボロだ。
あちこち引き裂かれ、武闘服のズボンは膝や脛のあたりが裂けてしまっている。
今は上着を纏って見えない上半身にも裂傷が其処彼処に刻まれていたように見えたのだが、事ここに至ってーー平気そうだった。
だが、殺しても死ななそうなテツヲの事は、今はどうでもいいのだ。
私は眼帯ヤンキーが言った言葉を訊き返す。
「今、何て……?」
「アアン?」
「し、心臓がどうって……?」
「アア、耳にこのプラーナっつうの?
それを集中させっとよく聴こえやがるんだよなァ、、
、、いやァ、その光の球みてェの無くなってから流石のオレも見えねェし、躱せねェしでケッコウ貰っちまったんだがなァ?
なんか身体ン調子良くなってから色々出来るコトに気付いてよォ?
あのアラクネもどきには逃げられちまったがなァ、、?」
つまりーーテツヲが勝ったらしいのは分かったが、肝心の彼の心臓はーー。
それを聞いた私は、後輩君の胸に耳を当てる。
その後ろで、沙梨亜ちゃんがテツヲとの会話を引き継いだ。
「、、逃げられた
、、ですか?」
「おゥ?まァな、、
、、デケェ繭みてェのが出来たかと思ったら、ソン中に閉じ篭もっちまいやがってなァ?
何しても開かねェし、壊せねェしでイイ加減放っぽといてきたトコだァ!」
「、、っち!?
、、早く此処を出ますよ!?」
二人が騒ぐせいで、よく聴こえない。
プラーナを耳に集中ーー?
テツヲが言った技法は私も試した事は無かったが、今それに取り組んでいるところだった。
こちらのそんな様子を窺ったらしい沙梨亜ちゃんが、テツヲに言う。
「、、それで、テツ先輩!?
、、天ヶ嶺君の心臓は動いてやがるんですよね!?ちゃんと!」
「アア!間違いねェ!
、、心音の間隔はオメェらと比べるとエラく長ェが、間違い無く動いてやがるぜ!」
それを聞いた私は、後輩君の胸から耳を離した。
つまりーー私の拙い蘇生措置はどれが功を奏したのかは分からないが、ひとまずは成功したのだ。
この眼帯ヤンキーの発言を信用するなら、と但し書きは付くのだがーー。
ともかく、それを聞いた沙梨亜ちゃんは脱出を促す。
「、、急ぎますよ!?
、、繭に篭った敵がどーなるかなんて、十中八九強化フラグに決まってます!」
「おゥ!オメェもそう思うかァ!?
いやァ、次はあの固ェ繭に大穴開けてやらねェとなァ、、!」
「、、分かってるなら、、!
、、早く天ヶ嶺君を担いで下さい!?テツ先輩!
リン先輩も、それで文句ねーですよね!?」
物凄い剣幕だ。
確かに、あの蜘蛛人間がテツヲに借りた漫画の強敵みたいにパワーアップしたらーー。
そう思うと、はっきり言って今の私では勝てる自信が無い。
有無を言わさない雰囲気の沙梨亜ちゃんに私は頷き、後輩君がテツヲに担がれるのを見護る。
昏睡状態から目覚める様子は無いが、その顔色は明らかにーー蒼白とは違うように見えた。
土気色でも無く、死後硬直が始まっているようにも見えない。
その様子にホッとするも、まだーー油断は出来ないとも感じている。
だが今はーーこの不愉快で悍ましい洞窟を出る時なのだろう。
私達は担がれた後輩君を伴い、蜘蛛人間の巣窟から脱出した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『ーー/
私達は旅を続ける。
目を覚まさない彼を伴って、この元居た世界とは異なる地を巡って、果てどのない旅を。
時折、思うのだ。
彼が目覚める時、その時がもしくるのなら、私はどんな顔を向ければ良いのだろう、と。
長き旅路の空の果てにて、時折ーーそれを考えるのだ。
by 終期末の魔女リン
/ーー』
次話、>>26