ダーク・ファンタジー小説

Re: 命懸けの人狼ゲーム 第3話 ( No.4 )
日時: 2023/03/29 20:43
名前: Riaゆく (ID: MRwb6zkQ)

〈朝になりました。議論を開始してください〉
【美味しいパンが焼けました】
アナウンスとともに迎えた二日目の朝。
俺たちは全員、村の広場のような場所へ集まっていた。
全員が広場に揃った後、一人の男が話し出した。
「とりあえず全員自己紹介をしよう」
彼の名前は確か…二宮虎太郎と言ったか。
二宮は体格に恵まれており運動面に関しては学校でもトップクラスとのこと。
おまけに人柄もよく面倒見も良いため、周りからよく愛されるらしい。
それから、一人一人順番に自己紹介をしていった。
詳細は割愛するが、自己紹介をしていく中で俺はいくつか違和感を覚えた点があった。
まず一つ目、一部の人間の話していた内容が、タブレットに記載されていた内容と異なっている場合があったことだ。
細かい内容だったのであまり気には止めていないし、そもそもタブレット側の情報が古い可能性だって十分あり得るので深く考えないことにした。
そして二つ目だが、参加者の中には10代の人間もいることだ。
別にダメとは言わないが、このゲームに参加するのはリスクが伴う。
むしろ死ぬ確率の方が高いと言えるだろう。
それなのになぜ彼らは参加したのだろうか。
このゲームは目的を達成したいと言う強い願いがなければ参加できないらしい。
勿論俺もそうだ。
だが、10歳半ばの子供にそんな強い願いがあるというのだろうか。
このゲームが終わるまでにそのことについても解き明かしてみたいものだ。
自己紹介が終わり、二宮が再度話しだした。
「それじゃあ占い師や霊能者などの役職を持っている人は出よう」
その発言に対して、返答したのは5名。
「僕は占い師です」
まず一人目は相馬翔太郎。
東京都のとある学習塾で講師をしている。
人柄も良く周囲の人間からも好かれやすいらしい。
「結果は?」
俺がそう問うと、彼は
「佐倉さんは人狼ではありませんでした」
そう答えた。
「待ってください!」
「なんだ」
突然とある女が叫んだ。
「本物の占い師は私です。結果は松尾さんが白でした!」
占い師の対抗。
まああるとは思っていたが、9割9分相馬の方が偽物だろう。
理由は簡単で、佐倉は人狼であるからだ。
人狼へピンポイントに白出ししているあたり、相馬は狂信者、もしくはたまたま人狼に白を出した狂人か妖狐陣営の誰かなのだろう。
可能性としては前者の方が高いと思うが、この世に絶対なんてものはない。
後者の可能性だって十分にあり得るのだ。
どちらにせよ相馬は味方だと信じて行動していく必要があるな。
説明していなかったが、本物の占い師は岡田美奈。
外見はとてもよく、学校でもよく告白されていたらしい。
先ほどの様子からも見て取れる通り、内面の方はかなり不安定な性格のようだ。
そして岡田が白を出した男は松尾晴樹。
彼は彼の父に似て料理がかなり上手く、父の経営しているレストランを継ぐために日々特訓しているそうだ。
彼は母親を早くに亡くし、小学校の頃はいじめられていたが、その時の友人の一言がきっかけでそのいじめは無くなったらしい。
「判断材料が足りない、とりあえず保留にしておこう」
「それじゃあ次、霊能者の人は?」
「霊能者は私よ」
そう答えたのは議論が始まって以来ずっと沈黙を貫き通し、ずっと何かを考えていた少女。
藤原楓だ。
彼女は格闘技を習っていて、周りからは尊敬されている一方で恐れられているらしい。
一度電車に乗っている際に痴漢被害にあったらしいが、自慢の格闘術で犯人を捕まえたそうだ。
「ぼ、僕も霊能者、です」
彼の名前は竹田流衣。
学校ではクラスの隅っこで読書をしているようなタイプで、友達も少なく、成績も悪かったそうだ。
彼の夢は友達を20人作ることらしい。
「私も霊能者です!」
佐倉は昨日の夜話した通り、霊能者を騙ってきた。
狂人と騙る役職が被らないか少々心配ではあったが、なんとかなったようだ。
〈議論時間終了間近です〉
そんなアナウンスが響き渡った。
「どうしますか?」
「今日はとりあえず占い師と霊能者、占い師に白を出された人を除いた13人の中からグレランにしよう」
〈議論時間終了です、投票時間に入ります〉
俺がそう話したのと同時に、二日目の議論時間は終了した。
正直言うと誰が白い、誰が黒いと言った見当は全くと言っていいほどつかなかったため、今日あまり喋っていなかった人に投票するとしよう。
ちなみにだが、投票も襲撃の時と同じようにタブレットを使って行う。
誰が誰に投票したかは分かるようになっているので、誰が狂人で誰が妖狐なのかを判別する時にも使える。
〈投票時間終了です〉
後藤→桐生 天堂→藤堂
黒川→後藤 佐倉→桐生
近藤→中田 水無瀬→近藤
岡田→桐生 竹田→松尾
相馬→上原 山根→桐生
松尾→山根 上原→桐生
中田→二宮 藤原→佐倉
鹿野→天堂 二宮→桐生
藤堂→中田 篠崎→桐生
桐生→山根 大沢→松尾
〈投票の結果、7票で桐生友輝さんが処刑されます〉
〈桐生さん、遺言をどうぞ〉
「なんで僕ばっかりこんな目に会わなきゃならないんだ、それでも僕は村人陣営が勝ってくれることを信じているよ」
鮮血が四散する。
肉片があたりに飛び散り転がっていく。
俺はそんな光景から目を背けるため、自室へと戻っていった。
桐生の遺言を真面目に聞いていた人は何人いただろうか。
おそらく、ほとんどの人がろくに話を聞いていなかっただろう。
これがこのゲームの恐ろしい点とも言える。
今はまだ大丈夫だったとしても、生きていれば最終日に近づくにつれて他人の命が軽くなっていく。
自分が生き残るために精一杯になって、他人を蹴落として…
俺はこれが嫌いだ。
俺は、このゲームが大嫌いだ。