ダーク・ファンタジー小説

Re: 命懸けの人狼ゲーム 第4話 ( No.5 )
日時: 2023/03/29 20:43
名前: Riaゆく (ID: MRwb6zkQ)

〈二日目の夜になりました。能力の使用を開始してください〉
もうすでに耳に馴染みつつあるその音声と共に、身体の制限が解け始める。
俺の耳はまるで獣のようなものへと変貌し、腕力は普段の3倍にも及ぶ程までに強化された。
これが人狼の能力である。
夜になればまさしく最強と言えるほどの力を手にする代わりに、昼間にはその力が使用できない。
その気になれば人を食らうこともできるらしいが、気が引けるので俺はそれをするつもりはない。
そんなことはさておき、俺の仲間達と会話し始める。

あなた
誰を襲撃する?

俺はそう尋ねたが、その問いに対する答えはしばらく返って来なかった。

あなた
二人ともどうした?
何も意見を出さないなら俺が勝手に決めるぞ

俺は何か二人の逆鱗に触れるようなことでもしてしまったのだろうか。
そんなことしたつもりはないんだがな。
俺がそのようなことを考えていると、佐倉からひとつの返信が返ってきた。

佐倉あかり
どうしてあなたはそう平然としていられるんですか

なぜ平然としていられるのか。
そんなもの、簡単なことだ。

あなた
桐生は村人陣営の皆に自分の運命を託した。それだったら、桐生のためにも真っ向から村人たちと勝負をしなければあいつの為にもならないだろ?

俺は特別桐生と接点があったわけではないが、それでも礼儀を欠かすわけにはいかない。
それが勝負の世界だ。

佐倉あかり
そう…ですか

近藤勇斗
それもそうだな!悪かったな、後藤

あなた
別にいいさ。それにお前たちが心に深い傷を負ったのも、襲撃をしたくないと思っているのもわかってるよ

近藤勇斗
全てお見通しってわけか

あなた
襲撃は俺が行く。襲撃対象も、特に意見がないなら俺が決める。

近藤勇斗
僕はそれで構わない

あなた
佐倉は?

佐倉あかり
私も大丈夫です

あなた
了解

そこで会話は終了した。
はっきり言うと、俺も怖い。
いくらゲームとはいえ、人をこの手で殺めるのは初めてだ。
でも、だからこそこれになれなければならない。
俺はこのゲームで負けるわけにはいかない。
襲撃ごときでためらっていては勝てるものを勝てなくなってしまう。
だから俺は、躊躇を全て捨てる。
その話はさておき、誰を襲撃するか…。
昨日会議を仕切っていた二宮辺りを狙ってみるか。
そうして俺はタブレット端末に情報を入力していく。
《襲撃対象は二宮虎太郎でよろしいですか?》
もちろん。
《了承しました》
気づけば俺の右手にはナイフが握られていた。
おそらくこれで戦えということなのだろう。
そうして俺は、家を出る。
勝利をつかむために、その第一歩を今踏み出す。

足音が、聞こえる。
心臓の鼓動がだんだんと早くなっていくのがわかる。
窓から外を覗くと、外にはまさしく化け物がいた。
その化け物は、俺の家のドアを音も立てずに開けた。
俺は二宮虎太郎、役職はハンターだ。
銃を構える。
しかし、化け物は一向に姿を現さない。
どこへ行った?
その、瞬間だった。
背後から強い衝撃を食らう。
おそらく、何かしらの刃物で斬られたのだろう。
背中に激痛が走る、痛みでろくに声も出せない。
かろうじて奴の顔を捉えることができたが、その顔が誰のものかまではわからなかった。
その容姿は完全に化け物と化しており、人間としての面影は一切なかった。
少しして、化け物は去っていった。
俺はもう助からないだろう。
だったらこの銃で誰かを道連れにするべきだ…。
そう考えた俺は家から飛び出す。
騙りの人数的にも、潜伏している人狼がいるのは明らかだ。
だったら、昨日の会議で目立ってなかった人を打ち抜くというのも悪くないのではなかろうか。
俺は、藤堂雅一の家の前に立っていた。
確か彼は多額の富をもつ資産家の息子だったか。
これで彼が村人陣営であったら申し訳ないが、今の俺にそんなことを考えている余裕はない。
俺は彼の家へ潜入する。
やがて俺は、藤堂の真横まで来ていた。
彼は寝ている、今がチャンスだ。
俺の意識も朦朧としているので、本当にチャンスは今しかない。
狙いを定める、奴の頭へ。
緊張で右手はすっかり震えていた。
それを左手で押さえつけ、俺は引き金を引いた。
そして…
夜空に銃声が響き渡った。