ダーク・ファンタジー小説
- 第二話(その1) ( No.10 )
- 日時: 2023/04/21 21:15
- 名前: 味海 (ID: qWWiRdBA)
僕は何をしていたんだろう。
此処は何があったんだろう。
気絶するまで闘技場としてあった、建物がなくなり青空が見えた。
あのおじさんは?
何より、何で僕の左目は治っている?
本当に意味が分からない。
これは僕がやったのか?
いや、そんなわけない、そんなわけ。
しかし、今自分が置かれた状況からはそう推測するしかない。
が、僕にはこんな力はない、はず…
機械?みたいなやつで調べた時は…バリアしかなかったしな。
ビット「え?ここは…何があったの?」
いつの間にかいた後ろにいたビットが僕に尋ねてくる。
僕「…わかりません、気絶してから記憶が…」
ビット「…」
少しビットは悩むと、苦い顔をしながら口を開いた。
ビット「…とりあえず、ルピフォのところへ行こう」
僕「…わかりました」
――――――――――――――――――――
部屋は金ぴかで眩しく、その部屋の真ん中で宝石のようなものでできた椅子に座るその男は、
髭は王様のようで、目つきは鋭く、王と言われても恥じないほどの圧を感じさせた。
ビット「お呼びいたしました、こちらが私の弟子―――――」
??「言わんくて良い!」
ビットが僕を横に立たせ、その王とやらに紹介しようとするが、それは王の一言でかき消された。
??「まったく、何で闘技場が消え去ったのかを説明せぇい!!」
ルピフォは自分の椅子を両手でガンガン鳴らしながらビットに怒鳴る。
それに対し、ビットは困ったような顔で、王に言う。
ビット「いやはや私も何が何だか分からなくてですね…」
??「最後に使っていたのはそのガキとアイツだというのは分かる、だがアイツはこの国でナンバー2と言われる男だぞ!?」
??「なぜそんな男があんなことをしている!?しかも行方不明だというじゃないか!?」
ビット「ルピフォ様落ち着いてください」
ルピフォ「これが落ち着いていられるかぁ!?」
ビット「王様!…落ち着いてください」
そうやって何とか、ルピフォを落ち着かせている時だった。
ドンッ
突然後ろの大きなあのドアが開いた。
そして鎧を着た、十メートルほどありそうな大男が何かを持ち上げながら、ルピフォに近づいて行った。
男「王!…マルクド様が…見つかりました…こちらです…」
大男はルピフォに持っている何かを見せ、
男「マルクド様は…死んでいましたぁぁぁぁ…!!!」
ルピフォ「………………そうか」
ルピフォ「ビット、そのガキ、殺せ」
ビット「!?何でですか!」
ルピフォ「そのガキは解剖する、マルクドを殺したんだ何かに使えるかもしれん。それともなんだ?生きたまま解剖しようっていうのか?別にそれでもいいんだぞ?」
ルピフォは声を荒げ、ビットを威圧する。
ビット「だとしても!」
ルピフォ「うるせぇ!町の英雄を殺したソイツはそのくらいでしか使い道がねぇんだよ!」
そう言い放つ。
ビット「そもそも弟子が殺したかなんてわからないですよね!?」
ルピフォ「ビット、お前は俺の奇術を忘れたのか?」
その言葉に耳がビクンっと反応するビット。
ルピフォ「『全知』、知っていたんだよマルクドがとうにこの世界にいないことなど、そしてそのガキがマルクドを殺していたこともなぁぁぁ!」
ルピフォはそういうと一呼吸置いてもう一度言った。
ルピフォ「……今すぐ、そのガキ、殺せ!」
ビット「…」
ルピフォ「もういい、そのガキを捕らえろぉ!」
その言葉と共にどこからか兵が現れ始める。
まるで雪崩だ。
そしてついには鎧を着た兵で視界が埋まる。
僕はとにかくビットの手を握っていた。
その瞬間僕の体が真上に飛んだ。
僕「!?」
ビットが僕を投げ飛ばしたのだ。
そしてビットは僕に言う、前に進めと
前に、前に。
ルピフォのぎょっとした顔を落ちながら見る。
あぁこの人は強い人だな。
僕なんかじゃ敵わない。
でも、それでも僕は
僕「……僕は、死なない生きるよ」
ルピフォ「あ!?何だと!?」
僕は両手を床と平行に伸ばす。
そして、
「……能力、バリアlevel2、球体」
第二話(その1) 生と所為
次回へ続く…
- 第二話(その2) ( No.11 )
- 日時: 2023/04/26 21:40
- 名前: 味海 (ID: qWWiRdBA)
僕「……能力、バリアlevel2、球体」
何故か僕はその言葉を叫んでいた。
頭の中にあった言葉でも、知っている言葉でもない。
その言葉と共に僕とビットの周りをバリアで包み込む。
ビット「おお!やったじゃん!」
ビットは嬉々として言う。
ルピフォ「ハッハッ!引っ掛かったな!全部読めてんだよ!お前らはもうそこから出れないぞ!」
僕「さぁ?それはどうかな?」
そういって僕は嫌味ったらしく言ってやった。
そして瞬間的にバリアを解除した瞬間、ルピフォが叫ぶ。
ルピフォ「そこから出ようとすることも全部知ってんだよぉ!!」
ルピフォ「兵よ!その周りを囲めぇ!!」
しかし、ルピフォの命令は少し遅いため、その一瞬を使い、ビットが僕を抱き連れて行った。
その際、兵は何とかして僕たちを捕らえようとしたがそれをすべて軽々と回避すると隠し持っていた人参をポケットから取り出し、
ルピフォへと投げつけた。
間一髪でそれを避けるルピフォと大混乱に陥りかける大量の兵。
それを後目にビットは巨大なドアを開け一言。
ビット「じゃあね、皆!」
ルピフォ「リトロォォォォ!!!」
ルピフォの怒りの声を最後に僕はビットに抱えられながら街へと向かった。
そして案の定僕は最初にきた場所で降ろされる。
そしてビットは僕に向き直って、僕をほめた。
ビット「君はすごいよ!あのルピフォと互角に戦うなんて!」
しかし僕は喜べなかった、そりゃそうだ。
僕はおじさんを……マルクドを殺したんだから。
しかもたちが悪いのは僕が全く記憶にないという点。
気が付いたら、殺していたなんてそんなの……
僕「うっ!……」
ビット「!?」
ノブレス人やこの世界と同じじゃないか。
そう思うと吐き気がまた押し寄せてきた。
僕は一体どういう奇術を持っているのだろうか?
バリアだけじゃないのか?
ビット「大丈夫?」
そういって心配そうに僕を見るビットを眺めているうちに吐き気は収まり、その代わりに疑問が浮かび上がってきた。
僕「あの……ルソアさんはどこに行ったんですか?」
何で僕は今までルソアの事を忘れていたのだろう?
しかしビットは目を泳がしながら首を横に振るばかりだった。
僕「?なんですか?どういうことですか?」
そう言ってもビットの動きは変わらなかった。
この動きに何かがあるのだろうか?
死んでいるのなら死んだと伝えればいいだけの事それを言わない時点で何かある。
僕「…死んではないんですか?」
ビット「…うん」
ビットはゆっくりと頷く。
その顔はどこか、悲しそうな雰囲気がした。
僕「では、どこにいるんですか?」
ビットはまた首を横に振るが、聞いてはいけないと目で伝えてきた。
ルソアさんは一体どこに行ったのだろうか?そしてなぜビットはそのことについて教えてはくれないのだろうか?
ビット「…おっと、もう情報が届いたようだね」
ビットはボロボロの家の住人を眺めならそう言う。
住人は槍のようなものを持ち、盾を構え、臨戦態勢を取っていた。
明らかに、敵として僕たちを認識しているようだ。
ビット「昨日の今日でまた逃げるのか…」
そう言ったと同時に、一人の住民が何かを呟く。
住民「あkljlだjぃ」
その瞬間、ビットは目を見開き、血を吐きながら吹っ飛ばされる。
住民「ハハ…!やったぞ!あとは雑魚のあいつだけだぁ!!」
一人一人が希望に満ちた笑顔だった、しかしそれはなんでだろうか。
何故僕たちを殺すことで希望が芽生えるのだろうか。
この世界はやはり腐ってる
何もしてない人までもが死ぬんだもの。
僕には怒りと似て非なる別の感情が宿り始めていた。
そしてまた住民は何かを呟く。
住民「ぁkじゃjsだjぃj」
そう言い終えた時だった。
??「ようぅぅケ?」
僕の前に何かが現れ、周りの動きがゆっくりになっていく。
??「お前が宿主かぁぁケ?」
黒く渦巻いた巨大なナニかが僕を囲うように回る。
黒いナニかは僕の目の前で動きを止めると、手のような何かを作り、差し出す。
そして僕に言う。
??「力を上げるよぉぅぅケ?触ってぇぇケ?」
触れば僕は力が手に入るのだろうか。
住民の奇術はもう使用されている。
つまり今死にたくないのであれば、この手を取るしか僕には助かる方法がない。
しかし、こんな怪しい奴の手を取っていいのだろうか。
黒いナニかは手をさらに差し伸べて言う。
??「はやくぅぅケ?」
ビットはやられ、サリーも死に、ルソアに至ってはどこにいるかも知らない。
僕はこの人たちの役に立てたのだろうか?
いや、一回も立ってない、そう思った僕は黒いナニかに手を伸ばす。
そこで僕の記憶は…途切れなかった。
黒いナニかの手に触れた直後、黒いナニかは僕の手に吸い込まれていく。
そして僕の体に何かがみなぎる。
気が付くと僕は手をまえに出していた。
そして一言
僕「limit解除 奇術 想像」
僕の前にバリアができ、何かが弾ける。
パァン!!
住民「!?…何が起きた!?空気玉が弾けたぞ!?」
そこからは酷く単純だったよ。
何せ、殺すだけだもん。
第二話(その2) 黒いナニか
- 第二話(その3) ( No.12 )
- 日時: 2023/04/29 12:43
- 名前: 味海 (ID: qWWiRdBA)
「これは、何だ?」
思わずそう言ってしまう。
夕焼けに飲み込まれそうな感覚を背中で感じつつ、もう一度目を擦り僕の目に映っているものを確認する。
しかしそれは変わらなかった、目の前に広がる死屍累々を意味もなく見つめなおした。
すべての死体の家族を僕は知ってる、此処に住んでたから。
いったいこれは誰がやったのだろうか。
絶望の狭間で思ったことはソレだった。
辺りを見回してみると一つの死体の山の上に誰かが立っているのを見つける。
そいつはあの子だった、いやあの子ではないあの子だった。
「あ、ビットさん起きたんですね皆殺しておきましたよ?」
ソイツは狂気じみた笑顔と血だらけの手で口元を擦りながらそう言う。
口元に血が付き、ソイツはその血を舌で舐め綺麗にすると相変わらずの笑顔でこちらを見る。
「…君は何があったんだい」
「いや?何もないですが?」
「そんなわけないだろ!」
僕は大きな声でソイツに言う。
あんなにやさしい雰囲気の子が何故。
何故。
僕の体中に苦しみの葛藤が駆け巡り、沸々と怒りがこみ上げる。
「お前は何者なんだ、殺すぞ?」
「はぁ…じゃあいいです、殺りましょう?」
そう言ったかと思うと僕の立っていた地面から物凄い勢いで何かが飛び出す。
何とか僕はそれを避けるが、後ろからまたもや何かが飛んでくる。
「!?」
それは、透明な長方形…つまりルピフォの前で見せたバリアだった。
コイツは僕が眠っている間にそれを何個も出せるように、そして詠唱も、特定の動きなども何もなしで出せるようになっていたのだ。
「ほら!ほら!殺すんだろぉ!!!攻撃してみろよぉぉぉ!!!」
ソイツは僕の周りに大量のバリアを出現させ、目にも止まらぬ速さでそれをぶつけてくる。
一撃でも当たれば死ぬということがひしひしと伝わってくるそのバリアはもはや、ただの凶器でしかなかった。
雨のように降り続けるバリアを搔い潜り、僕は男の子に向かって拳を振り落とす。
しかし落とす瞬間にバリアを張られ、当たらない。
手は痺れ、体に衝撃が集まり体中で跳ね返る。
「っ…!」
「もう、終わりなの?」
男の子はそう言い、指を鳴らすとバリアを大量に出現させる。
これは避けられない、とでも言いたそうな顔をする男の子を僕は見上げ、口角を上げた。
「!?」
驚きのあまり転げ落ちそうになっている男の子を僕はしっかりと目で捉えると、手を銃の形にして狙いを定めた。
何だ。
あの短い時間に何があった。
僕があいつを中心におびただしい数のバリアを配置し、ぶつけようとしたところまでは理解できる。
しかしあいつが目の前から消えた瞬間バリアの上にいたことは全く理解できない。
意味が分からない。
ケ
あいつは俺を見ると手を銃の形にして向けるそして
「バァン!」
俺の体へ向けて、銃を撃つふりをする。
「…っふ、ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
そう言って俺は体中からバリアを放出し、あいつへ向けて放つ。
が、そこからはあいつにとってはお遊戯に過ぎなかった。
すべてをギリギリで躱し、光の速度で俺に接近してくる。
何故だ、何故だ……何故だ
「何故だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
あいつは俺の攻撃を全て笑顔で掻い潜り、顔に今度は拳を与えた。
バリアが、出ない……………?
薄れていく自我の最中、最後の力を振り絞っても俺ができたことは
何もなかった。
「んっふぅ……へ?」
僕が見た景色は見るに堪えない死屍累々だった。
流石にもう吐くことは出来なかった、慣れてきてはいないはず。
だってこんなにも、動悸が止まらないんだから。
「はぁ……はぁ……」
「やぁ、起きたところかい?」
後ろからどうやらくたびれてはいるが、どこか明るいような聞いたことがある声が聞こえ、後ろを振り返る。
そこには、服はボロボロで手がぐしゃぐしゃになったビットが笑顔で立っていた。
「!?、何があったんですか!?それに、この状況は!?」
ビットは一呼吸を置いて歯を見せると、言う。
「何もなかったよ!!!」
いや、
「そんなわけないでしょうがぁぁぁ!?!?!?!?」
第二話(その3) 日常と異常