ダーク・ファンタジー小説

第二話(その3) ( No.12 )
日時: 2023/04/29 12:43
名前: 味海 (ID: qWWiRdBA)






「これは、何だ?」
思わずそう言ってしまう。
夕焼けに飲み込まれそうな感覚を背中で感じつつ、もう一度目を擦り僕の目に映っているものを確認する。
しかしそれは変わらなかった、目の前に広がる死屍累々を意味もなく見つめなおした。
すべての死体の家族を僕は知ってる、此処に住んでたから。
いったいこれは誰がやったのだろうか。
絶望の狭間で思ったことはソレだった。
辺りを見回してみると一つの死体の山の上に誰かが立っているのを見つける。
そいつはあの子だった、いやあの子ではないあの子だった。
「あ、ビットさん起きたんですね皆殺しておきましたよ?」
ソイツは狂気じみた笑顔と血だらけの手で口元を擦りながらそう言う。
口元に血が付き、ソイツはその血を舌で舐め綺麗にすると相変わらずの笑顔でこちらを見る。
「…君は何があったんだい」
「いや?何もないですが?」
「そんなわけないだろ!」
僕は大きな声でソイツに言う。
あんなにやさしい雰囲気の子が何故。
何故。
僕の体中に苦しみの葛藤が駆け巡り、沸々と怒りがこみ上げる。
「お前は何者なんだ、殺すぞ?」
「はぁ…じゃあいいです、殺りましょう?」
そう言ったかと思うと僕の立っていた地面から物凄い勢いで何かが飛び出す。
何とか僕はそれを避けるが、後ろからまたもや何かが飛んでくる。
「!?」
それは、透明な長方形…つまりルピフォの前で見せたバリアだった。
コイツは僕が眠っている間にそれを何個も出せるように、そして詠唱も、特定の動きなども何もなしで出せるようになっていたのだ。
「ほら!ほら!殺すんだろぉ!!!攻撃してみろよぉぉぉ!!!」
ソイツは僕の周りに大量のバリアを出現させ、目にも止まらぬ速さでそれをぶつけてくる。
一撃でも当たれば死ぬということがひしひしと伝わってくるそのバリアはもはや、ただの凶器でしかなかった。
雨のように降り続けるバリアを搔い潜り、僕は男の子に向かって拳を振り落とす。
しかし落とす瞬間にバリアを張られ、当たらない。
手は痺れ、体に衝撃が集まり体中で跳ね返る。
「っ…!」
「もう、終わりなの?」
男の子はそう言い、指を鳴らすとバリアを大量に出現させる。
これは避けられない、とでも言いたそうな顔をする男の子を僕は見上げ、口角を上げた。
「!?」
驚きのあまり転げ落ちそうになっている男の子を僕はしっかりと目で捉えると、手を銃の形にして狙いを定めた。






何だ。
あの短い時間に何があった。
僕があいつを中心におびただしい数のバリアを配置し、ぶつけようとしたところまでは理解できる。
しかしあいつが目の前から消えた瞬間バリアの上にいたことは全く理解できない。
意味が分からない。

あいつは俺を見ると手を銃の形にして向けるそして
「バァン!」
俺の体へ向けて、銃を撃つふりをする。
「…っふ、ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
そう言って俺は体中からバリアを放出し、あいつへ向けて放つ。
が、そこからはあいつにとってはお遊戯に過ぎなかった。
すべてをギリギリで躱し、光の速度で俺に接近してくる。
何故だ、何故だ……何故だ
「何故だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
あいつは俺の攻撃を全て笑顔で掻い潜り、顔に今度は拳を与えた。
バリアが、出ない……………?
薄れていく自我の最中、最後の力を振り絞っても俺ができたことは
何もなかった。






「んっふぅ……へ?」
僕が見た景色は見るに堪えない死屍累々だった。
流石にもう吐くことは出来なかった、慣れてきてはいないはず。
だってこんなにも、動悸が止まらないんだから。
「はぁ……はぁ……」
「やぁ、起きたところかい?」
後ろからどうやらくたびれてはいるが、どこか明るいような聞いたことがある声が聞こえ、後ろを振り返る。
そこには、服はボロボロで手がぐしゃぐしゃになったビットが笑顔で立っていた。
「!?、何があったんですか!?それに、この状況は!?」
ビットは一呼吸を置いて歯を見せると、言う。











「何もなかったよ!!!」






いや、
「そんなわけないでしょうがぁぁぁ!?!?!?!?」





第二話(その3) 日常と異常