ダーク・ファンタジー小説

第三話(その2)   ( No.14 )
日時: 2023/05/16 20:49
名前: 味海 (ID: qWWiRdBA)




この子は何かを勘違いしている。
何故か僕はその子を見てそう思った。
何か不思議なことをしていたわけでも、何かを勘違いしているかのような発言をしたわけでもない。
それでも何かが引っ掛かる。
この子の顔が、この子の――キヤの目が、何かを訴えてくる。
「……キヤは何かを勘違いしてない?」
「……え?勘違い?ですか?」
「うん、まさかオシャッシ―が滅亡したとか、そこから助けられたとか、そんな根拠のないことではないと思うけどさ、何か勘違いしているよね?」
「……え?」
まさか……
「……それかい?」
「は、はいぃ……」
図星のようだ。
根拠がないのに何でそう思ったのか……
この子はちょっと妄想癖があるようだね。
「あ、え、と、わ、た、何で、ここに!?」
「いや、道で事件現場のように倒れていたからだよ!?」
「噓でしょ!?!?」
あぁこの子、子供みたい……
とりあえず、此処からどうしようか、家に帰すにしてももう暗いしいつなんの生物に襲われてもおかしくない、が僕たちの近くにいてもノブレスとオシャッシ―に狙われる。
あれ?この子、今結構危ない状況なんじゃない?
どうしよう……
「あの、私あなた方についていってもいいですか?」
嘘だろ、この子はいばらの道を進むつもりなのか?
まぁ時期にここもバレるかもしれないし、なるべく早くどこかへ行かないといけないことは確かだけど……
だからといってその際についてくる必要は断じてない。
「お願いします!あなた方の役に立ちたいんです!」
そう言って頭を床にぶつけそうな勢いで首を振る、その姿を見るとそれは出来ないの言葉が出てこなかった。
「……一つ聞いていい?何でわざわざ僕たちについてくるの?」
「それは――」
ドン!!
その時はいつも静かにやってくる。
それを忘れていた。
嵐の前の静けさ、それはいつだってこういう時だった。



「ビットさん!早くその子を抱えて逃げてください!」
僕は気が付いたら叫んでいた。
恐らく、扉をたたいた者の異様な空気を察したからだろう。
ビットはボロボロの体を無理やり動かし瞬時に、キヤを抱え込み臨戦態勢をとる。
その時だった。
扉の外がまばゆいほど光始めたのだ。
そして―――
爆発した。
「能力 バリア level2」
その瞬間に何とかバリアを球状に作り、それのおかげで何とか防ぐことができた。
足場事守っていたため、崩れることこそなかったがそれが逆に僕らを追い詰めることになる。
しばらくして、目が暗闇に慣れ始めたころ、また僕らは絶望した。
見渡す限り、一面に機関銃を持った兵隊、空にヘリ、顔は明らかにノブレス人の人たちだった。
そして、ヘリのドアが開くと、リュクにプロペラが付いたようなものを装着した、屈強な黒人男性が額にある傷を擦りながらゆっくり降りてきた。
「さぁ、観念するんだな、殺された仲間の仇を取りに来た俺たちは強いぞ?」
絶体絶命、まさしくその言葉が正しいだろう。
「今から復讐という名の拷問を初めるぜぇ!!!」
ビットはケガで動けず、僕もバリアが連続して出せないこの状況は案の定僕たちの大敗で終わる。
そして僕は、殺されず、ビットたちも殺されず、生け捕りになった、もちろん最低限のけがを負わせ、動けないようにしてね。







その日から数日後の夜、シルディアの兵二人は酒場のカウンターで、疲れた体を癒しながら、最近来たトレイトの民の話をしていた。
「なぁ、最近のトレイトの野郎の話、聞いたか?」
一人の男がもう一人の男へと話を回す。
「あぁ聞いた聞いた、あれだろ?あの忌まわしきサリーと同じ境遇にいる子供の話だろ?」
「そうそうそれそれ、それなんだけどさー今そいつに対して何やってると思う?」
少し陽気な声が、低い声へと変わり男二人の間に不気味な空気が流れ始める。
「さぁ?」
もう一人の男は肩をすくめると、首を少し傾げた。
「ずっと体をデコボコの石で擦られてるんだってさ」
「はぁ?何だよその生ぬるい拷問は!?サリーの時と同じように、あの毒ガスで殺せばいいだろ?」
男の話に怒りを覚えた、男は勢いのあまり大声で立ち上がりそうになる。
しかしそれをもう一人の男が手で制止させると、またもや低い声で話し始めた。
「いや、話によると、気絶したり何か刺激を与えると暴走するらしいよ?だから本部もそうそう激しい拷問ができないんだって」
「術がそんなに強いのか?」
「いや、ビットやあるといわれているオシャッシ―の王よりかは強くないらしいんだ」
「はぁ?ますます意味が分からない、だったら暴走しても問題ないだろ?」
「うーん……そうなんだよ、だから俺も不思議に思っているんだけどさ」
「なぜだろうな」
「まぁ俺らが気にすることではないね、言った俺が言うのも何だけど」
「それもそうか……あぁそういえばビットと一緒に捕らえられたあの女はどうなった?」
「なんか体を色々といじられているらしいよ(笑)」
酒場からは陽気なようで、どこか狂気じみた笑い声が空へと木霊こだましているのであった。









第三話(その2) 拷問の恐ろしさ。