ダーク・ファンタジー小説

第三話(その3) ( No.15 )
日時: 2023/05/27 20:57
名前: 味海 (ID: qWWiRdBA)



一体いつから、この拷問が始まったのだろうか。
かれこれ三時間ほど前の事だろうか。それとももっと前なのだろうか。
痛い、その感情すらも僕にはなくなりつつある。
水車のようなものに貼り付けられ、巨大なでこぼこした岩へ体を擦りつけるように回す、もちろん裸でね。
これが僕の拷問内容だ。
体中から血が噴きでるがそれもお構いなしでずっと擦りつけられる。
これは聞くだけなら割と軽く聞こえるかもしれない、でも現実はもっと悲惨なのだ。
いわば傷口に石を思い切り、何回も、擦り続けるようなものなのだから。
しかも、痛みで寝ることもできない、死ぬこともできない、精神が壊れそうになるがその際は止められる。
「アハ、アハ、アハハハハハ」
思わず笑いがこみ上げる。
これが一生続くのか、本当に面白いよ。
満面の笑みで引き続けられる僕。
それに伴い、勢いを増していく水車。
その時だった。
ドーン!
何かの爆発音がこの施設を襲う。
途端に元の意識が戻る僕。
そして勢いよく開くドア。
色々なことが同時に起きる。色々ありすぎてもう分からない。
「やぁ!」
煙をかき分けながら、何者かが部屋へと入ってくる。
ドアの前に立っていたのは、ビットだった。
「待たせてごめんね、【少し】遅れた」




――――――――とある街、フラデリ――――――――――――
こんな夜には何かある。
そう僕の第六感が言っていた。
虫の知らせ、とでもいった方が分かりやすいだろうか。
こんなのどかな街の静かな夜に一体何が起こるのだろうか、一つ言えることと言ったら僕の人生全てをひっくり返す気がする。
布団の中で窓のそとを眺めながら自分語りを始めていた僕は、今日もお決まりの妄想をしていた。
しかしそんな遊びも長くは続かなかった、僕の第六感は機能していなかったのだ。
ドーン
突然の爆発音とともに、ガラスが割れすごい勢いで吹っ飛ばされる僕。
「カハァ………!?」
一体何が、そう思った時にはもう遅かった、僕の目に映るのは延々と立ち上る黒い雲、そして空から降り続ける爆弾、崩壊し続ける隣家。
まさにこの世の終わりだった。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
何もできない虚しさ、くやしさ、怒り、すべてがつまった咆哮は爆発音でかき消されていく。
ああ僕はなんて、
「無力なんだ」
そう思い上を見上げたその時、真っ赤に燃えた屋根が落ちてくる。
僕が見たのはそこまで、そこからは何も覚えちゃいない、が生き残ってしまったことだけは確かだね。
そうして僕は何もない暗い空へとしていた話を終える。
今の僕に残っているのは仲間と、復讐心だけだ。
「おーい!何やってるんすか?」
そんな僕の奇行に気づいたのか一人の出っ歯の男が話しかけてくる。
「何でもない、自分の進む道を再確認していただけだ」
「え~……また道に迷ったんですかぁ?」
「そう言うことではないが……まぁそれでいい」
今の僕にはこいつらがいる、少なくとも今は一人じゃないんだ。
今は、一人じゃない。
出っ歯の横を歩く僕に今度は白い仮面をした者が近づいてくる。
「――様、あの作戦は順調でしょうか?」
「あぁ、全く問題ない、今はとにかく待つだけしかお前らには出来ることはないと伝えておけ」
「……わかりました」
そう言うと、そいつは一度礼をすると煙となって消えていった。
「何すか?アイツは?」
「お前にはまだ早い、とにかくお前は仕事に戻れ」
出っ歯は少し眉間にしわを寄せると、口をとがらせ文句を言いながらこの場所を離れていった。
僕はそのまま少し歩き、街へと入る。
黒いコートをなびかせながら。





第三話(その3) 覆面