ダーク・ファンタジー小説

第五話 ( No.17 )
日時: 2023/07/08 17:38
名前: 味海 (ID: qWWiRdBA)







今日も雨が降っている。
あのときと同じ、
いつもと変わらない地獄の涙だ。






俺は出っ歯と別れてからしばらく歩き続けていた。
予定の時刻まであと3時間、それまでどうしていようかを考えながら。
とりあえず、そこら辺の酒場へと入り、カウンターへと座る。
「……マスター、カクテルを一つ」
「わかりました」
マスターは吹いていたコップを置くと、後ろの棚から液体の入った瓶を取り出し、吟味し始めた。
あと3時間、あと3時間あれば、
世界が変わる。
この世界に、この腐った世界に鉄槌を与えられる。

「――――どうぞ、フードのお兄さん」
そんなことを考えている間にどうやらできていたようだ。
俺はお礼を言いつつ、受け取ると一気に飲み干した。
飲み干すときの勢いのままフードは無慈悲にも首元へといってしまった。
「!?」
しまった、そう思った時にはもう遅い。
「お前、トレイトじゃねぇか!!」
近くにいた金髪の男が大声を上げ、それと同時に店の奥へマスターは走り始める。
「うぉぉぉぉ!」
金髪は拳を振り上げると、俺に向かってそれを落とす。
が、ソイツの拳は無残にも空を切ることになる。
「な!?」
そのまま思い切り前に転ぶと俺はそいつを蹴り上げる、無様に中を舞ったそいつはそのまま頭から床にたたきつけられると、意識を失った。
それと同時に猟銃を持ってきたマスターは躊躇なく俺に対して発砲する。
鈍い音が聞こえ、俺の腹から赤い液体が噴き出し、それが床に海を作り上げる。
そんなことはお構いなしに俺はマスターへと近づいていく。
「ヒッ!ヒッ!ヒィィィィ!!!!」
マスターは猟銃に入っている銃弾を全て使い切るとへなへなと床に座った。
「……一つ聞きたいことがある」
俺はそいつをにらむと、歯ぎしりをしながら、幼少期から思っていたことを尋ねてみた。
「何故、お前らはトレイトを意味もなく殺す?」
体からは滝のように液体が溢れる。
「こ、怖いじゃないですかぁ!?」
それにビビったのかそいつはその一言を最後にそのまま意識を失った。
「……怖い、だと……?」
誰にも届きのしない、怒りが体をめぐる。
「その程度で人を殺すんだな」
俺にはそれしか出てこなかった、もしかしたら何か理由がだなんて考えた俺が馬鹿だったよ。
あぁやっぱりこの世界は、
「腐ってやがる」












第2章の始まり始まり 




第五話(その1) 腐っているのはこの世界だ