ダーク・ファンタジー小説
- 第六話(その3) ( No.21 )
- 日時: 2023/08/03 20:49
- 名前: 味海 (ID: qWWiRdBA)
気が付いたら私は病室のドアを開けていた。
「!?」
驚いた顔をする彼と、真っ赤になったビットさんの顔が見え、思わず固まる私。
「アルトモ!久しぶりだね!」
彼はすぐさまそういうが、さっきまでの会話を引きづっているくのかひどく動揺しているように見えた。
私は彼のもとまで何も言わず歩くと、率直に聞いてみることにした。
「修行……するそうですね……?」
突然の問いに目を見開く彼と、あっけにとられているビットさん。
この場は異様なほどの何かが充満し、空気が重くなっていくのを肌で感じた。
「聞いてたんだ……」
「はい……」
「私h――――――――――――――――――――」
「止めないでくれ」
遮るように彼はそう言った。
ボロボロの雑巾のような体を無理やり彼は動かし、窓から身を乗り出す。
その時だった。
「へえー泣かせてくれるじゃないか、まぁ君を捕まえるから意味ないけどね」
突如として窓から現れた金髪で糸目のその男は、張り付けたような笑顔だった。
狂気より狂喜、そんな言葉が似合いそうだ。
男はただでさえ不気味なその顔をさらに不気味にゆがめながらも笑うと男は一言こういった。
「俺も混ぜてy――――――――――――――――――――」
僕は死を確信していた。
男の体から発せられるとてつもないほどの殺気。
そのどれもが僕の体を刺し、体中の穴から血が噴き出す。
「俺も混ぜてy――――――――――――――――――――」
その瞬間、男の首はまるでおもちゃのように吹っ飛ぶ。
サリーの記憶と人影が交差する。
「え?」
それがあの不気味な男の最後の言葉である。
ドサッ
そこからは僕の記憶はない、気が付いたら嫌な空気のする薄暗い森にいた。
すぐさま僕はボロボロの体を起こし、周りを確認する。
かつて、ビットの秘密基地へ行くときに入った森ではない、何となく僕はそう思った、あの時は見たこともない花が咲き不気味な木がそびえたってはいなかったからだろう。
「ここは一体……」
そう思わず声が漏れ出てしまう。
少なくとも病院の近くには森なんてない。
おかしい、どんな移動をしたとしてもこんな場所には来れないのだ。
だが、
進むしかない。
現実を、この腐った世界を、変える為には僕が変わるしかないのだから。
――――――――――――――――――――
「……ハルマクア博士ぇまだできないのかぁね?」
「アハハ……思っていたよりも開発が難しくてね~」
「実験体はたくさんいるんだから早めに開発してほしんだがね?」
ここはとあるノブレスの国、オルボモスの城の地下。
ここでは様々な薬品を開発しており、それに伴い人体実験も行っている場所である。
この地下研究所の目標はトレイトの殲滅。
現在、研究員は一人しかおらず、それがこの天才、ハルマクアである。
「ッ!!!」
博士の声にならない驚きとともに研究所は光に包まれる。
「できたッ!できたぞッ!!ついに!ついに!」
―――――――人を操る薬ができたぞッ!!!!!!!!――――――――
第六話(その3) マリーとネット