ダーク・ファンタジー小説
- 第一話(その1) ( No.5 )
- 日時: 2023/03/26 20:26
- 名前: 味海 (ID: qWWiRdBA)
??「ねぇ?なんで?」
真っ暗な世界の中で女性の声が木霊する。
しかし周りを見渡しても誰もいない、見えない。
??「ねぇなんでよ?」
女の声はどんどん近づいてきている気がした。
また周りを見るがやっぱり誰もいない。
今気づいたがその女の声はどこかで聞いたことがあるような気がした。
そんなことを思った瞬間、僕の耳元で生暖かい息が当たり、声がする。
??「なんでお前は生きてんの?」
冷たい声だった。
背筋が凍るり、足も震えるが、なんとか僕は後ろをふりかえる。
そこには肌が焼けただれた、サリーがいた。
叫びたかったが声が出ない。
??「貴方はなぜ生きてるの?なんで私が死ぬ必要があったの?」
そうだ、サリーの言う通りだ。
サリーが死ぬ必要はなかった。
あんないい人が死ぬ必要はなかった。
??「なぁ?お前が死ねばよかったんだよ?なぁ?」
ただ、僕はその声を聞いてなぜか気づいた。
僕「失せろ、幻影が」
ブワァ!っと風が吹き、サリーのような何かが居なくなりまた虚空に取り残される。
サリーはあんなことを言わない。
なぜかわからないが僕はそんな自信があった。
しかし、消えたのも束の間サリーの幻影はより現れてしまったのだ。
真っ暗な暗闇にあふれ続けるサリー、その状況はまさに異様なものだった。
僕は現れ続けるサリーを無視し、虚空を歩いた。
歩き続けた。
歩き続けた。
歩き続け――――――――――――――――――――
ドン!!
何かの物音で僕は目を覚ます。
??「わ!起こしちゃった?」
誰かが言うが、周りがぼやけて見えず誰が言っているのかわからない。
少なくともルソアではない。
目をこすりつつ、体を起こし声のほうを見る。
すると部屋のドアに、白兎がいた。
音の原因はドアの横にあるタンスにぶつかったのだろう。
赤い目、長い耳、ふわふわしそうな毛、ピシッ!としたスーツみたいな服、まるで執事みたいな格好だ。
??「えーと、どうも…」
ウサギは言う。
その時僕は、理解が追い付いていなかった。
オークのような人種でもない、エルフのような人種でもない。
じゃあこいつは何だ?
まさかノブレス人?いや、ノブレス人は黒人と白人しかいないという風に聞いている。
兎は頭を左手で少し掻きながら、呟く。
??「?まさか僕のこと知らない?結構有名だと思うんだけどな…」
そうつぶやいた瞬間、目の前から兎が消えた。
??「ねぇ?僕のこと本当に知らない??」
その声はなんと左から聞こえてくる。
恐る恐る僕は声の方へ振り返る。
そこには兎が眉間にしわを寄せ、悩んでいるような表情で立ち尽くしている。
??「これでもわからないのか…僕って有名じゃないのかな…ハァ…」
兎はそう言いため息をつくと、
??「もういいや!僕の名前はビット・ラシノミスト『割と』有名な、一応オークの兎だよ!」
ビットは自己紹介を始めた。
ビット「僕は珍しくイノシシじゃなくて、兎なんだ!ちなみに奇術は『大幅な身体能力の上昇』めっちゃくちゃ強いよ、僕(笑)」
話によると、ビットのようなイノシシ以外のオークもとても低い確率で生まれることがあるらしい(トレイト人の歴史の中でイノシシ以外のオークはビットを含めて二人しかいない)。
その珍しさから、ビットはとんでもなく有名らしい(もう一人は狸でそっちも有名らしい)。
ビットはとにかく有名ってだけでうれしいらしく、どれだけ自分が有名かを熱弁してた。
他にも有名になっている理由がある、それは、
ビットの奇術が強く身体能力もオークより遥かに高いということだ(本人談)。
それらの要素が合わさり、ビットの事を知らない人はほぼいないとのこと。
だから、僕にずっと聞いてきたのだ、「僕の事を知っているか?」と。
??「とまぁ、僕の事はこれでいいかな!じゃあさ!君の事を教えてよ!」
その言葉を聞いた瞬間、僕はおなかに殴られたような痛みが走る。
僕「カハッ…」
そのまま僕は血を吐く。
そりゃそうだ、何も食べてないのに無理に吐こうとするからだ。
またそのまま意識が飛びそうになるが、深呼吸をして、大慌てで、バケツや水、タオルを持ってきた、ビットに僕の事を伝えることにした。
第一話(その1) 思い出のサリー
次回へ続く…