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ダーク・ファンタジー小説
- Re: ライトホラー・ショートショート ( No.150 )
- 日時: 2013/05/31 18:07
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
第37話「夢に出てくる男」
夢に男が出てきた。
やせていて、髪の毛はだいぶ薄くなっていた。寝間着のような白いシャツを着た、初老の男だった。
その男がギラギラした目つきで自分に何か説教っぽく叫んでいた。でも何を言っていたのか覚えていない。
自分は面と向かい合い、目をそらすことも許されなかった。
朝になり、自分は今の夢の映像を思い出そうとする。
あの男は誰なんだろう。知らない人だ。
しかし、どこかで一度会っている気がした。
ふと自分は、前にも同じ夢を見ていたことを思い出した。
たった今まで、そんな夢を見ていたことすら完全に忘れ去っていた。
自分は、見た夢をいちいち覚えている方ではない。
たいていの場合、起きた瞬間は覚えていても、布団から出て一分もすれば忘れている。
それはおそらく、忘れた方が都合がいいからだと思われる。脳がそれを受け入れまいとして、自分に忘れさせているのだ。
だが知らない男が二度も(あるいは忘れているだけで、本当は三回以上かもしれないが)夢に出てきて、自分に何かを訴えていた。
気になってしまう。なんとなく怖い夢だったような気がするが……。
自分はその夜、かたわらにメモ用紙とペンを置いて寝ることにした。
もしまたあの夢を見たら、起きてすぐにメモを取ろう。
果たして、その夜も自分は同じ夢を見た。
あの男が何を言っていたのか、それも覚えている。
自分は急いでペンを走らせた。
メモ用紙には、殴り書きのような字で、こう書かれた。
「——が来てる。早く逃げろ」
男は他にも何か言っていたはずだが、書いているうちに忘れてしまった。
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