ダーク・ファンタジー小説

Re: 私が聞いたようで見ていない、ちょっぴり怖い話(怪談集) ( No.16 )
日時: 2013/04/08 17:52
名前: あるま (ID: Ba9T.ag9)

   第1話「壁のこちら側」

わたしは通勤時間を減らすため、実家を出て、このアパートへ引っ越してきた。

隣に住むひとに引っ越しのあいさつくらいはした方がいいだろう。

でも今日は疲れたからやめだ。明日にしよう。

環境が変わったためか、その夜は寝苦しかった。

隣の部屋から赤ちゃんの鳴き声も聞こえる。

若い夫婦が住んでいるんだろう。

赤ん坊を相手に怒っても仕方ないが、眠れなくて困った。

翌日、隣の部屋へあいさつにうかがった。

出てきたのは、わたしと同じで、今年から社会人になった女性だった。
気が合いそうだ。友達になりたいと思った。


次の土曜日、彼女がこう言ってきた。

「今夜、学生時代の友達がわたしの部屋に集まるんだ。
お酒も飲むから、騒いだりしてちょっとうるさいかもしれないけど。
もし迷惑だったら、遠慮なく文句言いに来てね」

わたしは、どうせ明日は日曜で休みだし、かまわないと思った。

その夜、わたしは買物をして、アパートに戻ってきた。

彼女の部屋の前を通ると、何人かの、楽しそうな声が聞こえる。

もうだいぶ酔ってるんだな。

わたしは独りさびしく、自分の部屋に戻った。

ごろんと横になる。


本音を言うと、わたしは彼女と友達になりたい。

彼女は「遠慮なく文句言いに来てね」と言ってくれた。

少しでもうるさかったら、部屋に乗り込んでやろう。
そして、願わくば、わたしも仲間に入れてもらおう。


でも残念。隣の話し声は、わたしの部屋までは聞こえてこなかった。



___【答え】___
引っ越してきた日の夜、隣の部屋から赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。
隣に住んでいたのは独身の若い女性。
そのお隣さんが友達を呼んで騒いでいる声はこの部屋まで聞こえてこなかった。
赤ん坊はもっと近くに居たのか?