ダーク・ファンタジー小説
- ライトホラー・ショートショート(あとがき) ( No.162 )
- 日時: 2013/06/30 13:22
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
あとがき・怪談「東北のホテル」
「意味が分かると怖い話」というのを知っていますか?
一度読んだだけではどこが怖いのか分からない、ホラーらしくない話ですが、よーく読んで、どこが怖いのか分かるとゾッとする、というアレです。
私がこの短編集を始めたきっかけも、自分でその「意味が分かると怖い話」を書きたくなったからでした。
途中からはそうではない、普通のホラーにしたつもりですが、前半の作品がこれでもかってくらい難解で意味不明なのには、そういう事情があったのでした。
そんな「意味が分からない話」にコメントをくれた方々、本当にありがとうございます。おかげで私もやる気になり、週に一本の掲載を続けることができました。とても楽しかったです!!
実を言うと私は、オカルトマニアだとか、怪談ジャンキーというわけではありません。ホラーとかグロの書き方が分からず、どうすれば怖くできるのかと悩みました。
幽霊が顔を出したり、ひとが殺されたりするシーンは、後半まで出てきていないはずです。自分でホラーを書いておきながら、ホラーの書き方が分からなかったんです。
でもホラーっていっても、色々ありますよね。
ひとが呪い殺されたり、首が飛んで血がドバーって出るのもホラーですが、「さり気ない怖さ」もあると思うんです。
「夜中に赤ん坊の泣き声がしたのに、その近所に赤ん坊は住んでいなかった(第1話)」とか。
「岬に立つペンションに泊まったら、夜、部屋の窓から友達が手を伸ばしてきた。友達はテラスに居て、そこから手を伸ばしているのかと思った。でも翌朝見たら、その部屋にはもともとテラスがなく、窓のすぐ下は断崖絶壁だった(第8話)」とか。
気づいたからって、恐ろしい霊が出てくるとか、殺されるわけではないんですよね。私はそういう怪談が好きでした。
では最後に、そういう地味な怪談を一つ書いて終わりにします。
おまけ「東北のホテル」
先日、旅行に行った知人がこんな話を聞かせてくれました。
友人と三人で、東北のあるホテルに泊まったんです。
車であちこち回るのがメインの旅行で、お金もなかったから、ホテルには食事もつかない、いわゆる「素泊まり」でした。
海辺のホテルでしたが、彼らが着いた頃には真っ暗で、あたりは何も見えなかった。
部屋は和室で、着いたのが夜の10時くらいでした。
疲れているし明日は車の運転もあるから、もう寝るだけだった。
それでも友人二人はゲーム機を持ってきていて、寝る前に少しだけ、部屋のテレビでゲームをやっていたんです。
話を聞かせてくれた彼は、飲物を飲みながら、部屋の隅で雑誌を読んでいました。
ふと、友人の一人がゲームを中断して、部屋を出ていった。
トイレだったんですが、それを済ませると、また部屋に戻ってくる。
ところが友人は引き戸(和室なので)をちゃんと閉めないまま、席に戻ってしまったんです。
そしてゲームを再開した。
彼は「ちゃんと閉めろよ」と思ったが、後で自分が閉めればいいと思って、何も言わなかった。
友人二人はゲームに夢中になっている。彼は飲物を飲みながら雑誌を読んでいた。
数分経って、彼もトイレに行きたくなったんです。
雑誌を置いて、立ち上がった。
部屋の出口まで行くと、戸はきっちり閉まっていたそうですよ。
___作者紹介___
関東南部在住の天秤座。
趣味は読書と散歩のベジタリアン。
東京タワーもスカイツリーも行ったことがない。
上野は好きでよく行くが買物をしないで帰ってくることが多い。
このサイトでの主な作品に『宿縁』(別館のBL/GL)、『幼なじみから恋人までの距離』(コメディ・ライト。ゴマ猫さんとの合作)などがある。