ダーク・ファンタジー小説

Re: 私が聞いたようで見ていない、ちょっぴり怖い話(怪談集) ( No.21 )
日時: 2013/04/08 18:03
名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)

   第2話「ねたみ」

高校最後の夏休み、私は友達二人と旅行へ行った。

楽しい旅行も、あっという間に過ぎて、最終日になってしまった。

私と友達は、岬に来ていた。
青々とした海が目の前に広がって、すばらしい眺めだ。

「やだ怖い。すごい高さだね」

手すりにつかまって下を見ると、目もくらむ高さだ。
荒々しい波が岩肌を叩きつけていた。

「ねえ見て。さっきからあの女のひと、こっちを見てるよ」

友達に言われて私は振り向いた。


見るとそこには、真っ白なウィディングドレスに
身を包んだ女性がいた。
ヴェールをかぶっているから、顔は見えないが、
こっちを向いて、ぴくりとも動かずに立っていた。

「近くに式場か何か、あるのかな」

「そうなんだろうね」

「あ、手を振ってきたよ」

「ほんとだ。応えてあげようか」

私と友達二人は、その女性に手を振った。


「私たちの中で、誰がいちばん先に結婚するだろうね」

その場を離れて、友達が言った。

「その時はね、恨みっこはなしだよ。私は素直に、
祝福してあげられるから!」
「私だってそうだよ。嫉妬なんかしないよ!」

こう、三人で誓い合った。



月日は流れ、私たちは高校を卒業し、大学を卒業し、社会人になった。


友達の一人が、結婚することになった。24歳だった。

「あの子も、ついに結婚か。私もまだ24歳だから、
焦ることはないだろうけど……やっぱりちょっと羨ましいなあ。
私にも良い相手が見つかればいいなあ」

私は友達の結婚の知らせを聞いて、そう思った。


ところがその友達は、結婚後、間もなく、
車にはねられて死んでしまった。
ひき逃げだったのだが、犯人は捕まっていない。


その悲しみも、ようやく忘れることができた頃、
今度はもう一人の友達が、結婚することになった。27歳だった。

「あの子も、やっと結婚か。職場結婚だったっていうけど、
なんで私の職場には良い男が居ないんだろう。出会いもないし……
私はもう27歳。このままずっと独身だったらどうしよう。
ああ、素直には喜べないな、親友の結婚も」

私は友達の結婚の知らせを聞いて、そう思った。


ところがその友人は、結婚後、間もなく、死んでしまった。
自宅で地を流して倒れているのを、会社から帰った夫が発見したのだ。
警察は家に押し入った強盗に殺されたものと判断した。
犯人はまだ捕まっていない。
産休も取って、あとは子供が生まれる時を待つばかりだったのに、
かわいそうな話だった。



それから三年が経った。私は間もなく30歳を迎える。

親にも心配をかけたが、今度、結婚することになった。

幸せになれるといいな。



___【答え】___
岬に立って手を振っていた女性は生きてる人間ではない。
手を振り返した友達二人は結婚した矢先に死んだ。だから主人公も死ぬのだろうか。

実はそうではない。
女性に手を振ったあの日、三人は「誰かが先に結婚しても、ねたみっこなし」と誓い合っていた。
でも主人公は先に結婚した友達に嫉妬している。
主人公の強烈な怨念が友人を殺していた。
だから最後に残った主人公は死なない。