ダーク・ファンタジー小説
- Re: 私が聞いたようで見ていない、ちょっぴり怖い話(怪談集) ( No.33 )
- 日時: 2013/04/10 17:56
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
第六話「ついてきてるぞ」
わたしは車を止めると、雑誌を片手に、外へ出た。
雑誌に掲載された心霊写真の撮影場所が、この近くなのだ。
わたしはべつに、心霊探訪が趣味だとか、幽霊の存在を信じているわけではない。
たまたま暇潰しに読んでいた雑誌に知っている場所が映っていたので、ちょっと寄ってみたのだ。
「あったあった。うん、ここで間違いないな」
わたしは橋のちゅうふくまで来ると、雑誌に目をやった。
橋の上で撮影された数人の男女の後ろに、薄ぼんやりと髪の長い女が映って、カメラの方をにらみつけている。
女の立っている位置は、橋のらんかんよりも奥になる。
足場も何もない。
生きている人間が立つなんて、ありえない場所だ。
わたしは、雑誌に載った写真と、今、自分の目の前に広がる景色を、見比べた。
女の目は憎しみを込めてこっちをにらみつけているようだった。
「気味が悪くなってきた。もう帰ろう」
そこは山に囲まれた、自然がいっぱいの場所だった。
平日の夕方だから、ひとけが全然ない。
わたしは車を飛ばした。
運転中も女の顔がちらついて、寒気がし、バックミラーも怖くて見られなかった。
途中でゴミ箱を見つけると、雑誌を捨てた。
「やっと町に着いたわ。あーあ、ほっとした。ご飯でも食べていこ」
わたしは一軒のそば屋を見つけ、そこへ入った。
「いらっしゃいませ。テーブル席へどうぞ」
ひとりで来ているのだからカウンター席でもよかったのだが、店も空いていたので、言われるままテーブル席へ着いた。
「ご注文が決まりましたら、お呼びください」
そう言って店員さんはテーブルに水の入ったグラスを二つ置いていった。
「あ、お水はひとつでけっこうですよ」
「これは失礼しました」
変な店員さんだ。さて、何を食べよう。
___【解説】___
テーブル席に案内することと、水を二つ持ってくること。
店員はお客が二人連れだったと見間違えた。
主人公は一体、誰と一緒だったのか。